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19章 モクレン館のマジックショー(1)

引っ越し業者の見積り

転居予定は、年明けの1月。正月明け早々と決まった。イチョウの部屋の引っ越しの見積もりを、娘・英子が依頼。年の瀬、カイキ引っ越しセンターの営業マンが、モクレン館のイチョウを訪ねて来た。イチョウの部屋にある物で、パソコン、遺骨、遺影はトラックに積めないと営業マンから言われ、見積額が提示された。
( 1室分にしては随分と高額ね)
自宅からモクレン館へ移動した額を思い重ね、イチョウはいささか不満。北陸の雪での困難さ、昨今のドライバーの不足、梱包物品の値上がりなどが影響していると説明された。イチョウは
(そんな物か)
とため息をつき納得するしかなかった。
しかし、英子に電話で報告するとと絶句。
「予想した金額よりも高いわ」
と他の業者に当たり相見積を取る事に。イチョウは心配して下見の立ち会いをしてくれたモクレン館の岩出ケアマネにもこの事を相談した。
「いくら何でも高いよ」
と彼も他の業者を探す事を勧めた。彼自身も4年前にカイキ引っ越しセンターで東京から石川県へと引っ越した経験があった。見積額は、当初、高額で、他の業者に当たると申し出ると、即座に半額近い額になった。
「営業マンは、書類を作成して、こまごま電卓を叩いているが、結局は大雑把な物ですよ」
と個人的な体験をイチョウに語った。
英子は、エコエコ引っ越しセンターに見積りを依頼した。2度手間になる事を避けるため、事前に、老人ホームの1室、1人分の荷物しかない事、パソコン、遺骨、遺影、がある事を先に伝えた。3日後に、エコエコ引っ越しセンターの営業マンがモクレン館にやって来た。すぐ、見積額が提示された。イチョウは、岩出ケアマネの情報を参考にして考えた。妥当な値段かと納得した。営業マンは、自信たっぷり、モクレン館の事務所に引っ越しの段取りを伝えて帰って行った。
「支払いを、荷物搬出時に現金でお願いしたい」
という条件が付いた。英子も納得し、これで転居日が決定した。
こうしてイチョウは、いよいよテーブルメイトに、東京転居の日が決まったと伝えた。
ヤマブキ黄子は、「あ、そう」と淡々。
エニシ玉は「そうですか」と淋しげ。
ナズナ織子は、「近いと察していました」
とそれぞれに、別れを受け容れた。



→(小説)笈の花かご #53
19章 モクレン館のマジックショー(2) へ続く






(小説)笈の花かご #52 19章 モクレン館のマジックショー(1)
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2023年10月21日#1 連載開始
著:田嶋 静  Tajima Shizuka
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