見沼夜来

詩を書きます。大学3年生。不定期更新。スキもコメントもフォローも大歓迎です。

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  • スケープ・ゴースト・タウン

    詩群『スケープ・ゴースト・タウン』と、その舞台のお知らせ。

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自己紹介

初めまして。見沼夜来(みぬまやらい)です。大学生をやっています。 小さいころから詩をよく書いていたのですが、発表の場もなく埋もれてしまっているものばかりでした。彼らには人の目に触れるところに出てみて欲しいと思い、電子の波にそっと流すことにしました。 私は、詩で「太陽の観測所」を作りたいと思っています。理想に対して能力がついてこないかもしれませんが、”ここにはちゃんと太陽があったんだな”って思えるような詩を書いていきます。 読んでいただければさいわいです。

    • 【小説】願いごとなんて

       この告白を受けたら、私は真の意味で普通の人間に成ってしまう。緊張した面持ちでこちらを見つめる目の前の男を見ながらそう思った。  「普通とは何ぞや。」脳に住まう古代人がそう問うた。普通とは他の大勢と同じ人生を辿ることなり、と答えた。古代人は「つまんなそ」と言った。  「そんなことないわ」と反論したのは未来人であった。「普通はいい事だわ、いい事だわ」と繰り返した。未来人の知性は現代人のそれに劣るのだと何かの本で読んだ。「酷いわ。そんなことないわ。」未来人はじたばたした。「だって

      • 【詩】詩

         は君のための言葉です テディベアの頭蓋骨を撫でながら 僕の部屋は水槽になる      って言おうとしたけど 秒速1,500mで音が進む世界では 君の時間には届かない 君と  たいよ 水の中ではさみしいよ スネルの窓枠の内側に 流れる雲と太陽が見えた 晴れて た 水が  い  は春だね 春だ。 悲しくはない 新しいワンピースが 魚の尾鰭にならなくても 吐いた息が歪な泡で 水底に溜まるばかりでも (窓枠の内側に、鳥) 過去を欲しがった僕が ここにいるのは当然で 君がい

        • 【詩】スケープ・ゴースト・ラストライト

          月が出ていました。 月下美人の代わりに 彼岸花がぽつぽつと咲いています。 僕は船に乗って 匂いのしない空気を 一生懸命吸ったり吐いたりしています。 船底にどんぐりを見つけて、 アクセサリーがないことに気づきました。 誰かにもらったペンダント。 手すさびに、 指先でどんぐりを転がします。 ふと、懐かしい匂いがしました。 太陽の匂いでした。 釣り人は、 岸に船をつけて釣りの準備を始めました。 僕はお礼を言って 久しぶりに、 シロツメクサの原っぱに足をおろしました。 ひんや

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        • スケープ・ゴースト・タウン
          11本

        記事

          【詩】スケープ・ゴースト・ダンス

          おいおい、どこへ行くんだい? 今日はスケープ・ゴースト・ダンス。 年に一度の祭りの日。 もちろん踊っていくだろう? おやおや、そんな顔するな。 祭りは楽しくやるもんだ。 この街に、 悲しいことなどないだろう? 全く、君は頑固だな。 僕らはスケープ・ゴーストだ。 もちろん、君も。 可哀想な奴らだよ。 ずっとここにいればいい。 誰もが君を愛してくれる。 もちろん、僕も。 さあ、踊ろう? 詩群『スケープ・ゴースト・タウン』の9篇目です。明日で最後です。 舞台『スケープ・ゴース

          【詩】スケープ・ゴースト・ダンス

          【詩】スケープ・ゴースト・フィッシング

          星空に釣り糸を垂らすと 人工衛星が釣れる。 そいつは大物。 たまに、使い古した宇宙探査機も釣れる。 ありゃダメだ。 味がしない。 お前さんは 無邪気に釣りを楽しんでいるようだが、 魚はどうするつもりだい? ……逃がすのか。 上手く逃げてくれるといいなァ 一度釣り上げられた人工衛星は 軌道から外れちまうんだ。 ひとりぼっちだよ。 俺たち以外には見つけられなくなっちまう。 釣りってのはそういう責任が伴うもんだよ。 お前さんも、 釣り上げられた魚だったのかい 俺は食うぜ? 人

          【詩】スケープ・ゴースト・フィッシング

          【詩】スケープ・ゴースト・リデューサー

          あーあ、ノイズが入ってる。 そろそろ掃除が必要か。 おや君、写真は好きかな? ここは街の新聞屋。 映りこんだゴーストを 箒ではたいて追い出す。 クレンザーをかけて、 たわしでごしごし擦る。 ほらできた。 ゴーストなんかどこにも居ない。 そうだろ? 写真は嘘でできている。 真実なんてここにはない。 可哀想に、信じてるんだね。 この夜は嘘でできている。 早く、この街を出た方が良いよ? 詩群『スケープ・ゴースト・タウン』の7篇目です。 舞台『スケープ・ゴースト・タウン』です

          【詩】スケープ・ゴースト・リデューサー

          【詩】スケープ・ゴースト・オーケストラ

          音 おと がなる が鳴る この 土地の 真下から 地上に 向けて わああああああああ 大地を揺らす 鼓膜をゆらす ふわふわ撫でる 打撃奏でる この街にいる 皆に きこえるように この音色が、 誰かの物語の主人公なのだから。 舞台『スケープ・ゴースト・タウン』ですが、諸般の事情により公演を見送ることになりました。 予約してくださっていた方、申し訳ございません。 詳細は以下のツイートをご覧ください。

          【詩】スケープ・ゴースト・オーケストラ

          【詩】スケープ・ゴースト・バス

          横向きの椅子に座っていました。 曇り空の窓と蛍光灯がぶつかり合っています。 眠っていたことに気づかなくて ふと目を開けると知らない誰かの白い手が 視線の先にありました。 (目的地がない者は手を挙げてくれ!) バス停に必ず名前がついているのが 疎ましくて仕方ない。 ――次はスケープ・ゴースト・タウン。 無機質なアナウンス。 情のない。 情報。 か。 生きてるかい? 生きてるさ。 これが行く末、夜の情け。 君を置いていったら、怒るだろうか? 舞台『スケープ・ゴースト

          【詩】スケープ・ゴースト・バス

          【詩】スケープ・ゴースト・ビルディング

          「なあ知ってるか? このビルお化けが出るんだぜ」 全く何を言い出すのか。 お化けなどいるはずもない。 いるのなら、化けて出るべき人が来ないのはおかしいだろう? 「なんだよ。だからこうして出てきてやったのに」 お前はそうだが違う。違うんだよ。 「僕に会いたくなかったか?」 会いたかったさ。だから、ここにいると余計に悲しいのだ。 窓を開けると埃が舞って、積年の愛憎が散り散りになる。光らない。月明かりでは足りないのだ。この場所を照らすには。手をかざす。あの日と同じように。届か

          【詩】スケープ・ゴースト・ビルディング

          【詩】スケープ・ゴースト・ライター

          この街の話が聞きたいと? どうして俺に聞くんだい? ……いいや、君は純朴だ。 大人の俺とはおおちがい。 その通り、俺は物書きさ。 新聞記者で、小説家。 俺の名前はどこにもない。 スケープ・ゴースト・ライターだ。 なんでも聞けよ。 なんでも知ってる。 この街が生まれた時のこと。 この街が消える時のこと。 君がここに来た時に、 君に何があったのか。 何せ俺は媒体だ。 あらゆるものを繋ぐ橋。 疎まれることもまあ、あるが、 便利で悪くはないだろ? それとも、 君も俺が嫌いかな?

          【詩】スケープ・ゴースト・ライター

          【詩】スケープ・ゴースト・タウン

          やあやあ、はじめましてかい? ここはスケープ・ゴースト・タウン。 ここに来たならもう大丈夫。 夜が僕らを守る街。 やあやあ、元気にやってるかい? あそこのパスタは美味いだろ。 寂しく思う暇などないさ。 君を昼から守る街。 さあさあ、遠慮しなさんな。 ここに座って飲めばいい。 ブラッドオレンジはお好きかな? ……いや、血は入っていないから! ここはどこ、なんて今更な。 スケープ・ゴースト・タウンだよ。 ここは心地が良いだろう。 君の恐怖はここには無い。  寂しさも。  悲

          【詩】スケープ・ゴースト・タウン

          【詩】スケープ・ゴースト・シップ

          舟に揺られていました。 あんまり得意ではないので ぼくはすぐに酔ってしまいます。 船頭に取り付けた行燈が 暗い光を放っていました。 ぱたりと音がして 足元を見ると、 いちまいの蛾の羽が見えました。 ああ、きっと もう片方の羽も、 あのふっくらとした身も、 ぼくが踏み潰してしまったのだ。 なんて、どきりとしたのですが、 実際は綺麗に死んでいて、 なんだか少し残念でした。 綺麗な死に方ってなんでしょう? 嫉妬したのです。 ぼくには出来ない事だった。 川岸にずらりと月下

          【詩】スケープ・ゴースト・シップ

          【舞台】スケープ・ゴースト・タウン

          この度、劇団うぃずの第二回公演にて脚本を書かせていただきました。 第53回埼玉文芸賞詩部門にて佳作をいただいた「詩群 スケープ・ゴースト・タウン」を元に物語として再構成したお話です。 役者さんによる詩の朗読パートもあります。 演劇が好きな方も詩が好きな方もお楽しみいただけると思います。 お時間ある方はぜひいらしてください。

          【舞台】スケープ・ゴースト・タウン

          【詩】はじまりのうた

          十両列車を見送るごとに 回る風車は遠ざかり わたしは立ち止まれないまま 往来をゆく夏を見る 木陰のあった十年前 翠の君の笑い声は 静かでもない公共広場で わたしの鼓動に音を与えた。 鳴らない鐘を何度鳴らし 帰らぬ時間を何度想い 今日まで人は生きてきたか。 この風向きは百年前 とうに決められていたのに。 今日の天気をわたしが知って それを君に伝えるまでに 既に消えた生活音が 鼓膜の中で聞こえている。 だから蝉は歌うのだ 過ぎゆく夏とその生を だから君をうたうのだ 一度しか

          【詩】はじまりのうた

          【詩】七夕

          海面鉄道を列車が走る。 星の満ちた海を渡る。 海 そう、海なのだ。 川より広く 涙より辛い海なのだ。 朽ちた橋の傍を渡る。 海面鉄道列車が走る。 他人行儀なカササギが 切符を拝見、と目を合わす。 僕は 僕はいつもの往復切符を カササギ車掌に放り投げ ベガ十二時発アルタイル行の 片道切符を星に翳した。 星 ああ、星なのだ。 君はずっと星なのだ。 握ることなく手を握り 触れることなく君に触れ 僕はずっとこうなのだ。 アルタイル発の列車が

          【詩】七夕