見出し画像

【詩】スケープ・ゴースト・ラストライト

月が出ていました。
月下美人の代わりに
彼岸花がぽつぽつと咲いています。

僕は船に乗って
匂いのしない空気を
一生懸命吸ったり吐いたりしています。

船底にどんぐりを見つけて、
アクセサリーがないことに気づきました。
誰かにもらったペンダント。
手すさびに、
指先でどんぐりを転がします。

ふと、懐かしい匂いがしました。
太陽の匂いでした。

釣り人は、
岸に船をつけて釣りの準備を始めました。
僕はお礼を言って
久しぶりに、
シロツメクサの原っぱに足をおろしました。
ひんやりとした朝露と
くすぐったいような感触に
日の光が反射して
眩しくて嬉しかったのを
よく覚えています。


詩群『スケープ・ゴースト・タウン』の10篇目です。これでおしまいです。
読んでくださった方、ありがとうございました。
舞台『スケープ・ゴースト・タウン』ですが、諸般の事情により公演を見送ることになりました。
予約してくださっていた方、申し訳ございません。
詳細は以下のツイートをご覧ください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?