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#小説
小説「ユメノミライ」①
小学三年生の時、僕はピアノの角に思い切り頭をぶつけた。
その瞬間、小さな体全身に電気が走ったようだった。
僕の中で何らかの異変が起こった。
それから始まったのが予想できてしまう未来。
夢で見たことが全て現実に起こる、それはつまらなくとも無難で安心な人生だった。
*
「未来が予想できる?」
目の前の女性は怪訝な顔をして聞く。
「ああ、できるとも。俺はずっと予想通りに生きてきたんだ。」
小説「ユメノミライ」②
それから三日後の夜、ベッドに寝転がり、アクション漫画を読んでいるとスマホの着信音が鳴った。
ユリという名前の前後に赤いハートが表示されている。初めて彼女が出来たと気持ちが舞い上がり、そう登録したのだ。
俺は体を起こして、電話に出る。
もしもし、と少し震えた声でユリは言った。
「どうしたの?」
と俺は何事もなかったかのように返す。喫茶店で会って以来、LINEのメッセージが届くこともなかった
小説「ユメノミライ」③
注文したメニューが出揃い、俺らは食べ始めた。過去のデートでも食べている時だけは口数が少なく、食べることに集中した。ユリは昔から食事には気をつかい、外食であっても肉や野菜などをバランス良く食べていた。
大方食べ終えて、アイスコーヒーとデザートをそれぞれ注文した後、ユリは話し出す。
「ヒロシは何もわかっちゃいないのよ。」
そう言って、俺のグラスにお冷やを注ぎ足した。
「夢を信じているのかも知れ
小説「ユメノミライ」④
ユリの部屋は前回より散らかって見えた。そわそわしながら、ソファーのユリの隣に腰かけた。
北海道の夢って、とユリは話し出した。
「ヒロシは自分に直接関わらないことも夢で見るワケ?」
俺はテレビのバラエティー番組を見ながら、黙っていた。
「ねえ、北海道いこうよ。今すぐにでも行きたいのよ。」
ユリは俺の腕を振り回した。そして立ち上がり、テレビのスイッチを消した。
必ず、と俺は呟いた。
「北
小説「ユメノミライ」⑤ 最終話
俺は北海道のテレビ局や新聞社に何度も電話をかけた。ハガキを書いて何度も郵便で出した。
まるで取り合ってはくれなかったが、それでも諦めなかった。
ユリも同じように何度も手紙を出した。ヤスオはわざわざ、テレビ局本社まで出向き、頭を下げた。
しかし、その努力も実を結ぶことはなかった。
日本海上、北海道の近くまで台風は来ていた。
窓から外を見遣ると、庭の草木についた滴がポタポタと一定のリズムで落