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旅するチャペル・ルーロット 秘密の再生工場

一見なんのへんてつもない下町の長屋に、とある秘密の再生工場があります。そこはガレージの秘密基地。謎の機械や美しい道具や部品たちが気持ちよく並べられていて、不思議な居心地の良さを感じます。

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さて、今日はこちらの再生工場に「移動式チャペル ルーロット」の窓の修理のためにやって来ました。


ガレージ工場の秘密

2年前にルーロットのドアのメンテナンスのためにこの再生工場を訪れた時よりも内装がうんと進化しています。作業場のすぐ隣には車があって、まさにワクワクのガレージ工場!

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釘やビスもこの通りの魅惑的なディスプレイ。

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それにしてもなんだろう、この居心地の良さ。懐かしさ。

オヤ、この棚はどこかで見かけたことがありますね。

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コロナの影響で今年4月に惜しまれながら閉廊したギャラリー9で使われていたカウンターではないですか。私が8年間居た仕事場アトリエの、階下にあったカフェバーのカウンター。よくここで飲んだり飲んだり飲んだりしたものです。

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カウンター越しのこの景色が、もうすでに懐かしい…。(↑写真はギャラリー9の共同経営者で芸術家の高田さん)

カウンター、こんなところに居たのね〜。(感動の再会)

よくよく見てみれば、そこかしこにギャラリー9の面影が。見たことのある机やワニやジュークボックス型パソコンや、ウミガメや蛇口ランプなど。どうりで懐かしく、居心地が良いわけです。

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それもそのはず、ギャラリー9の改装を手がけたのがこの八木再生工場の工場長、八木さんなのだから。

そして、トレーラーハウスのチャペルでどこでも結婚式が挙げられる、移動式チャペル・ルーロットを作ったのも。

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すごい発明はだいたいガレージから生まれる

それにしてもなかなか魅力的なガレージ工場です。

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アップルコンピューターも映画のタイムマシーンも、すごい発明はみんなガレージから生まれています。たぶん。

「すごい発明って、だいたいガレージから生まれてるもんね」と言うと、「理想はバック・トゥ・ザ・フューチャーのガレージなんですよ」と答える八木さん。ロボットを作ったりUFOを作ろうとしていたくらいだから、あながち遠くない話。うっかりここでタイムマシーンも作れたりしてね。

↓これは八木さん作のジュークボックス型パソコン。レトロフューチャー感。

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窓ガラスの修理、その原因と工程

さてさて、ルーロットの窓ガラスの修理です。

↓在りし日の窓ガラス。

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この窓ガラスが割れたんです。(涙)

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あれは忘れもしない半年前の11月28日。(どうして正確な日付を覚えているかというと、私の誕生日だったから)朝いきなりものすごい突風が吹いて窓がバーンと開いてしまい、壁に叩きつけられ、ガラスが壊れてしまいました。

もともと、テレビ番組「チャペルカーが行く」の企画で、昨年夏に関東への大冒険(神戸から静岡・伊豆半島で天城越えをして南伊豆海岸まで。そして東京お台場〜神奈川への結婚式の旅)で、窓を固定する内鍵が長旅による振動で緩んでいたことも原因の一つでした。

↓ヒヤヒヤした天城越え。

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よりによって誕生日に…。ショックすぎる。

あまりのショックさに、八木さんに相談することもできずに1週間あまり悶々としていました。

なぜなら、チャペルを立ち上げた時、とても時間と手間をかけてその窓を移動に耐えうる仕様にしてくれたことを知っているから。

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ものは壊れる。直せばいいだけ。

結婚式のためのチャペルだから、私はビジュアル面での美しさや、アンティークなイメージも大切にしたかったのです。3方透明なガラスにするよりも、サイドは柄入りのガラスにした方が周囲の景色の写り込みを気にせず写真を取りやすい。そんなこともあってわざわざヴィンテージの模様ガラスの木窓を入手し、特殊な加工をして、万が一割れても飛び散らない強化ガラス仕様にしてもらっていました。

移動式チャペルならではの「見た目が美しく、かつ移動に耐えられる仕様」です。

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しかし、いつかは言わないといけない。意を決して八木さんに打ち明けると、

「大丈夫ですよ。ものは壊れますから、直せばいいだけです」

ほっ。そうよね。直せばいいだけ。そっか。私が洋服やドレスを「直せばいいだけ」と思うのと一緒だ。自分にガラスが直せないものだからビクビクしてしまうけど、服だと思うと理解できる。お客様が、古いドレスを「あのう、これ…直せますか…」と恐る恐る持ってこられる気持ちがようやくわかりました。直せるし、どうとでもできるという自信がある。そういうことか。

「ただ問題は、ガラスですよね。壊れていないガラスと柄が合うかどうか…」

そう、そこなのよ。

こだわりのヴィンテージガラス。そうそう簡単には見つからないだろうと思っていましたが、思いのほかあっけなく見つかりました。Instagramにガラス業者の広告が入ってきて、カタログを取り寄せたらそっくりのガラスが見つかったというわけ。しかも、強化加工をしてもらって、サイズもぴったりにオーダーできました。すごいな、iPhoneがあれば何でも見つかっちゃう。さすがはガレージ発のアップル。

さてさてこうしてガレージ工場にやってきたガラス窓。

見比べてびっくり。模様がそっくり。木枠にはめてもピッタリ。

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それはまるで、シンデレラのガラスの靴のよう。窓だけど。

運命のガラス窓や〜。

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事前に八木さんが木枠に合わせて細かい加工をしてくれ、私は最後の工程にお邪魔させてもらいました。(←最後の最後だけ来てやった感出してくるヤツ)


工程その1・ ガラスと枠に合わせたアルミの枠を固定する作業

これをする理由は、ズバリ、次にガラスが壊れた時にメンテナンスしやすくするため。

そう、「ものは壊れる」ということを前提に、修理をしやすく作るということは実はとっても大切なことなのです。服もそうです。例えばイギリスなど、古いものを何度も修理して使うことが当たり前の国生まれの紳士服などは、あらかじめ修理がしやすく作ってあります。ズボンには、裾布が擦り切れてもそこを交換すればいいだけの「靴擦れ」がついていますし、ウエストサイズが変わった時にもお直しがしやすい作り方をしてあります。

以前お客様のご依頼でお直しをした婦人向けバーバリーやアクアスキュータムのトレンチコートも、さすが英国製だけあって、紳士服の様にきっちり直せるように作ってありました。特にアクアスキュータムの、裏地をほどいたときにしか見えないはずの内側の始末の美しさには、一種の感動すら覚えたほどです。

ああ、すいません、つい話が服のことにそれてしまいましたね。

なんの話でしたっけ?

そうそう、つまり直せる様に作ることはすごく大事ってことです!

で、そうするために、わざわざアルミをカットする専用の刃も導入したみたいです。

「それ専用の刃を買ったんですよ」と、とっても嬉しそうな八木さん。新しい仮面ライダーの武器を手に入れたこどものような表情です。

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さらに、細かい側面にビスを打てるインパクトドライバー用の武器、じゃなかった道具も。

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「しかもこれがすごいのは、ちゃんとちょうど真ん中に穴があくようになってるんですよ!」

よ、よかったね。


「…やってみます?」

「いえ、大丈夫です」


工程その2・窓をコーキングする作業

次は、コーキングです。

Caulking(名):窓枠の周囲、部材のつぎ目などの小さい隙間にパテ状の充填剤を詰めること。

充填剤をウニューっと搾り出します。

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見ていると、ケーキ作りのようで楽しそうに見えるので、私も挑戦してみました。

ウニューっと…あれ?

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見た目よりもうんと難しい!

息を止めて絞り始めたら、息継ぎのタイミングがつかめず、呼吸が苦しくなってしまいました。


そのあとはパテをならして余分な充填剤を取り除きます。

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これがめちゃくちゃ難しい!完全に乾かないうちにしないといけないので、ちょっとモタモタしてたら大変なことに!

↓モタモタしてます。

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難しい〜!

この日以来、世の中の窓ガラスのコーキングを尊敬の念で見るようになってしまいました。職人さんてすごい。

ヘタクソすぎて、ほとんど何の役にも立たなかった私。結局やり直しになってしまいました。ほんとごめん…。それこそタイムマシーンに乗ってやり直したい。


タイムマシ〜ン〜!!

ハッ!

タイムマシーンといえば!!!!

テレビ番組「チャペルカーが行く」の企画で、昨年夏の関東の旅(結婚式の旅)が放送されたときの、移動式チャペルでの二組の結婚式を見たIKKOさんのコメントを思い出しました。(IKKOさんと滝沢カレンさんは結婚式の見届け人という設定でした)

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昔、両親と行った思い出の浜辺で結婚式を挙げたカップル。

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もうひと組は10年前に結婚してまだ結婚式を挙げていなかったカップルが、初めて出会ったスーパーの駐車場で挙げた結婚式。

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それぞれの結婚式を見届けたIKKOさんのコメント。

IKKO:「すごいよね、場所も時間も超えて、タイムマシーンみたいね」

滝沢カレン:「思った〜!」

IKKO&滝沢カレン:「タイムマシ〜ン〜!!」

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タイムマシーン、作ってんじゃん。


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▽参考記事




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ドレスの仕立て屋タケチヒロミです。 日本各地の布をめぐる「いとへんの旅」を、大学院の研究としてすることになりました! 研究にはお金がかかります💦いただいたサポートはありがたく、研究の旅の費用に使わせていただきます!