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19章 モクレン館のマジックショー(3)

さようなら、ザワザワ病院


年末の最終日、イチョウにとってもザワザワ病院の最後の受診日となった。
イチョウは、この日、浅澤医師、出張受付のカワヒラ事務職員、ヨシキタPT、トウダPT、濃紺PTにキチンとお別れの挨拶をした。

浅澤三郎医師の別れの言葉は、
「人生いたるところに青山ありですよ」
先生の年齢はもうすぐ60歳、ひとり娘がいると、別れに際して私的な会話を交わした。

ヨシキタPTには、最終日ではなく1週間前のリハビリの時、東京へ転居すると告げていた。その時
「オレは、受け容れ難い」
と返した。
27日の最後の施術では、今までになくイチョウの背中をさすった。そして、
「 I miss you…… 」
と呟いた。

トウダPT は、
「東京にザワザワ第2病院を作りましょう!」
と明るい雰囲気で返してくれた。
「イチョウさんのお気に入りのPTを呼ぶのはいかが」
「イチョウ財閥、考えましょう」
とイチョウは彼特有のジョークを受け止めた。

出張受付のヒラカワ職員は、
「自分の方が先に天国かもしれないので、雲の上で旗を振ってわかるように待っています」
明るいのかネガティブなのかわからない返答。もうすぐ65歳になる。ザワザワ病院に定年はない。髪は黒々、背筋はシャンとして、挙措動作は若々しい。
「イチョウと大きく書いたタオルを広げて、アンサンを探しますわ」
とイチョウも応えた。

濃紺PTは、リハビリフロアに居なかったが、ドアを出た所でイチョウとばったり出くわした。彼は、イチョウの最後の受診日である事をちゃんと知っていて、
「病院では、又会いましょう、という言葉はいけないので、お元気で!」と 
ニッコリ。たった1回、施術を受けただけのPTである。
(車椅子生活からの脱出のきっかけを見出してくださって、ありがとう)
さようなら、ザワザワ病院。


→(小説)笈の花かご #55
19章 モクレン館のマジックショー(4) へ続く






(小説)笈の花かご #54 19章 モクレン館のマジックショー(3)
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2023年10月21日#1 連載開始
著:田嶋 静  Tajima Shizuka
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