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メモ 雲南省の地域開発が中国の対ミャンマー外交に及ぼした影響

2020年1月、中国とミャンマーが署名した覚書によって、中国・ミャンマー経済回廊が具体的に推進されることになりました。この合意には33の分野にまたがる協力関係の強化が約束されており、中国とミャンマーの貿易関係を深める効果が期待されました。しかし、この構想を作り上げたのは中央政府ではなく、地方政府であり、雲南省でした。

雲南省は中国の内陸部に位置する自治体であり、ミャンマーの国境と隣接しています。雲南省はその土地の9割近くが山地であり、主要な産業はタバコ産業に限られています。交通の不便さから地域経済の発展は沿岸部より遅れており、経済成長のためにも地域開発を推進する必要がありました。雲南省の中でも、ミャンマーとの関係を強化することに特に力を入れてきたのは徳宏タイ族チンポー族自治州でした。雲南省でも最も南西に位置している自治州であり、ミャンマーの国境と直に隣接しています。

徳宏タイ族チンポー族自治州は2007年から雲南省で地域振興を目的としたロビイングを活発に行うようになりました。まず、省としてミャンマーとの経済連携を模索するように働きかけ、同時に独自のルートでミャンマー政府との外交関係を構築しました。雲南省は、ミャンマーとの貿易を通じた地域経済の開発を、公式な外交政策と位置付けることにより、国からの後押しを得ようとしました。こうした努力が結実したのが2020年1月の習近平国家主席によるミャンマー訪問であり、これによってミャンマーとの貿易は国家としての事業としての地位を得ることになりました。

中国の地方政治が、外交政策に及ぼす影響をさらに詳細に知りたい場合は、吉川純恵氏の「ミャンマーに対する中国の政策(China's policy towards Myanmar)」をおすすめします。この論文では、中国とミャンマーのエネルギー貿易の動向だけでなく、そこに地方政治がどのように関連してきたのかが明らかにされており、大変興味深いです。

Sumie Yoshikawa (2022) China's policy towards Myanmar: Yunnan’s commitment to Sino-Myanmar oil and gas pipelines and Border Economic Cooperation Zone, Journal of Contemporary East Asia Studies, 11:1, 143-161, DOI: 10.1080/24761028.2022.2062857

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