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19章 モクレン館のマジックショー(4)

モクレン館のChristmas

モクレン館のクリスマスのイベントは、稲場職員他3人によるハンドベル演奏。曲は「ジングルベル」。入居者全員で、ゆっくりと、ハンドベルの速度に合わせて唄って盛り上がった。続いて坂下職員のマジック。
「実は、自宅で夫をお客に見立てて、2週間猛練習しました」
先触さきぶれがあり、そして、
「タネもしかけもあります」
と明言。
彼女は2種類のマジックを披露した。
1つ目は、紙コップに水を注ぎ、チャンチャンと上に下へと振ると紙コップは空。あの水はどこへ?
2つ目は、新聞紙を使ったマジック。サッカーの試合に勝利した日本の記事が大きく出ている。その新聞を大きく広げた。三笘薫選手の顔が大きく出ている。坂下職員はその新聞をビリビリ破いた。そして、それを、丸めてしまった。そして、ごそごそ。また、新聞を広げると、あらまあ不思議、元の新聞のまま。確かにビリビリと新聞は破かれたはず。試合の記事が載った新聞が大きく広げられた。拍手喝采である。
ヤマブキ黄子が、
「どうして、どうして」
とテーブルから身を乗り出して、不思議がった。坂下職員の練習の成果が出た。あまりにヤマブキ黄子が不思議がるのでイチョウは、お節介にも、ヒントを出した。
「サッカーの試合の記事が載っている新聞は、モクレン館の4階にも3階にも置いてあります」


大晦日の夜


イチョウは、NHKの紅白歌合戦のオープニングを見損ないあわててベッドに座って、テレビのチャンネルを合わせた。すでによく知らないグループの歌がスタートしていた。軽やかなダンス、よく考えられたデザインの衣装。しかし番組が進むに連れて、イチョウはグループの区別がつかなくなった。
(同じような歌、衣装、似たようなダンス)
イチョウは、すっかり飽きてしまった。

そこで、ミスターマリックのマジックの番組に切り替えた。ゲストは3人で、マジックのトリックを見破るという趣向である。3人のゲストがマリックに勝った。見ていたイチョウもトリックが推察出来た。イチョウは、有名なマジシャンの番組を、
「そんな簡単なトリックのはずがない」
と思いながら、久々にマジックの番組を楽しんだ。
夜中に目をさますと、テレビは『さだまさし』の番組になっていた。


年が明けた

昼食は、豪華なお節料理。イチョウは、お節を30分掛けて食べたが、黒豆、ブリ照り、里芋を残してしまうほど。3時のおやつは石川県の名物、(おいしい最中の)福梅。それは部屋に持ち帰りにさせてもらった。

とにかく、クリスマスとお正月とモクレン館で思い出に残る華やかなイベントが続いた。

→(小説)笈の花かご #56
19章 モクレン館のマジックショー(5) へ続く






(小説)笈の花かご #55 19章 モクレン館のマジックショー(4)
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2023年10月21日#1 連載開始
著:田嶋 静  Tajima Shizuka
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