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NRAから見たM1ライフルvol.3

Ⅰ. 前回までのまとめ

 キャンプペリーにおける射撃でM1ライフルの命中精度が低かった記事を初め、議論の嵐が巻き起こされた。武器局トップ及び参謀総長すらも渦中の人物と化し、事態は未来を照らそうと暗中模索の道を突き進む。

Ⅱ. M1(ガーランド セミオートマチック)ライフル

 正直長いので箇条書きで要約して書く事とする。

  • ついにM1ライフルのサンプルを入手!

  • 1940年1月までに約25,000本が製造され、現在は月産4,000本と言われているが、生産目標をまだかなり下回っている。戦争時に100万人の兵隊に配備する時、年間稼働日数250日に基づくと1日4,000本が必要となる。

  • この深刻な生産性以外にも特定の欠点がある。

  • フロントサイトベースに遊びがあり、修正される事を願う。

  • ボルトのカム面にバリが生じる傾向がある。

  • 長いオペロッドは兵士による乱雑な扱いに対する脆弱性を高める。

  • ボルトの端にあるロックラグは、WW1で操作上に問題を起こしたモデル1905ロスストレートプルライフルを思い起こさせる。ラグが潤滑されない限り、手動で動かす事が難しい場合があり、蹴って開けなければならない事があった。しかし、サンプルにおいては自動で開く事に失敗した事はない。

  • エクストラクターは上から見え、雨や風、砲弾や手りゅう弾の爆発による泥や砂の飛散に暴露される可能性がある。保護カバーを追加する再設計が必要である。

  • ハンドガードに下向きの開口部があり、ガスシリンダーから漏れたガスが外に逃げる事を可能にしている。この部分は煤で覆われ、またオペロッドに沿って吹き返し、射手の顔に吹き込む。時折あご、頬などの顔に煤が刺さるのを感じた。

M1は冷却が必要

  • 銃身が薄く換気が悪いライフルである。

  • M1903はM1弾薬を60発4分で発射すると、極寒の日でもハンドガードから油が沸騰し、素手で持てなくなる程熱くなる。M1を25~35分で40~60発という非常にゆっくりなペースで撃った時、オイルが小さな斑点として泡立ち始めた。

  • これはハンドガードが熱をこもらせる傾向がある事を示している。

  • M1は毎分40発の発射速度だという主張がされている為、冷却装置が必要となる。

  • そういえばM1903を用いたアーティスト・モールズ・バレル冷却装置のデモンストレーションを思い出す。4分間の射撃テストで冷却装置付きの銃口が140℃を記録した事に対し、無しの場合は212℃という温度計の限界値を振り切っていた。

  • バレル冷却装置はM1に対して実用的ではないが、今のハンドガードよりもマシになるはず。

照準について

  • M1の照準器はM1903のそれよりも照準に適している。リアサイトは完全に調整可能でM1917よりも優れている。

  • 照準半径はM1917よりも短い。

  • M1のルーズで機械的に貧弱なリアサイトにエレベーションと風量の調整ノブがあり、1MOA/clickで制御されている。

  • リアサイトは顔に向かって後方に傾斜する。

  • リアサイトを固定するロックがあるものの、200ヤードでの急射において固定を保持できなかった。

クリップ装填は簡単だった

  • 装填を3秒で終えたのを見た事があり、M1903のクリップに勝る可能性がある。

  • 弾薬が右か左にあるかは関係なく装填可能。

  • 途中装填も可能だが難しかった。

  • 1発ごとに弾薬を直接薬室に手で入れた場合、3~5分で10発ほど。

  • 給弾不良の際にボルトハンドルを押すが、小さくてやりづらかった。

  • M1、M2弾薬と市販弾薬、ハンドロードの弾を400発近く撃ち、2回だけボルト後退に失敗した。1つは最も軽い負荷(28,000ポンドの圧力)で、もう1つは加熱された薬室内で最も重い負荷(60,000ポンドの圧力)で発生した。

  • マニュアルによるとシリンダのカーボンの清掃が必要だった。

  • サンプルの命中精度は良いようで、100ヤード先で、M1903の4.21インチ、M1917の4.72インチに対してM1は3.50インチだった。

M1のリコイルはマイルド

  • 反動はM1903よりも柔らかい様に思えた。照準がし易い。

  • 220grのソフトポイントも撃ったが、M1は機能した。

600ヤード射撃

  • グルーピング

Internet Archive, https://archive.org/details/sim_american-rifleman_1940-05_88_5/mode/2up , P44 , 2023-01-03閲覧
  • M1903はF.A.1933のM1弾薬で27.73インチ、F.A.1939のM2弾薬で21インチであった。

軽い銃身

  • 明らかにバレルが加熱されるとゆがみ、ゼロも下方向に変わった。

  • 初めは上に着弾し、その後は下に着弾点が下がっていった。

何故ゼロインがずれる?

  • バレルのレシーバーから5インチの所がM1903より薄く、ハンドガードも当該部分で焦げていた。

  • 当該箇所が極端に加熱されてバレル先端が下がっていたのだ。

  • やはりバレルを重くするか、ハンドガードに穴を開くなり冷却装置を使用する必要がある。

300ヤード速射

  • 予想以上にゼロインがずれる為、完全なグルーピングが取れたのが4回だけだった。

結論

  • トータル692発撃って誤作動率は7.5%だった。

  • ヘッドスペースも調査したが非常に均一だった。

以上である。
NRAの実射評価で非常に強調されたのはゼロインのずれである。
それも銃身の薄さが原因とされた。

次回は読者投稿を読み、この最後に海兵隊のトライアルを見たいと思う。

Ⅲ. 参考文献

Internet Archive, https://archive.org/details/sim_american-rifleman_1940-05_88_5/mode/2up , P43 , 2023-01-03閲覧


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