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【シン・ニホン】日本の弱点は科学

オススメ度(最大☆5つ)
☆☆☆☆

〜日本の大きな課題は教育と人材〜

「日本はもう終わってる」
という声が度々色んなところで聞かれる。

日本のGDPは毎年軒並み横ばいで、成長率という意味ではもはや先進国とは言えない状態である。

人口減少や社会保険料・医療費の増大など、現在の国のシステムがこれからの世代に負担が重くのしかかるようなものになってしまっているのは自明のこと。日本の未来を考えた時に、暗い考えしか及ばない。

巷では、出生率を上げるためにバラまきするのが良い、だとか、貧富の格差をこれ以上広げないようにするために所得税や法人税を引き上げろ、だとか、過激なものでは、医療費を圧迫している高齢者をさっさと殺してしまえ、なんて意見を見かける事もある。
いずれも、本質的な解決策とは言えないものばかりだ。

さて、そんな暗い日本という国について、著者は様々なデータやファクトを取り上げて、日本の本質的な問題点と解決策を本書で提示している。

それはズバリ、人材と教育である。


〜日本には科学が足りない〜

副題にもある「データ×AI時代」という言葉。
スマートフォンというものが世に出現して、世界は一変した。ビジネスや経済の中心はもはやスマートフォンの上にある、と言っても過言ではない。

そんな時代において、著者は「日本はデータ×AI時代に明らかに乗り遅れている」と述べる。
そして、その大きな原因として「日本には、情報科学や機械学習工学的な知識・素養を持つ人材が少ない」事を挙げている。

これは単に、いわゆるプログラマーやSEが足りていない、という事ではない。むしろ、今流行りにもなってるほどプログラマーやSE志望の人材は増えている。
しかし、プログラマーやSEのようないわゆる技術屋だけでは「データ×AI時代」の波に乗ることは出来ない。経営層やリーダー層の人々も、情報科学や機械学習工学の知識を理解して、それを活用して企業のいく先を考える必要がある。そして、組織における技術者以外の人材も「データ×AI」に関するリテラシーを持ち、組織一丸となり「データ×AI時代」を突き進んでいく必要がある。

日本の企業や組織では、そういった技術的な事は全て技術屋に任せてしまう傾向があるが、実際に企業の方針を決めたり舵取りする立場の人間が「データ×AI」とはなんたるやを理解せずに、この世界を一変させた技術を上手く活用する事など不可能だ(これを読んでいる間、ずっと「みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史」に書かれていた、経営層がシステム統合の事業を全てシステム部門に丸投げして大失敗した話を思い出す)。

著者は、情報科学や機械学習工学に特化した人材を増やすというよりも、全ての働く人々が「データ×AI」に関する知識を持ち活用・発展させていく事を理想としている。
そして、それこそが「データ×AI時代」における日本再生の道筋だという事になる。

そもそも、なぜ日本は情報科学や機械学習工学に関する知識を持つ人々が少ないのか?

その原因として、日本の科学技術に対するリソース配分が少ないからだと著者は述べる。

日本は、諸外国と比べ、科学技術予算が圧倒的に少なく、大学への助成等の仕組みが無い。それどころか、日本の科学技術に関するお金は年々削られているのである。
そのため、最先端技術を研究する立場である大学教授の待遇も良くなく、充分な研究費を確保する事も出来ない。当然、他国との科学技術研究の競争では勝てないし、発表される論文数も少ない。
また、大学生を支援するような仕組みもなく、諸外国と比べ博士号取得者は少ない。
当然こんな状況では、情報科学分野だけでなく、日本国内の科学技術全般において優秀な人材が育つわけがない。
目先の利益ばかり考えるのではなく、すぐに結果は出ないかもしれないが長いスパンで見れば投資以上のリターンが見込める、人材育成・教育の分野にもっとリソースを配分するべきだ、と著者は述べる。

日本の科学技術に関するお金の現状は、なんとなくは聞いたことがあるものの、実際のデータで見ると驚きを隠せない内容だった。たしかに、ここをなんとかすれば日本はまだまだ再生出来るのではないかと希望すらみえてきた(著者の試算によると、国家予算の大半を占める社会保障費をなんやかんやするよりも、大学や科学に関する予算は数%の負担でかなり大きなリターンが得られる)。


〜平凡な僕に出来ること〜

さて、かなり読み応えのある本なのだが、話があまりにも大きすぎて、「日本の課題はわかったけど、じゃあそれを解決するために僕なんかに何が出来るんだ?」と思ってしまう。

平凡な僕に出来ること、それは、まず自らが「データ×AI」に関する知識・素養を深めることだ。そうすれば、新しい世代が未来を創るための行動に理解を示し、サポートする事だろう。
いや、もしかしたら、まだ30代の僕ならそういった知識・素養を身につけて自分が未来を創る事も可能かもしれない。

本書を読んでいて、(このnoteでは何度も書いているが)大学で数学や情報科学を諦めてしまった自分の過去を何度も思い出してしまった。
その時にこの本に出会っていたら、今とは違う道を僕は進んでいたのかもしれない。

今更ながら、もう一度、かつて大好きだった数学をもう一度勉強しようと思う。


ちょうど今年は統計学を勉強しようかなと考えていたので、その素養としてまず、数学を一から学び直そうと、本書を読んで決意した次第である。

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