見出し画像

【短編】君想う心に雨が降る【小説】

酷い土砂降りだ。
目に映る空はこんなにも青く晴れているというのに、私の心は暗く重い雨雲に覆われている。冷たい血潮はザーザーと酷い音をたて、手足の指先は凍ったように動かない。数分前までの熱い鼓動が嘘のようだ。底抜けに明るい空に腹が立つ。

あの人が視界に入るだけで、あの声が耳に入るだけで、この胸はうるさいくらいに高鳴っていたというのに。熱い鼓動は今や絶望の鐘へと成り下がった。

「なんで?」と聞くのもバカらしい。「奪われた」、「盗られた」なんて言うのもナンセンス。
ただの友達で満足してた私がバカだったのかな?
分かってる……。
アイツはちゃんと行動した。フラれる事を覚悟で自分の気持ちを正直に伝えた。そしてそれが上手くいった。ただそれだけの事。

妬む私の眼に、二人の照れたような笑顔が映る。
ああ、なんて恨めしい。


キラキラと輝く二人に背を向け歩き出す。
さよなら初恋。土砂降りはまだ止みそうにないけれど、いつか晴れる日が来る事を私は知ってるよ。
ただ今は、思い切り泣かせて。


あとがき

最近……でもないか、ちょっと前まで巷で流行っていた「アイドル」って曲、そこかしこで流れてくるから興味なくても所々の歌詞は覚えてしまった。

で、この間ようやく一曲まるっと聞いたのよ。何という事でしょう、アニメに寄り添った名曲ではありませんか。アニメ見た事ないけどね。(ショートとかで問答無用で流れてくるから、あらすじはなんとな~く知ってる)

基本的に興味ない曲延々と聞かされるのは好きじゃないんだけど、この曲は別だった。何故かって、歌詞に共感したから。

「誰かを好きになる事なんて、私分からなくてさ」とか「誰かに愛された事も、誰かの事愛した事も無い」って部分が、私のハートにめちゃくちゃ刺さりまして。ええ。(もちろん曲自体も素晴らしいですよ。キャッチ―なメロディーとか、癖の強いボーカルとか)

共感を誘う歌詞って割と重要なんじゃないかと、今さらながら思い至った訳です。そしてもう一つ、

『自分以外の誰かを特別に想う感情を私も知りたかったよ』

って贅沢な希望。まあね、もう40になるから諦めの境地だけど、もしタイムマシンがあるなら戻りたいよね、高校時代。……いや、やっぱミトコンドリアかな。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?