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【詩】スケープ・ゴースト・フィッシング

星空に釣り糸を垂らすと
人工衛星が釣れる。
そいつは大物。
たまに、使い古した宇宙探査機も釣れる。
ありゃダメだ。
味がしない。

お前さんは
無邪気に釣りを楽しんでいるようだが、
魚はどうするつもりだい?
……逃がすのか。
上手く逃げてくれるといいなァ

一度釣り上げられた人工衛星は
軌道から外れちまうんだ。
ひとりぼっちだよ。
俺たち以外には見つけられなくなっちまう。
釣りってのはそういう責任が伴うもんだよ。
お前さんも、
釣り上げられた魚だったのかい

俺は食うぜ? 人工衛星。
塩を振って、七輪で焼くと美味いんだ。
香ばしい、誰かの努力の味がする。
誰かの頑張りで食い繋いだ命なら、
俺らも頑張らねぇとな。

俺の船に乗れよ。
運がよけりゃ、
向こう岸に渡してやれるかも知れねえぜ。


詩群『スケープ・ゴースト・タウン』の8篇目です。
舞台『スケープ・ゴースト・タウン』ですが、諸般の事情により公演を見送ることになりました。
予約してくださっていた方、申し訳ございません。
詳細は以下のツイートをご覧ください。

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