赤子のことを
家族のことをしようか
気を遣ったり遣われたり
世話を焼いたり焼かれたり
金の無心や身元引受け人までも
血縁であるというこの定めからは
幾ら足掻いたところで逃れられない
人間同士のことをしようか
他者の支配に悦びを覚えたり
略奪と殺戮の歴史を繰返したり
社会の形成や個人への帰属までも
哲学に誘われてしまうこの性からは
幾ら現実に塗れていても逃れられない
ならばもう止そうか
将来に希望を抱いたり
相手に期待することなど
生まれたての赤子のように
泣いて笑って全身で訴えようか
ことばに頼ると逆の意味ばかりが
伝わってしまうからどうも始末に悪い
男と女のことをしようか
互いに惹かれたり憎んだり
それが元で付いたり離れたり
厄介な家族計画や財産分与までも
物事を解する思考回路の齟齬からは
幾ら努力をしたところで逃れられない
赤子のように赤子のことを
ひたすらにしてみようか
ことばになど頼らず
ただ赤子のことを