海岸にて

海岸にポツンと岩がある
マイクロバスほどの岩だ
上がって寝そべり遙か上空に舞う
一羽のトンビを傍観すると
この世界の中心にいるような
それでいて森羅万象の
唯のひとつに過ぎないというような
不確かな心況の中にいた

目の覚めるような快晴
水平線が描く緩やかな曲線
微かに耳に届く凪の気配
感覚が研ぎ澄まされていく
思考だけが自我を持ち
やがて躰を離れるのだと知った

一瞬の出来事だった

遙か下界の自分を
見下ろしていた
トンビの思考と繋がったのだ
ほんの数秒間に起こった出来事
おそらく意味や価値を
知る必要はないのだろう

かつて命を手にした海岸で起こった
森羅万象の唯のひとつ





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