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文字を読むより絵を描いたらいいという父の言葉

毎朝、父に電話をしているのである。

80歳を超えた両親は実家に、僕は離れたアパートで一人暮らしをしているのだが、会えるというか一緒にいる年月も考えてみると残り少ない。ということで、毎朝5分だけ挨拶代わりに電話をかけている。

今朝電話をしてみると、父がいきなり「お前はもう本を読むのは止めろ。これからは文字よりも絵を描くことだ。」というのである。

父の説明はさらに続く。

「お前は今まで長い間本を読んできたから、お金もかかるし本を読むのはもういいだろう。それより絵画が大事だ。歴史的に見てもエジプト文字といいといいマヤ文明の文字といい甲骨文字といい、象形文字のようなものは元々絵画だ。言葉の大本は絵画なのだから、お前は本を読まずに絵を描け。」というような、まるで漢字学者の白川静博士のようなことを言ってくる。

僕は父の発想にびっくりすると同時に、「さすがは科学者的な分析に入るよなー、退職しても」と元学者だった父の発想を受け入れることにした。

父からしてみれば、僕は心の病を患ってから、福祉就労に出かけることは有ったが、それ以外は本ばかり読んでいるように見えたらしい。それが、最近は絵画に写真に俳句に数学の学び直し、病院デイケアでの友達づくりと、興味の対象が広がってきている。特に絵画は水彩画教室にも通い、2年経って少しは上達してきている。最近は風景画を描くことに興味もでてきたし。

そういうことで、本は積読本を消化して新たな本を買わず、もっと絵画を描くことを生活の中心にしたほうがいいのかな?と思うようになってきた。訪問看護師さんたちもそのようにアドバイスしてくるし。

ということで、今日の病院デイケアで絵画仲間の女性に父の「文字よりも人間にとって絵画が大事」説を説明すると、すごく喜んでくれて僕もびっくりした。まあ、物を観察することから人間の活動は始まったようなものだし、案外父の持論も当たっているのかもしれない。

ともかく僕を励まそうと考えだした父の説ではあるが、なにか信憑性が高いような気もする。それより僕を本から引き剥がし絵を描かせようという思惑が覗く。やっぱり絵を上達させて絵画展やコンテストに応募してもらいたいようなのだ、父の気持ちとして。

僕もそれに応えようと思うが、本は楽に読めるけどもなかなか絵に手を付けられない。この癖をだんだん減らしていってもっと絵を上達させたいと思っている。笑われるかもしれないが、数枚ぐらいは入選できたらいいなと思っている。

ある意味当たっているような珍妙なような父の学説?で、絵を描きたいという気持ちにじんわりと火が着いたようだ。明日からマイペースで持続的に絵を描いていければ人生の楽しみも増すというものだ。

今日は父の話をした絵画仲間の女性から絵画展の応募について教えてもらったから9月までに2つの公募展に応募する予定でいる。それに写真展も1つか。だんだん創作活動を本格化させないと間に合わないな。(汗)

ということで本の虫から絵の虫へ移行できるかどうかの大事な時期だ。習慣を変えるのは難しいのだが、何とかしてみよう。親心というのはホントにもう!という気持ちに尽きる。


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