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【SHOE DOG シュードッグ】フィル・ナイトという人間を知る

オススメ度(最大☆5つ)
☆☆☆☆

〜ビジネス書というより小説だ〜

本書は世界的なスポーツメーカー「NIKE」の創設者フィル・ナイト氏による自伝である。
1962年にNIKEの前身となるブルーリボンの立ち上げから1980年の株式公開までのストーリーが語られる。

ビル・ゲイツやウォーレン・バフェットが賞賛し、日本では2018年のビジネス書大賞でも選出され話題となった。同年にはNetflixが映画化権を取得している。

ビジネス書、とは言え、内容はノンフィクション小説だ。フィル・ナイト氏の靴やスニーカーに対する熱い思いと、経営に対する苦難がこれでもかと込められている。
約540ページという長編ではあるが、読み始めると止まらない面白さがある。


〜日本と関係の深いNIKE〜

この本を読んで初めて知ったのだが、NIKEはかなり日本と関係の深い企業である。

前身となるブルーリボンは、もともとフィル・ナイトが日本のオニツカタイガーのスニーカーをアメリカで売るという事業から始まったのだ。さらには、NIKEの危機を救ったのが、これまた日本の日商岩井というのだから驚いた。

当時の日本がアメリカからどのように思われていたかというのも非常に興味深い(フィル・ナイトの祖母が「日本人は数年前まで私たちを殺そうとしていたのよ」と語るシーンは印象的だ)し、フィル・ナイトが自分のアイデアを実現させるために、日本人の気難しいビジネス思想を学んだ上でオニツカに交渉しに行ったという経緯など、当時の世の中の空気をリアルに感じられるのも面白い。

〜ピュアすぎる男 フィル・ナイト〜

さて、僕はこの本を読んで、フィル・ナイトという人間が好きになった。

というのも、彼は非常にピュアで真っ直ぐな人間だということがわかるのだ。

まず、自分の夢を追う事を優先してキャッシュのやりくりがあまりにお粗末なところだ。銀行から融資を受け、そのキャッシュでスニーカーを発注しスニーカーを売る。その売り上げをまたすぐに発注に回して、とにかく手元に現金を残さない。銀行から「キャッシュのバランスが悪い」と言われても、その姿勢を変えず同じ事を繰り返し、度々キャッシュのやりくりに頭を悩ませる。会社が大きくなりすぎて、自分の首を絞める事になってもそのやり方を変えず、株式公開するまでは常に借金まみれなのだ。
先日読んだ【amazon】のようなとにかく投資にキャッシュを回す経営方法のようにも思えてしまうが、読んでいてそれと根本的に違うように思う(笑)。
自分の靴を多くの人々に履いてもらう、世界のスポーツに貢献する、という夢のためにキャッシュバランスなどお構いなしにとにかく突き進む。

また、あまりにも正直すぎるエピソードの数々も面白い。オニツカの裏切りの裏付けをとるために書類をオニツカ社員のカバンから盗んだり、オニツカにスパイを送り込んだりするのだが、オニツカとの裁判の時には「隠さずに正直に話そう」と決意する。日商岩井から借りたキャッシュを日商に内緒で別の国に設置した工場の運営にあてたときも、日商から帳簿を見せるように言われた時に「隠さず正直に話そう」と決意する。
隠れて悪い事をしておいて、バレそうになったら「正直に謝る」という彼の姿勢が、まるで子供のようだ。

そんな、彼の子どものようなエピソードの数々から彼のピュアすぎる人間性がうかがえる。
あまりにもピュアで人間臭い彼の行動は、非常に好感を持てる。

彼のそんな人間性を感じて、思わずNIKEの公式サイトを見てしまった。フィル・ナイトという人が作ったスニーカーをぜひ履いてみたい、と思わずにはいられなくなった。


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