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ぷらっとほーむ

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#不登校

「当事者である」とはどういうことか。

「当事者である」とはどういうことか。

■先日、山形県からの委託を受けた「若年無業者のための社会参加体験プログラム開発」事業の一環として、「子どもの社会参画支援」をミッションとするNPO法人・寺子屋方丈舎(会津若松市)代表理事の江川和弥さんを講師に招いての、ワークショップを開催した。ワークショップのテーマは「NPO企画づくりを体験してみよう:コミュニティビジネス起業一日体験企画」。何だか難しそうで近寄りがたい雰囲気のNPOの活動を、実地

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社会学から見た「居場所」とは?

社会学から見た「居場所」とは?

■先日、日本教育社会学会第59回大会において、「「居場所」に関わる人びとによる「不登校・ひきこもり支援」の社会的構築:支援者のアイデンティティ・ワークに着目して」という題目で、研究発表を行ってきた。心の専門家による心理学的な言説(居場所における受容は心の傷を癒す)でも、東京シューレ系の反学校論的な言説(居場所における試行錯誤は「自由・自治・個の尊重」を保障する)でもなく、社会学的に「居場所」を記述

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ぷらほ流・社会学ワークショップのすすめ

ぷらほ流・社会学ワークショップのすすめ

■進学希望のメンバー数名の求めで、高校受験社会についての講座を6月より毎週金曜に定期的に開くことになった。わたしは現役の予備校講師でもあるので、「そちらと同じ講義形式の授業を再現するか」などと最初は考えていたのだが、受験生ではないが「社会のしくみ」に興味があるので参加したいという人たちも現われたため、「社会学ワークショップ」=参加者の関心に応じた参加型の学びの場として進めることにした。これまで「憲

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「立ち直る」「社会に出る」という短絡。

「立ち直る」「社会に出る」という短絡。

■最近、ぷらっとほーむのメンバーとともに、山形県内の他の居場所や当事者グループの人たちと交流する場面がいくつかあった。他者と遭遇し、言葉を交わすことは、ふだん自分たちが無意識に前提にしていること、当たり前だと思っていることが、他の人たちにとっていかに当たり前でないかということに気づける貴重な機会である。他の人たちにとって当たり前でない、自分たちに固有の語法や志向のことを「個性」という。では、ぷらっ

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「待つ」とは何であるか。

「待つ」とは何であるか。

■不登校・ひきこもり等の悩み語りに対する紋切り型の返答パターンに、「待て」というのがある。いたずらに登校刺激ばかり与えるのではなく、当事者であるその人の悩みや葛藤や迷いや逡巡を、その過程とそこでの試行錯誤とを尊重し、腰をすえてその人の成長に寄り添うこと。その人がこれまでさんざん奪われ続けてきたであろうイニシアチヴを、その人に戻してあげること。そういう、支援者の側のかまえとして、「待て」は解釈されな

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「接続する」という技法。

「接続する」という技法。

■先月に引き続き、当事者の親の会での講演の場でのやりとりの中から話題を提供したいと思う。私を講師として呼んでくれた親の会が活動するその地域には、(不登校・ひきこもりなどの)子ども・若者たちが利用可能な居場所が身近に存在していない、とのこと。だからこその、自前の居場所を草の根で立ち上げていくための学習会。当然、私の話題提供に対しても、さまざまな角度から、具体的な質問があった。前回に引き続き、ここで再

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「誘惑する」という技法。

「誘惑する」という技法。

■先日、とある当事者の親の会にお招きいただき、居場所に関する学習会で講師を勤めさせていただく機会があった。ぷらっとほーむにはそもそも「親の会」という概念そのものが存在しないので、「親」あるいは「親の会」という立ち位置にある人びとと対話をするという機会それ自体が極めて希少。ゆえに、普段は気づけない「当事者の親」という立ち位置ならではと思われるさまざまな価値前提の存在を知ることができ、非常に有意義であ

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動き出す世界、回り出す居場所。

動き出す世界、回り出す居場所。

■居場所づくりに関与していると、「不登校・ひきこもり」に言及する場面に頻繁に遭遇するのだが、そこで「通説」めいたものとして時おり語られるこんなネタがある。それは、「居場所に新規の子ども・若者たちが入会しに来る時期でいちばん多いのが、5月の連休明けと9月の夏休み明け」というもの。長い休みのなかで「休み癖」「怠け癖」がついてしまって、休暇が終わってもそのままずるずる登校/通勤拒否、というげんなりするく

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「自立」をめぐる思考停止

「自立」をめぐる思考停止

■たまたま最近、「不登校」「ひきこもり」など、若年世代の「問題」についての(主に支援者サイドの)シンポジウムや講座で話したり、対話したりする機会が重なり、「不登校」「ひきこもり」というものに対する周囲のまなざしのありかたをめぐっていろいろ考えさせられることが多かった。そこで今回は、この「不登校」「ひきこもり」というカテゴリーについて改めて考えてみたい。この「不登校」「ひきこもり」と必ずといっていい

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