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【慈愛と気品に満ちた淑女の皆様へのお願いごと】

多くの男性は、哀しき希望を宝玉のごとく大事に胸に抱き続けてしまう呪いをかけられている。相手にその気がないとしても、自分に都合のいいように言動を解釈し、暴走列車のようにまばゆい未来へと突っ走る。

桃色に染まる破廉恥極まりない想像力を働かせ、美女と野獣のダンスシーンのようなロマンチックラブを夢見て知恵を絞るのは楽しい。しかし相手にとって自分がハナからNO案件だった場合、金と脳の骨折り損になってしまうのはなんとも虚しいところである。

慈愛と気品に満ちた淑女の皆様。
受け付けられない男性のお誘いを断る際に

「ごめん、最近忙しくて!また落ち着いたころに!」

などとその場しのぎの曖昧な返答で会話を切り上げるのは非常に残酷なことなのです。

仕事が立て込んでいて時間がとれないという女性の口実を馬鹿正直にそのまま受け取り、「落ち着いたころ」を勝手に見計らってアプローチしてしまう男性がいる。多くの場合、彼らは決して性欲に侵された野蛮人ではない。素直で愚鈍で夢見がちの気の毒な生物なだけなのである。

そもそも彼女にとっての「落ち着いたころ」というのは「お前と関わらない時間」という意味だ。しかしそれは彼らの想像力では到底たどり着くことのできない超現実。連絡をとれただけで「いい感じだ!」とサムズアップして、スマホに向かってにんまりと気持ち悪い笑みを浮かべる男性は後を絶たない。

「ペラペラした回答を送ったのだからいい加減察しろ」と眉間にしわを寄せて返信ボタンを押しても、実はそれが墓穴だったりする。ペラペラしていて内容のない文章だからこそ、相手は無限大の受け取り方をする可能性がある。栄養満点の肥料と良質なお水がオールインワンした優れもの♪と捉えられたらやっかいだ。カラカラの大地だろうと必ず花を咲かせてしまう。すぐにお花畑と化す男心のシンプリシティーを侮ってはいけない。

こいつと距離を置きたいと思う時は、全力で無視するか完璧に袖にするのがよい。しかし前者を実行するにはなかなかのリスクが伴う。あいつには人の心がない、機械化したシュワルツェネッガーだって涙の意味を分かってたぞ!と対象者以外の男性陣から噂されるような事態になってしまっては体裁が悪い。ゆえに、私は後者をお勧めする。

食事に誘われたら、彼氏が待ってるからごめんねと彼氏持ちアピールをするのが手っ取り早い。彼氏がいないとしても強引に貫き通すべし。男の存在を匂わせる言動を今までしてこなかったとしても、遠距離してるor最近できた、などいくらでも誤魔化すことは可能である。
パートナーがいるとなれば、男性側も諦めざるを得ない。どおおおっと溢れる涙を飲み込み、「男として潔く身を退いたのだ!なぜなら私はサムライだからだ!」と叫べば、彼は惚れた女の幸せを願う立派で気高い武士として後世まで語り継がれる英雄となれる。まさしく双方にとって得しかない。

無論それでもしつこくつきまとってくるようであれば、掃除屋さんたちに依頼するのも手であろう。なんの掃除を得意としているかはここでは話せない。

憐憫の心を込め、一太刀ですっぱりと斬り倒してほしいとこの場を借りてお願いした。
私が交わりを望み、それを拒絶せずに受け入れようとしてくれる稀有な婦人には全くもって関係のない文章であることを最後に強調して、本日は御仕舞とさせて頂こう。

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