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.276口径に対するマッカーサーの主張

 M1ガーランドのwikiや解説動画等でも、マッカーサーが.276口径を否定して.30口径を維持させたといった説明文をよく見かける。実は陸軍の兵器局の立場だったHatcher氏の著書「BOOK OF the GARAND」にて当時参謀総長だったマッカーサーの主張というか命令が紹介されている。
 今回はその機械翻訳文を見てみよう。

ワシントン戦争省(※1)

 歩兵委員会や兵器局から.276口径とガーランド氏のライフルを採用するという連絡が上層部に行き、各自書類にサインをして回ったのだろう。マッカーサー参謀総長が不同意したという情報は開発関係者には寝耳に水だったらしい。Hatcher氏によれば唖然とした関係者もいたとか。
 とにかく引用を見てみよう。

「マッカーサー元帥の不同意は私がメンバーであった理事会の会長に宛てた准将からの手紙に記されていた。当時その手紙は機密扱いになっていたが、長い時間を書けて取り除かれたので、この興味深く重要な文書を全文引用することにする。

 1932年2月25日
 セミオートマチックライフルについて
 宛先:1928年7月2日、ワシントン、陸軍省、特別命令第154号に基づき、半自動ショルダーライフルの将来の開発のために特定の口径を推薦するために任命された委員会の会長へ

  1. 半自動ショルダーライフルの将来の開発のための特定の口径を推奨するために任命された役員会の手続きに基づいて行動する際に、参謀総長は次のようにコメントしています。『このケースで推奨された行動を承認すると、アメリカ陸軍は間違いなく口径.276に承認することになるようだ。これは賢明でも望ましいことでもないと思われる。我々は、戦争での蓄積と現在の状況において、すでに大口径の30口径を確約している。この変更は、混乱、不確実性の要素を導入することになり、戦況下で拡大すると、半自動小銃の有益な効果を打ち消す以上になるであろう。この勧告は小口径の技術的完成度にやや影響を受けているように思われる。他の重要な特徴にはほとんど注意が払われていない。すべての試験で完全に満足できる30口径が製造できないことは、まだ明確に証明されていない。委員会の勧告は、低口径を正式に採用しているように見えますが、大口径の開発を継続するための抜け道が残されているのです。委員会の報告書は、より大きな口径が現在完成形になっている可能性さえ示している。たとえ口径.30半自動小銃が兵器省の望むような完全な形に開発できないとしても、たとえ不完全でもそのようなタイプを導入することはおそらく有利であろう。火力を大幅に向上させることができ、しかも、どのような明確な期間内であれ、疑いもなく約束された口径を維持することができるだろう』

  1. 関係機関は、以下を達成するために必要な措置を講じる。
    (省略by taka8492)(.276口径の開発中止の沙汰)

国務長官または陸軍省の命令により
ジョン・B・シューマン 陸軍副司令官」

以上である。
 実は1931年時点で.30-06を使うガーランド氏の試作銃が試験されていた。ただボルトが破断したりと完成形とは言えなかったが、開発は続いていた。これを知った上でマッカーサーは.276Pedersen弾の採用を却下したのだろう。しかしそもそも現場からの反発を考えて.30-06をしれっと試験していたのも興味深い。この時点できっぱりと.30-06を無理と判断していたのならば歴史が変わっていたのかも。
 ちなみにマッカーサーがどうしてこの命令を言えたのかについてだが、当時の兵器局は参謀本部の隷下であった。イメージとしては兵器の生産数計画など、参謀本部から出された計画に従って兵器局が各造兵廠に発注するような感じである。その為、小銃の採用には参謀総長のサインが必要だったのである。

 余談ではあるが、どうもマッカーサーは部下からの書類に素直にサインしない性格の様であったと聞いた事がある。もしも参謀総長がマッカーサー以外であれば.276口径になっていた可能性すらある。事実、マッカーサー後任の参謀総長は.30-30のM1カービンを採用した。

 マッカーサーの伝記を読むと参謀総長時代に意識していた事が述べられていた。次の戦争が必ず起こる、である。世界恐慌の煽りを受けた軍縮の要請の嵐、ドイツはきな臭いし、米軍もガタガタ。もしも次の戦争が来年に始まったら……
 貴方なら.276口径にする?.30口径にする?

参考文献

(※1)Julian S. Hatcher, [BOOK OF the GARAND], P110, Canton Street Press, 1948

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