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NRAから見たM1ライフル LAST

Ⅰ. M1ライフルに対する社説の変化

 American Riflemanの1941年4月号の社説にて、M1(ガーランド)に対する疑問の回答が得られ、現在のM1903スプリングフィールドと同じぐらい正確であるように見え、頑丈さや信頼性も同様に匹敵する様に見えると書かれた。
 これは1940年11月から始まった海兵隊によるトライアルの結果からきた変化であり、ガーランドライフルはテストで提出されたセミオートマチックライフルの中でも最高である事を明確に示しているとし、海兵隊から許可を得て5月号にテスト結果を掲載すると宣伝した。
 今回はこのテスト結果に関する記事を、箇条書きで見ていきたい。 

Ⅱ. 海兵隊ライフルテスト~1941年5月号~

  • M1(ガーランド)ライフルを海兵隊が受け入れた。この競争にはガーランドの他にスプリングフィールド、ジョンソン、ウィンチェスターが参加した。そして海兵隊が実施した37のテストにそれぞれがどのような結果となったかを、これから説明する。

  • 1940年11月12日のカルフォルニア州サンディエゴの海兵隊基地にてテストが始まり、3~6週間に渡って実施され、しかも徐々に射撃に不利な状況が深刻化する。

  • 射手には海兵隊のライフル射撃訓練コースでシャープシューター又はエキスパート級の資格を保有する、少なくとも半年間は海兵隊に従事した男性40人が任命された。中には競技射撃で有名な射手もいた。

  • 11月12日~16日の期間は、将校と下士官が共に銃の分解組立、手入れと掃除、機能と操作に熟練する為に使われた。

  • 使用するM1903とM1はランダムで選ばれた。

  • 提出されたライフルは、フィラデルフィアの海兵隊補給所の兵器部門によってオーバーホールされ、出荷状態と同様になった。

  • M1ライフルは1940年6月に製造された、”ガスポート”の物であった。

  • ジョンソンライフルはロータリーマガジン型で、テスト前に2丁はそれぞれ10,000発と15,000発を撃っていたが、それがどの様な影響を与えたかまでは分からない。

  • ウィンチェスターのライフルはこの1年間で開発され、海兵隊に提出された4丁には3つのバリエーションがあった。

  • それぞれのライフルの一般的な特徴は以下の通り

図1. 各ライフルの概要
  • 射撃テストは11月18日の朝に始まり、1丁当たり約12,000発の射撃と37のテストが丸4週間に渡って行われた。

  • テスト1では射手の慣らしを目的とした射撃が行われた。平均547発。

命中精度

  • 3つのテストが行われた。

  • 初めに以下のコースにて射撃しスコアを求めた。

図2. コース概要
  • 各コースにて射手が各ライフルを射撃できる様に交代した。

  • M1弾薬は短距離と中距離で、FAパルママッチ(1937年)は遠距離で使われた。

  • 平均スコアは以下の通り。

図3. 平均スコア
  • 次のテストはフィールド及び耐久テスト完了後のライフルの相対的な精度を求める為、各ライフルから約2,650発もの弾丸が発射された。

  • テスト時の使用弾薬はFAパルマ(1934年)、射距離は300と600ヤード。各射程で10発×4回が発射され、全ての射手が両方の射程で各ライフルを発射した。

  • 相対的な「性能指数(Figure of Merit)」は、平均垂直偏差と平均水平偏差を加算し、2で割る事で計算された。結果は以下の通り。

図4. 各偏差と性能指数(2650発)
  • 各ライフルから9,000発が発射されると、200ヤードにて上記と同様な相対精度を求めるテストが行われた。

図5. 各偏差と性能指数(9000発)
  • 結果として、スコアと2650発時点での相対精度のテストにおいてM1はジョンソンとウィンチェスターよりも精度が高い様に見えたが、委員会は「3丁の半自動小銃は全てにおいてM1903に匹敵する」とした。

機能とその他のテスト

  • このカテゴリにて14ものテストを実施。結果は次の通り。

  • テスト3:通常の分解組立で全ライフルのゼロインに顕著な影響無

  • テスト4:小銃未経験の新兵でも約5時間にて分解組立、清掃、機能の基本を指導可能(M1903はもう少し短時間)。

  • テスト5:全ライフルは既存の訓練規則に僅かな変更を加えるだけで訓練に適合可能。

  • テスト6:既知の射距離、固定位置での発射速度測定。

図6. 平均発射速度
  • テスト14:各ライフルはM1ball、M2ball、曳光弾、徹甲弾、空砲弾、パルママッチ等の全てのタイプの弾薬で機能した。

  • テスト15:ライフルをサポート無しでゆるく握った場合、ウィンチェスターは唯一正常に作動、M1は給弾不良多発、ジョンソンは排莢不良多発。(但し、突撃射撃に不向きという事はない。腰でしっかりと持てば良い)

  • テスト22:バラバラの弾薬の装填速度はジョンソン<ウィンチェスター<M1903<M1の順

  • テスト24:全ライフルは銃剣格闘可能。

  • テスト25:銃剣取付状態かつ正の仰角だと全ライフルは作動した。負の仰角だと全ライフルに給弾不良発生。正常度合いはM1<ウィンチェスター<ジョンソンの順。

  • テスト27:全ライフルにおいて銃剣取付でゼロインが変化した(M1903が最小)。

  • テスト30:ウィンチェスターの内2丁は排莢し易い様に設計された薬室を有するので、エクストラクタが外されても通常に機能した。残りの2丁は弾薬が潤滑されてない限り、エクストラクタの助け無しに排莢不可。

  • テスト31:M1903、M1、ジョンソンの部品は100%互換性が有った。ウィンチェスターは量産モデルではない為、除外。

  • テスト33:汚れ、腐食した弾薬を使用した際に多少の誤作動は有ったものの意外と少なく、許容範囲内であった。M1903に問題は発生しなかった。

  • テスト28:夜間に射撃した際に出る閃光は、ウィンチェスターが比較的大きかった事を除き、均一だった

野戦状況下におけるテスト

  • このカテゴリのテストは5つであり、3日間に渡って実施された。

  • 毎日の終わりに通常分解とクリーニングを行った。

  • 気象条件は良好。ほこりや舞い上がった砂は米国内で一般的に見られるもの。

  • テスト8:時速100マイルで接近中の航空機(射距離400ヤード)に対する発射速度は以下の通り(実施した4回の平均)。

図7. 対空射撃の発射速度
  • テスト9:平均距離325ヤードの範囲で、6つのタイプE、4つのタイプFのシルエットターゲットと5分間交戦する事で、有効発射速度を測定した。

図8. 有効発射速度
  • テスト10:移動目標(300ヤード先、毎分150ヤード[時速8km])への発射速度

図9. 移動目標への発射速度
  • テスト11:テスト10の目標を戦闘車両に変更したもの。

図10. 移動車両への発射速度
  • テスト21:このテストにより、戦闘中に銃身が加熱されても全ライフルで取り扱いが可能だと結論付けた。

深刻な状況下におけるテスト

  • 委員会が想定した野戦条件を再現。

  • 記者からすれば銃の故障を引き起こす目的で考案されたテストは無かった。

  • テスト12:酷いほこりに曝露された場合、セルフローダーとして機能しない可能性があるが、手動でなら操作可能。ロッキングカムとオペロッドにオイルを塗布すれば、この環境下でも恐らく全ライフルが作動する。

  • テスト13:真水のスプリンクラー下に14時間置き、2時間間隔で水を止めて豪雨を再現した。M1903に問題はないが、半自動ライフルは潤滑するまで平均20%の誤作動を起こした。

  • テスト16:泥にライフルを沈めた。M1903は操作できたが、操作を繰り返すとボルト操作が難しくなった。半自動小銃の中ではジョンソンが比較的簡単に手動で操作できた。しかしジョンソン、ウィンチェスターは部品を完全に分解して洗浄しないと機能しない。M1903とM1は通常分解でのクリーニングと洗浄、潤滑で機能した。

  • テスト17および17(a):強襲上陸時、ライフルが海水で濡れた砂の上に落とされ引き摺られた状況を再現した。その後にライフルを振ったり、息や手でできるだけ多くの砂を落とした。M1903は多少の困難が生じた。M1は2,3回目の射撃の後、手動で操作できなかった。ジョンソンは手動で操作可能だが、セルフローダーとして機能せず。ウィンチェスターはより多く作動したが、必要に応じて手動で操作する際に非常な困難が生じた。

  • テスト18および20:海水に10分間沈め17時間放置、5分間沈め42時間放置した。委員会は海水に曝露してもライフルが完全に機能しなくなる訳ではないが、満足に機能するにはオイルを多量に使う必要があると結論付けた。

  • テスト18:海水につけた後1晩中放置し、雨を再現する為に真水をかけてから発砲した。全ライフルがテストが続くに連れて操作が困難になった。豪雨にさらされると機能しなくなる可能性がある。

  • テスト32:シャワーで水を射手、ライフル、弾薬に掛けて安定して振る豪雨を再現した。雨が油を洗い流すが汚れ等の残留物を残す為、どのライフルでも正常に作動しなかった。

  • テスト24および24(a):ライフルが完全に分解後にガソリンで洗浄、潤滑無しで発砲された。M1903とガス圧利用方式のライフルは、正常に作動。ジョンソンは正常に作動しなかった。

耐久、疲労テスト

  • テスト34:(a)各ライフルの最低12,000発の射撃能力、(b)耐久性と保守性、(c)9,000発発射時の相対精度を調べた。ここでは1分間に15発の割合で150発射撃し、水とエアブローで冷却されるという手順を繰り返した。

図11. 誤作動数と平均部品故障回数

結論

  • 数分間の持続射撃では半自動ライフルの射手の疲労が少ない。

  • 今回提出されたライフルは2つか4つだけなので決定的ではないが、それぞれが様々な状況下で似た傾向を示した。

  • M1903はやはり信頼できるが、半自動ライフルは対航空機、車両目標に対して不可欠な火力となる印象。しかし多くの機能停止があった。

  • 機能停止と言っても上陸等の厳しい条件下で特定の割合のみ。大規模な半自動小銃の部隊ならば一部が故障してもボルトアクションの部隊よりも火力が優勢となる。

  • M1ライフルは他の半自動ライフルと比べ、機械的操作、耐久性、修理や交換の必要がないという点で信頼性が高かった。

  • 総合的に、M1903<M1<ジョンソン<ウィンチェスターの順で優れていた。

  • 現時点で、海兵隊はM1ライフルが入手可能な中で最も満足のいく半自動ライフルである事を、このテストで証明できたと感じている。

Ⅲ. 参考文献


 Internet Archive, The American Rifleman 1941-05: Vol 89 Iss 5 : Free Download, Borrow, and Streaming : Internet Archive , P5, 2023-01-04閲覧

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