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M1ライフルの照門に関する考察:米軍主力小銃の流れとその立ち位置~改訂版~

Ⅰ. 緒言 WW2と朝鮮戦争における米軍の主力小銃であったM1(ガーランド)ライフルは、弾倉内の弾を撃ち切った際に聞こえるPING!と表される音で有名であることはご存知だろう。そしてM1ライフルの特徴はそのPING音だけではない。GUN誌等の実射レポートにおいてはその照準具(照星&照門)の利便性を褒める記事が幾つもあり、私自身もかなり気に入っている。GUN誌2009年8月号のTurk Takano氏の記事から照準具についての文を以下に引用する。  しかしM1ライフルの照準具

    • 銃の反動と運動量保存則ver.3

      ツイッターより移設 銃の反動に関してよく見る数式についての調査。 反動の評価軸の1つとして、銃の質量✕自由反動速度で表される運動量がある。 この運動量を求める式についてどんな内容なのか調べてみた。 まず、反動衝動(前述の運動量)は計測できるのか? 質量は秤があれば良いとして、発砲時の速度はどうなのだろうか。 色々な方法があるらしく、ハイスピードカメラで直接測定したり、ロックウェル硬度を使って運動量を測定したりと様々。 とにかく、結果として出したい反動衝動は計測可能らしい。

      • 銃の反動と運動量保存則についての考察ver.2

         今この記事を開いた方は反動に関する以下の記述を見たことがあるだろう。 ①弾が前進する反作用で銃は後方へ押される。 ②弾丸発射時、運動量保存則によって銃は後退する。 前回の記事で②については、燃焼ガス圧による力積が同じことにより銃と弾の運動量は同じであることを示した。しかし、①に関しては未だ不明なままだった。この「弾が前進する反作用」とは何なのだろう?  恐らく運動量保存則の観点から弾の運動量と同等の運動量で銃が後退することを指しているはず。ただ文字通りに「弾からの反作用

        • 銃の反動と運動量保存則について

          ツイッターより移設 #ゆにちゃんあのね 少し感動したので共有 「銃を発射した時、弾の運動量と反動で動く銃の運動量は運動量保存則により同じである」 これは銃の反動を説明する際に稀によく見る文章である。 ただ運動量保存則は外力がない場合でのみ成立する。 銃と弾頭の間で発生するガス圧は外力ではないのか? 運動量保存則の問題でよく解かされる物体同士の衝突ならば、作用反作用で物体間に働く力は同じである事は理解できる。 ただ燃焼ガスを間に挟む銃と弾ならどうであろう。 銃と弾は直接触れ

        M1ライフルの照門に関する考察:米軍主力小銃の流れとその立ち位置~改訂版~

          ピープサイトについての考察

          自分のツイートより移設 M1ライフルのピープサイト考察 まずはどんな照準器から。 種類:ピープサイト 特徴:弾着修整を容易に行える調整ノブ    1Clickで1MOA単位で修整可能。    歯車同士で噛み合っているのでかなりきっちり回せる。   コラム的に横風修整の簡易計算方法も載せました。 ピープサイトの照準像について。 銃の指向を出す為に照星に目のピントを合わせるのですが、その際に照門と標的はぼやけます。 ただしピープサイトは標的の輪郭のボヤけ具合を減らす効果もある

          ピープサイトについての考察

          M1ライフルの照門の考察

          自分のツイートより移設 M1ライフルの照準に関するメモ 照門のエレベーション・調整ノブは1click毎に1MOA、弾着点を修正できる話を聞いていたので確かめて見る事に。 結果としては、ざっくりならその通り。 ただ細かく見ていくと1click毎に修正量が変化します。 今回は照門の移動量について計算した エレベーション・ノブは1clickで6°回転します。 これはレシーバーにあるノブの台座が1周60個の山に別れている為です。 ノブを6°回すと照門はどれほど回転するか。 ノブ

          M1ライフルの照門の考察

          M1ライフルの照星についての考察

          自分のツイートより移設 M1ライフルの照星の考察 横風だったりで照門を左右に動かしライフルの姿勢を変える事で着弾点を調整する時があります。 細かい問題ですが、この左右ずらした時に照星の側面が見えてしまい、見かけの照星の中心がズレてしまう事が考えられます。 これをM1ライフルで考慮してるのか 照星の中心がずれると 問題:弾着点がその分ずれる(距離が遠いとズレ量も大きくなる) 実際のところ、M1ライフルの照星の形状は傾斜があり考慮してる様に見えます。 本当に考慮されてるのか、

          M1ライフルの照星についての考察

          兵器局の人から見たM1ライフル

          Ⅰ. Julian S. Hatcher氏  Hatcher氏をご存知だろうか。米陸軍の兵器局に所属した人物であり、あのストッピングパワーなる言葉を生み出した人物でもある。ぶっちゃけミリオタよりもアリエナイ理科の動画を見ている人なら聞いた事があるかもしれない。彼はM1903やM1ライフルを改良したりNRAのAmerican Riflemanという会誌に数多く寄稿したりと有名な技術者であり、ガーランド氏が参加した半自動小銃開発の関係者であり、"Book of the Gara

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          NRAから見たM1ライフル LAST

          Ⅰ. M1ライフルに対する社説の変化  American Riflemanの1941年4月号の社説にて、M1(ガーランド)に対する疑問の回答が得られ、現在のM1903スプリングフィールドと同じぐらい正確であるように見え、頑丈さや信頼性も同様に匹敵する様に見えると書かれた。  これは1940年11月から始まった海兵隊によるトライアルの結果からきた変化であり、ガーランドライフルはテストで提出されたセミオートマチックライフルの中でも最高である事を明確に示しているとし、海兵隊から許

          NRAから見たM1ライフル LAST

          NRAから見たM1ライフルvol.4

          Ⅰ. 初めに  今回は1940年10月号に寄せられた読者投稿を読んでみよう。  なお読者投稿は2件あり、2つともM1ライフルへの批判である。 Ⅱ. ガーランド批評  これを読み何らかのひらめきを得る事を願っています。  主は何かしなければいけない事を知っています。  私は最近、Garand氏の失敗作のコピーを持って射撃場で午後を過ごしました。そして25年も軍用銃を扱い、2年間の狙撃手、戦闘と、多くの将校と下士官を観察し訓練してきた経験から言うに、このライフルが2つの重要

          NRAから見たM1ライフルvol.4

          .276口径に対するマッカーサーの主張

           M1ガーランドのwikiや解説動画等でも、マッカーサーが.276口径を否定して.30口径を維持させたといった説明文をよく見かける。実は陸軍の兵器局の立場だったHatcher氏の著書「BOOK OF the GARAND」にて当時参謀総長だったマッカーサーの主張というか命令が紹介されている。  今回はその機械翻訳文を見てみよう。 ワシントン戦争省(※1)  歩兵委員会や兵器局から.276口径とガーランド氏のライフルを採用するという連絡が上層部に行き、各自書類にサインをして

          .276口径に対するマッカーサーの主張

          NRAから見たM1ライフルvol.3

          Ⅰ. 前回までのまとめ  キャンプペリーにおける射撃でM1ライフルの命中精度が低かった記事を初め、議論の嵐が巻き起こされた。武器局トップ及び参謀総長すらも渦中の人物と化し、事態は未来を照らそうと暗中模索の道を突き進む。 Ⅱ. M1(ガーランド セミオートマチック)ライフル  正直長いので箇条書きで要約して書く事とする。 ついにM1ライフルのサンプルを入手! 1940年1月までに約25,000本が製造され、現在は月産4,000本と言われているが、生産目標をまだかなり下

          NRAから見たM1ライフルvol.3

          NRAから見たM1ライフルvol.2

          Ⅰ. 前回のまとめ  American Riflemanの1939年9月号ではM1ライフルの命中精度が低いのではないかという疑問、およびジョンソンライフルの大活躍が述べられていた。  今回は1940年3月号のNRA理事会、4月号の社説を見てみよう。 Ⅱ. NRA理事会と重要な疑問への議論~1940/3~  要約するとNRA副会長であるReckord少将が軍のマークスマンシップへの関心低下を批判、晩餐会では武器局トップがM1ライフルの良さを訴えると共に精度に限界がある事も

          NRAから見たM1ライフルvol.2

          NRAから見たM1ライフルvol.1

          Ⅰ. 緒言  皆さんご存知M1ライフル、マッカーサー将軍が「我が軍に対する最も偉大な貢献の1つ」と称賛したライフルである。しかし、正式採用後に信頼性・命中精度諸々に疑いの目を向けられていた事はご存知だろうか。だから何だと言われれば、M1ライフルの購入予算が0になる危機が生じた程である。    この度、NRAから発行されているAmerican Riflemanという雑誌のアーカイブを発見した。それらに書かれた記事を何回かを通して読み、当時の様子を感じていきたい。 Ⅱ. 全体

          NRAから見たM1ライフルvol.1

          M1ライフルの照門に関する考察:米軍主力小銃の流れとその立ち位置

          Ⅰ.緒言   M1(ガーランド)ライフルはWW2と朝鮮戦争における米軍の主力小銃であった事は有名である。またFPSゲームにおいて弾倉内の弾を撃ち切った際に聞こえるPING!と表される音を気に入り、好きになった方もいるはず。 しかしM1ライフルの特徴はそのPING音だけではない。GUN誌等の実射レポートにおいてはその照準具(照星&照門)の利便性を褒める記事が幾つもあり、私自身もかなり気に入っている。  本noteではこの照門に注目し、どの様な経緯で設計されたのか探っていく。その

          M1ライフルの照門に関する考察:米軍主力小銃の流れとその立ち位置