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圧巻の主人公。天童荒太さんに脱帽!

■感想文『悼む人』/著者・天童荒太さん


『悼む人』は登場人物のキャラクターが素晴らしいです。主人公の青年の対比としての蒔野という人物が出てきますが、蒔野は序盤から私たちを物語へとグイグイ引き込みます。本書は、主人公を取り囲む周囲の人物の視点で物語が展開されていきます。母親の死や娘の出産など、いろいろな死生観が出てきます。特筆すべきは、主人公の死生観です。成熟していない青年の価値観は自分の経験則から形成されており、私個人は、その未熟さゆえに陥りそうな主人公の発想に、想像されたキャラクターとは思えないほど、非常に人間らしさを感じました。それだけに、主人公の言葉を本の中でもっと聞きたかったなと、読後は残念に思うほど。

生死について語り振舞う場面の多い作品ではありますが、私自身は重苦しさを感じずに読め、主人公・静人が次に何を言い出すか、と大変興味をそそられました。読み終わると、表紙の挿絵が物語の雰囲気を十分に表しているように思え、

それでこれか、はるほど!!!!!!

と納得。小説としての完成度は極めて高く、面白いかどうか、という視点でいうと万人向けではないかもしれません。ただし納得の直木賞受賞作と思います。

直木賞受賞作ではありますが、生粋のエンターテイメントではないと思います。唯物論者や物事を深く考えることが嫌いな読者には、心に響かない本かもしれません。でも、文句なしにオススメの一冊。


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