(小説)笈の花かご #39
16章 モクレン館食堂の席替え(2)
4人テーブルの面々
女性4人のテーブルのメンバーは、週に2回開かれている介護予防体操の教室で、既に顔見知り。4人テーブルと言っても実際には2人掛けテーブルと、座る人の背丈に合わせ1段低く調整した2人掛けテーブルとを食堂の中央でくっつけただけの物。
初めに、1段低く調整したテーブルのお二方を紹介しましょう。
エニシ玉
まず、入居して1ヶ月過ぎたばかりのエニシ玉・92歳。品のある豊かな銀髪が色白の顔に似合う。シルバーカーを押しながらいつもゆっくり食堂に来る。趣味はスポーツ観戦。好奇心いっぱいで、ニュース等新しい情報に常に耳を傾け、楽しい話題を持ちかける才能の持ち主。若草物語のメグのような、4人テーブルのお姉さん的存在になっていく。
ナズナ織子
玉の向かい、イチョウの右隣に、ナズナ織子。ケアマネからシルバーカー使用を勧められている88歳の織子は、
「あんなもん、かっこ悪い」
といっさい聞く耳を持たない。彼女は、廊下の手すりを時々掴み上体を大きく揺らしながら、いつも自力で歩いて食堂へやって来る。そのためテーブルに着くのはいつも最後。時にはお膳が先に到着する事も。膝の痛みがあるが何とか自分の足でいつまでも歩きたい。皆とのおしゃべりが楽しみの1つ。面白い話が炸裂、愉快な話が得意。
水田登子 (イチョウ)
イチョウは左膝の手術後も右膝の痛みがあるため、いつも杖歩行でよっこらしょよっこらしょ食堂へやって来る。知らず識らずのうちに周りの人のために動いたり助けたりするのが好き。4人テーブルでは若草物語でいうところの家族を守るまさにジョーみたいな存在に。人知れずさりげなくサポートするのが得意。
ヤマブキ黄子
最後に、イチョウの前は、ヤマブキ黄子。彼女はモクレン館で1番若い80歳、入居歴は6年と最長。
車椅子を自分で華麗に操作しモクレン館のあちこち動き回る元気印。車椅子から立ち上がれるものの自力歩行はしない。特技は歌。美しい歌声を持つ。少し気分屋さんの所がある。どうやらお嬢様……それは後ほど。
4人4様、それぞれの移動手段でモクレン館の暮らしを続けている。そんな新しい希望に満ちた4人テーブルであった。
次は、紙で籠を折りながら、おしゃべりの花が咲くお話
→(小説)笈の花かご #40
16章 モクレン館食堂の席替え(3) へ続く
(小説)笈の花かご #39 16章 モクレン館食堂の席替え(2)
をお読みいただきましてありがとうございました。
2023年10月21日#1 連載開始
著:田嶋 静 Tajima Shizuka
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