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■感想文『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』/著者・増田俊也さん


真実の持つ力にみなぎった一冊だと思います。私は幾度となく、開いた口が塞がりませんでした。

力道山戦後の木村さんの後半生の苦悩や、弟子への思い。牛島さんとの戦前の二人三脚も、気の利いたことがいえないのですが壮絶で。木村さんの全盛期が本当にどんな強さだったのか……。単行本の表紙の写真で18歳だそうです。展覧試合に限らず、純粋に柔道の試合が見てみたいと思いました。強く、そう思いました。

本作は、プロレス週刊誌の連載を単行本化したノンフィクションの傑作です。作家の百田さんがテレビで本書を絶賛したことで、瞬間的にAmazonから在庫がなくなったこともありました。

著者・増田さんの執筆のきっかけは、単行本の表紙にもなっている木村さんの死なんだとか。それからの地道な取材や情報収集で、連載終了まで18年が費やされています。単行本は、2段組で700ページ弱のボリュームですが、おそらく原稿の2倍、いや、3倍4倍の情報を集め精査し、連載されたのだろうなと想像しました。あとがきに連載の苦難もつづられていますが、それは物理的な苦労よりも、ライターとしての使命と、個人的な感情の間で、どう真実を書いたらよいのかと、苦しんだからなのでしょう。そのあともうかがい知れます。

著者自身も本書内で語っていますが、本文中に矛盾というか、著者の姿勢が揺れている部分などもあって、それすら隠さず文章にしてあり、その真実に対する著者・増田さんの真摯さに私は心を打たれてしまいした。

本好きの友人にもすすめられる一冊。ただ、女性はどうだろう。柔道だけじゃなくプロレスの話も出てくるので、やはり万人にはすすめられないけど。でもそれを差し引いても、取材の苦労を思うと頭が上がりません。よくぞここまで取材を積み重ねたと、脱帽です。この本は後世へ残す価値がある本だと思います。

2,600円は決して高くない。

読む価値が詰まった一冊と言わせていただきます。


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