髙橋さとう(ニュース記事を発信するオウンドメディアの編集長)

馬の代わりとして自動車が隆盛を極めた現代でも、乗馬は残っている。楽しさは普遍なのだ。本…

髙橋さとう(ニュース記事を発信するオウンドメディアの編集長)

馬の代わりとして自動車が隆盛を極めた現代でも、乗馬は残っている。楽しさは普遍なのだ。本の代わりとして動画やインターネットが隆盛を極める未来でも、読書は残る。そこに楽しさがある限り。情報をインプットするための読書ではなく、楽しい読書がしたい。それを提供する人になれたら幸せです。

マガジン

最近の記事

本書の内容を自分が20歳のときに知っていたら、就活は怖いものなしだったかも

■感想文『20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義』/著者・ティナシーリグさん、翻訳・高遠裕子さん あけましておめでとうございます! この本の著者、滅茶苦茶頭の回転速いですね。スタンフォード大学で、著者が学生に起業家精神とイノベーションについて講義している内容の本です。トレーニングキャンプというんですかね。それを本人が解説する形の本になっています。学生へのプレゼンテーション、といってもいいですね。講義の一部を動画で見て確認しました。一回60分の授業

    • 「僕は神谷さんの優しい声に弱い」

      ■感想文『火花』/著者・又吉直樹さん 本書の内容、というよりも、又吉さんの内省する力と、的確な言葉を使える力の素晴らしさに、ずっと「すごいなあ」と感じながら読んでいました。 本書は、若手芸人の徳永と、その先輩芸人である神谷が繰り広げる、芸人論と人生観を、徳永の視点で、描かれた文学作品です。太宰治さんの愛読者?愛好家?としても、大変有名な芸人さんですが、言葉の的確さはあきらかに凡人の域を超えています。オチのアイデアにも脱帽。文學界に掲載されるだけの筆力は、さすがです。テレビ

      • 「この場を逃げおおせたとしても、安息を手に入れることはできない。事態は最悪だった」

        ■感想文『最悪』/著者・奥田英朗さん 読後はなんとか持ち直しましたが、中盤以降は読み心地があまり良くなかったです。いや、正直にいうと、悪かった。。。誤解のないように付け加えますが、先が気になるという意味で、ページをめくる手をなかなか止められないし、閉じた本を開きたくなる本ではあります。ただし、この本を読むためには体力が必要でした。 例えば本書が初めての読書になる人(少ないでしょうけど)、息抜き、楽しみ、娯楽として読書をしたい人、私生活や仕事でストレスがやや溜まっている人な

        • 「首切りの本質は……殺人という事実の隠匿です」

          ■感想文『バイバイ、エンジェル』/著者・笠井潔さん 現象学に秀でた学生である矢吹駆と、司法警察の警視モガールの娘であるナディアが、パリのヴィクトル・ユーゴー街で発生した死体をきっかけに、 謎を解いていくミステリー小説。とても緻密に書き込まれたロジックは、 なかなか引き込まれました。本格、と呼ばれるミステリー小説が好きなら、 私よりも、もっと楽しめる一冊なのかもしれません。 抽象的な概念の話が苦手な読者には、おすすめでない一冊ですが、本質直観、などの言葉に好奇心を掻き立てら

        本書の内容を自分が20歳のときに知っていたら、就活は怖いものなしだったかも

        マガジン

        • 全5作/近藤史恵さんの『サクリファイス』シリーズ感想文
          5本

        記事

          「訊くが、きみにとって警察学校とはどんなところだ」

          ■感想文『教場』/著者・長岡弘樹さん 警察学校を舞台にしたミステリー。生徒同士の確執や、生徒と教官のやりとりが、ミステリーに仕上がっています。本書はなんといっても、風間教官でしょう。警察学校の風間教官とその新入生たちのやりとりが見どころの1つです。緊張感たっぷりで、ハラハラするというか。凄惨な現場や取るに足らない派出所の騒動など、千差万別な事件を経験してきた風間教官は、その経験と同じくらい、警察学校でさまざまな新入生や卒業生を目にしてきたのでしょう。そうした風間教官の、これ

          「訊くが、きみにとって警察学校とはどんなところだ」

          「ボンドです。ジェームス・ボンド」

          ■感想文『007 白紙委任状』/著者・ジェフリー ディーヴァーさん、翻訳・池田真紀子さん 「この話は映画の何作目だったかな」そんな風に思えてしまうほど、映画『007』を一度でも見たことのある人にとって、違和感の少ない小説だと思います。訳者のあとがきには、こうありました。 1953年にイアン・フレミングが生み出した世界一有名なキャラクターを 数百万の読者を失望させることなく現代に蘇らせること フレミング財団のオーダーに応える形で、本作は生まれたようです。007基準で本作を

          圧巻の主人公。天童荒太さんに脱帽!

          ■感想文『悼む人』/著者・天童荒太さん 『悼む人』は登場人物のキャラクターが素晴らしいです。主人公の青年の対比としての蒔野という人物が出てきますが、蒔野は序盤から私たちを物語へとグイグイ引き込みます。本書は、主人公を取り囲む周囲の人物の視点で物語が展開されていきます。母親の死や娘の出産など、いろいろな死生観が出てきます。特筆すべきは、主人公の死生観です。成熟していない青年の価値観は自分の経験則から形成されており、私個人は、その未熟さゆえに陥りそうな主人公の発想に、想像された

          東野圭吾さんの”加賀シリーズ”が初めての人にもオススメ

          ■感想文『新参者』/著者・東野圭吾さん 人物や情景を思い描いて読み進められました。まるで、自分が刑事になって東京・人形町の商店街を聞き込みしているような、想像力をかきたててくれました。登場人物が多いわりに混同することもなく、物語はテンポ良く展開されていくので、スラスラを読み進められた点も気持ちがよい読書でした。 犯人の動機や周囲の人間の気持ちが丁寧に描かれていて、かつストーリーや殺害動機などにも極端な点がありません。殺人事件の物語なのに変な言い方ですが、物語として破綻なく

          東野圭吾さんの”加賀シリーズ”が初めての人にもオススメ

          勝ちへのコダワリが見事!

          ■感想文『ボックス!』/著者・百田尚樹さん ボクシング漫画? アニメ? の高校生版「はじめの一歩」みたいな話です。私はボクシング素人ですが、物語の主人公もボクシング素人の耀子先生です(映画では木樽が主人公だったような)。高校のボクシング部の監督が耀子先生に、ボクシングうんちくをペラペラ話すことで、ボクシングに興味のない人、知らない人でも物語の世界に入り込めるようになっていると思われます。『永遠の0』でも『モンスター』もそうですが、百田さんの本はうんちくがすごいですね。 本

          1,012ビュー、ありがとうございます。117スキ、ありがとうございます。

          このnoteは業務ではないので、数値目標を掲げていません。完全に個人的な楽しみで続けてきましたが、気づくと、読んでくださる人やスキと反応してくれる人の存在が、いつしか私のなかで大きくなっていきました。その人たちへの感謝を伝える節目として、1,000ビュー&100スキのタイミングで、感謝を述べさせていただきます。ありがとうございます。 「この本を読もうかな」「この本は私にあうかな」そんふうに考えている人に、少しでも参考になる情報を届けたくてnoteをはじめました。また、私の感

          1,012ビュー、ありがとうございます。117スキ、ありがとうございます。

          ジョン・ロールズの哲学の一つが実践されていると感じました。

          ■感想文『マイクロソフトでは出会えなかった天職 僕はこうして社会起業家になった』/著者・ジョン ウッドさん ある人が強い勤労倫理を持って、根気強く頑張り努力したとしても、その努力ですら、幸運な家庭の状況の下で生じるものであるから、私たちは自分の功績だとは主張できない――ジョン・ロールズ 生まれながらに有利な者は、より才能があるというだけの理由で、便宜を得るべきではなく、訓練と教育の費用を賄い、恵まれない者たちへの助けになるように、その資質を使うべきである――ジョン・ロール

          ジョン・ロールズの哲学の一つが実践されていると感じました。

          「ホシは『サトウ』を名乗り、現金二千万円を要求しています」

          ■感想文『64』/著者・横山秀夫さん 横山さんが小説を書くと、書いたあとに、書いた内容が事実として世の中に存在してしまうような、強い説得力を感じます。緻密で詳細に書き込まれた世界観や、張り巡らせた伏線を拾い集める仕掛けは見事です。本の前半部分では主人公の内省が少しだけ続きますが、一度、サイコロがふられたあとの物語の展開には息をのみます。小説のテクニックなどに気を取られることなく、何も考えず、「物語がどうなるのか」に没頭できる作品です。第三の時効のときも思いましたが、この本の

          「ホシは『サトウ』を名乗り、現金二千万円を要求しています」

          「だったらな、今度警察の人間が来たらこう言え。村瀬に全部喋った、話なら村瀬から聞いてくれ、ってな」

          ■感想文『第三の時効』/著者・横山秀夫さん 本書は、F県警の捜査第一課・強行犯捜査一係の、活躍と葛藤を描いた短編集です。いや、このクオリティは、ドキュメンタリーと言っても過言ではないと思います。 強行犯捜査一係、通称「一班」の班長・朽木 そして「二班」の楠見 「三班」の村瀬 彼らが犯人を追い、事件に翻弄され、仲間とつばぜり合いを繰り返し、疑い、奮い立たせ、追い詰め、叱咤し、踏み潰そうとする露骨な主導権争い。しかし、登場人物はみな、事件を解決するという目的の中で動く点で志

          「だったらな、今度警察の人間が来たらこう言え。村瀬に全部喋った、話なら村瀬から聞いてくれ、ってな」

          丁寧に描かれているのは、団塊世代の家族のありようだと感じました

          ■感想文『フリーター、家を買う。』/著者・有川浩さん タイトルのみで本を選びました、ドラマ化されんだーって思いながら。読後の今は、タイトルがキャッチコピーみたいで、広告戦略的なイメージが本書と合わないような気もしています。 本書は、無気力なダメ・フリーター誠治が、家族の不和・病気をきっかけに更正して家を買う話。 ダメ・フリーターがどんな風に七転八倒して家を買うんだろう なんて、ポップな感じを私は期待してましたが、紆余曲折が活劇みたいに描かれているわけではないです。丁寧

          丁寧に描かれているのは、団塊世代の家族のありようだと感じました

          邦画 『誘拐』 を見てない人にオススメの一冊

          ■感想文『交渉人』/著者・五十嵐貴久さん 誘拐事件をきっかけに物語が二転三転、四転五転する話です。ただ、私は読み終わったときに、渡哲也さんや永瀬正敏さんが出演している映画『誘拐』を思い出しました。 本作は、それにつきます。 現実味は低いかなーとも思いますが、うまく作られた話ですね。犯人の包囲網脱出手段はGoodと思いますし。テンポが良く面白い本と思いますが邦画『誘拐』の内容に似過ぎている印象なので既視感があり、その映画のことが読書中にチラついてしまいました。なので、邦画

          諦めずに読みきって良かった!

          ■感想文『ダイナー』/平山夢明さん 終始、性描写や人が死ぬ場面が露骨です。読者を選ぶ本ではあると思います。出だしもラストも、主人公は絶望的な状況にいます。いるんですが、ネタバレになるので今回は詳しく書きませんが、読後感は悪くないんです。 読書の最中は眉間に皺が寄りっぱなしで、半分まで読み進めて疲れたため、気軽に読める内容の本を手に取りました。この本は精神的に余裕がないと読み進められない気がします。作者は、書いていて気持ちが悪くなったりは、しないのだろうか? そして手元に