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TEXT: 2023 Album of The Yearの3作

アァ、2023年終わるどころか1月が終わった。ウソやん、2月も終わった。・・・・・3月も終わりそうですが?
としてたら4月と5月が飛んでいき6月になりました。

あまりにも更新しなさすぎるのですが公私ともに忙しすぎて破綻しています。
2023年購入したものからのベストアルバムです。3枚だけ選びました。それ以外のものを更新できずに下書きに入れっぱなしにしていたので、まさに時期を逸したけれどカビが生えてしまう前にのリリースです。

1.Algiers - SHOOK Deluxe


アメリカはアトランタより。ゴスペル版Death Gripsという枕詞は本当か?というのは最初期より思っていたけれど、彼らAlgiers(アルジアーズ)の音楽はより一層の混沌を深めていく印象。隙がない作品。ポストパンクに収まらず、Bad Brainsライクなハードコアの血筋も否定できないはず。だってザック・デ・ラ・ロッチャとのコラボレーションなんてその最たるものじゃないか。無機質な、というよりは有機的なエグみ。先のザックのOne Day As A Lionは大好物なのだけど、そういった切り口を感じさせる。とはいえ、作品自体は荒々しさというほりはずっと洗練された冷静な表現。怒りというよりは淡々とした主張。冷たく硬質的なフィーリングと、ブラックミュージックから来る有機的な感傷が交錯する。やや懐古的なシンセがまたある種「今風」な雰囲気を醸し出すも、嫌味じゃない、今の音楽に仕上げてある。ここ10年でも十分に上位に飾られるべき傑作。
今作については、オリジナルも買ったが、デラックスのカセットテープも買ってしまったゆえにデラックスをベストに選定。ボーナストラックはいくつかのライヴverを収録しているが、いずれも余計さを感じさせないほどシームレスに展開してくれる。大いに絶賛したい。


2.(Hed)P.E. -DETOX

驚くほどに最前線のニューメタル、ラップコアをカマしてくれてるじゃないですか。ある意味コンピレーション的だったCalifas Worldwideをも咀嚼し、再編成したような、キャリア最高と十分に言える作品。―――さて、彼らに限らず今ニューメタルが改めてキテいるような風潮もある。同門Dropout Kingsの作品然り、現役バリバリのP.O.D.の新譜だとかも凄いし、311も今かなりの最前線で活躍しているのはご承知の話かもしれない。とはいえ、それらの中でも贔屓目なしで抜きん出ていると言いたい今回の新譜。1stでありセルフタイトル作を思わせるなど、(Class of 2020ではやや中途半端な形となった)原点回帰を色濃く感じさせながら、Only In Amerika〜Insomniacのあたりのメタル〜パンクの横断とともに、Vo.ジャレッドのシンガーとしての魅力―――緩急豊かなヒップホップとしての個性も改めて再定義。全編コンセプチュアルな映像作品とともにアルバムが出来上がっており、そこも彼らの新機軸的な魅力に繋がっているかと思う。
時間にして40分足らず、彼らにしては比較的短めの作品ではある。全曲にアニメーションがつき、今の世相を反映させつつポリティカルな主張を行うが、そういったところは彼らの思うパンクの体現でもあるかと(そうそう、初期こそエモはホモだ、だなんて言ってた彼らが、世相を反映しながら同性愛のことすら映像で示すのは、過去はどうあれ人間更新しない、されないとダメだよねってことを強く思わせる)。特にThis Dreamは疾走感のあるパンクチューンで最高すぎる。Insomniacの「天安門広場」を思わせるパンクライクな楽曲。ヴォーカルのジャレッドはいくらか他のニューメタル、ラップコア勢と比べてもラップスキルの高さが目立つシンガーであったが、今作では一層顕著に感じさせてくれる。ひとまずは彼らの再来日を切望するとともに、キャリア最高傑作と言って過言ではない作品をゆっくり味わうこととしたい。
なお、彼らもようやく表舞台の大きなフェスに復帰できており、今やニューメタル、ラップコアあたりのジャンルが時代に再フィットしてきているのではというのが錯覚でなければ最高に思う。

同じステージのトリがサイプレス・ヒルなのもいいよね。


3.GriffO 鬼否樂団 - 本体Ontology

ベストアルバムを選ぶのをモタモタしているうちに来日が決まり、何なら地元福岡での公演までしてくれることになった。最高じゃん。
来日に合わせてインタビューもさせていただいた。それはこちらに。

といいつつも、ご祝儀的にベスト選定したわけではなく単純に作品としての練度と彼らの楽曲の良さは2023年を代表するものとして遜色ないからにほかならならない。
前作を踏襲しつつもデジタリィな魅力と対照的なヴォーカルの瑞々しさ。有機無機の入れ替わり。エクス・マキナ。デジタル技術と人間を含む生き物、というのが作品を通じてのテーマでもあることは、先のインタビューの中でも若干触れられていることでもある。「RE:人是」は冗談、とも彼らは語るけど本質でもあるのかななんて。
肝心の楽曲については、熱情をほど隠しつつ楽曲の細部に強さを滾らせ、技巧的な反面それを感じさせないような大衆性も強い。中国のミュージックアワードでかなり評価されているというのもあったが、それも頷ける普遍性と特殊性の同居。相反性というのもひとつのテーマに感じる。
インタビューにおいて彼らが述べていることは私自身が作品に感じていたこととほぼ重なるのであまり多くは語らないけれど、とても美しく冷静で、一方享楽的でもあり、多様性というのはこういうことかと感じさせる作品。
そういえば今回選んだ3作は多様性そのものの作品ばかりだったなとも改めて。陰陽含みつつ破綻しない魅力というのはやはり何にも代えがたい。


ほかにも、ひとひら、5kai、Ancients、Bear The Mammoth、The Bronzed Chorus、Closure In Moscow、Colossal Squid、Dropout Kings、Elephant Gym、King Gnu、Life In Vacuum、Mammal Hands、Methods Body、Oavette、OK WAIT、pulses.、SAWCE、So Much Light、SPOILMAN、Ukandanz、Ultra Zook、YMNK、そしておまけのChinese Footballなども良かったです。改めて語る場面があればそこで。


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