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自分の個性を探し求めて┃Nando Jewelryさん インタビュー


Nando Jewelry 春原 純也氏 

現在デザイナーズビレッジに入居しながらNando Jewelryというブランドでジュエリー製作をしている、春原 純也さんにインタビューさせていただきました。

1984年埼玉県坂戸市生まれ。東京造形大学・室内建築専攻卒業。卒業後は内装デザイナーとして様々な店舗のデザインを経験。退職後はデザイン事務所で働きながら日本宝飾クラフト学院を卒業し、民間企業にてジュエリー製作のノウハウを学んだ後独立。現在はデザイナーズビレッジに入居してNando Jewelryというブランドでジュエリー製作をしている。

春原、モブキャラ認定されたってよ

ー東京造形大学に入学されたのは、どのようなきっかけがあったのでしょうか?

中学生の時からの話になるのですが、私の周りの友人は何かに秀でている人が多かったんです。飛び抜けてではないですが、勉強が得意とかスポーツが得意みたいな、何かしら強みや個性がある。
そんな中、高校の時に私は成績表で「オール3」を取りました。本当に全て3。
THE モブキャラのような称号を叩きつけられた気がして、自分に絶望しました。

しかし、そんな中でも美術や特に図工には少し自信がありました。小学校の時にはよく賞を取ることもありましたし。まぁそれにも上には上がいましたけど。。

春原さんが小学生5年生の時に図工で作った作品

そんな時、兄が地元の美術大学の予備校に通い始めたんです。クリエイティブなことに興味があった私は、何かで周りのみんなに追いつきたいという気持ちもあり、私も予備校に通い始めました。
きっかけとしては微妙かもしれないですが、そのまま美術大学への道を進むこととなりました。

―モブキャラから「工房の人」に進化

専攻としてはデザイン学科室内建築専攻。家具・空間・建築のデザインについて学べる環境になりまして、その中でも私は特に家具とかの比較的小さいサイズのデザインのものが好きでした。
また、手を動かすのが好きだったので、在学中はずっと工房にいて椅子や机や照明やらを作っていたので、会ったことない人からも『工房の人』と勝手にあだ名を付けられていましたね。笑

このように黙々と作業をされていたのでしょう🛠

ー卒業後は内装会社のデザイナーを経験

家具など小さいデザインの方が得意ではあったんですが、大きいもののデザインをする経験を積みたくて、内装関連の会社へ入社しました。
そこでは店舗のデザイナーとして百貨店の婦人靴のブースをデザインしたりなど、空間デザインに近い分野を2年ほど経験しました。
その後、勤めていた会社がリーマンショックの影響をモロに受けたため別会社に転職。そこではスーパーマーケットの什器や映画館のカウンターの部分など、前の会社とは違うお客さんを相手にデザインの経験を積んでいきました。

内装会社では空間デザインをしていた

しかし、大学卒業後から4年近く働く中で、「今後はどうしていきたいんだろう?」と自分の中でずっとモヤモヤを抱えながら働いていました。
ついにはモヤモヤを溜め込みすぎて何か全てがイヤになってしまって、思い切って退職しました。
その後は一度全てをリセットするためにロードバイクと共に2ヵ月間沖縄を旅しました。
もういっそ仕事を見つけて沖縄で楽しく暮らそうぐらいな気持ちで。笑

ーいざ、沖縄へ

沖縄は普段味わえない解放的な空間でリフレッシュできました。旅をする中で同じような気持ちで沖縄に辿り着いた人たちと出会い、共に時間を過ごし充実した日々を過ごすことができていました。
中には「俺は沖縄に住み続ける!」なんて人もいましたし、みんなすごい楽しそうに生活をしていました。
しかし、楽しさこそ感じつつも私の中では「コレだ!」というものを見つけることができませんでした。

それでも、今後は自分の中で楽しいと思える仕事。自分の中で軸となるものを見つけ、それを生涯をかけて続けていきたいという想いを確認することができました。

ロードバイクで2ヶ月間沖縄で旅🚴
「仕事が軌道に乗ったら沖縄などに身を置いて製作するのもいいですよね」とのお話も。
沖縄で撮影したガジュマルの木🌲
国内だけでなくドイツを中心にオーストリアなど海外旅も🇩🇪

前々から自分の中でなんとなく人生設計がありまして、将来は大きいもののデザインから小さいもののデザインに移っていきたいと考えていました。

今までの仕事ではどちらかというと店舗の内装など大きいもののデザインを経験してきました。しかし、大きいデザインだと設計こそ自分ではできますが、実際に作るのは職人さん。そのため、「このデザインは重さに耐えられないから現実的じゃない」など打ち合わせを繰り返すうちに実際の仕上がりが自分の理想とは違うものになったりすることも。
そこに歯がゆさも感じており、設計から製作まで自分の商品に関わる純度を上げたいという想いもありました。

そのような中で、元々ジュエリーに興味があったこともあり、これからはジュエリーの製作をしてみようかなと。
試しに参加したジュエリーの製作体験も「これならできそう」と思い、製作の技術を身につけるため日本宝飾クラフト学院への入学を決めました。

日本宝飾クラフト学院時代の製作の様子

日本宝飾クラフト学院への入学後は取り憑かれたようににジュエリー製作をしていました。
もちろん生活費も稼がなければならないので、以前いた会社の上司が独立して立ち上げた事務所でアシスタントとして働きながらですが。
2年間通って卒業した後は技術をさらに伸ばしたくてアクセサリー会社に入社。
その後、思い切って独立し、twie tohaie (トワイエ トワイエ)というオリジナルブランドを立ち上げました。

個人事業主として挑戦

ービジネスの難しさを知る。

旅の時に自転車にハマったこともありまして、twie tohaie は「身に着ける自転車」をコンセプトに、自転車好きが普段の生活でも自転車を感じれるような、そういう楽しみ方をしてもらいたくて製作していました。

twie tohaie(トワイエ トワイエ)は春原さんの『とは言え(とはいえ)』という口癖からきている。
ちなみにインタビュー中も何回か「とは言え」と仰っていました。笑

マーケティングのマの字も考えていなかった当時の私は、技術に自分の個性や好きなことを組み合わせたオリジナリティ溢れるものを作れば世間からも評価されるだろうと。だから自分の好きなものをとことんやろうということで、突っ走っていました。
物を売るにはどうすればいいか考え、フリーマーケットやマルシェ関係のイベントなど、様々な催事に参加していましたね。

自転車をコンセプトにした可愛いアイテムがいっぱい!🚲
この自転車のミニチュアペンダント、動くだと…!?
実際に動かした動画はコチラをクリック👈
可愛らしい自転車を漕ぐ猫ちゃんから
台東区の雷門の提灯まで!
よく見ると「田」が車輪になってます🔍

しかし、ビジネスとしては上手くはいきませんでした。
今考えると自分の好きなことを追求する面が強すぎて、コンセプトも「自転車」という部分以外固まっておらず、誰に対して売るのかなど、マーケティングについてもふわふわした状態になっていました。

そのため、ビジネスともっと向き合う必要があると思い、台東デザイナーズビレッジが主催する「クリエイター起業塾」に一期生として参加しました。

そこではビジネス面というよりもメンタル面の学びが大きかったと思います。
今までやりたいことだけをやってきて、売上などの面からは目を背けて逃げてしまっていましたが、塾での受講を通して自分とビジネスに真剣に向き合いました。

―Nando Jewelry 誕生

自分とビジネスに向き合った結果、初心に戻ってジュエリーでやろうと決め、まずはリングから作り始めることにしました。
アルファベットを入れつつ日本語の意味を持たせ、あとはロゴにしたときの格好良さなども考え、「何度でも見て楽しんでもらえる様に」という思いから『Nando Jewelry(ナンド ジュエリー)』と名付けました。

2018年9月 展示会への出展とともに立ち上げ

素材は主に貴金属と天然石、アクリルやガラス等の素材を用いて製作しています。
また、『元建築系デザイナーが作る構造や立体感に注目した建築デザイン視点でジュエリーを製作しているブランド』と紹介していて、デザインは「構造と立体感」を重要視し、建築視点で製作しています。
宝石がどうやったら綺麗に見えるかを追求し、なるべく宝石をむき出しにして側面からも光が入るように設計しているため、上からも下からも光が入ることでより宝石がきらめいてくれます。

座を付けない特徴的な石留の指輪
宝石により多く光が入るよう設計されている
全てのジュエリーに飾る為の「桐箱入り台座」が付属されている
様々な置き方ができる
ジュエリーとして着けて楽しむだけでなく、
オブジェのように飾って置いておくことが可能

元建築系デザイナーということもあり、面白い家具とか街中のトガった建築とかはついつい見ちゃいますね。でもシンプルで特徴無い物も結構見るかな?何かアイデアを拾い出せるんじゃないかと思って。
私の商品は建築とシンプルな部分が混ざっている印象があるので、普段の生活で自分の中に取り込まれたものからデザインに反映されていると思います。

ービジネスの視点も大事に

ブランディングやマーケティングもなるだけ考えるようにしています。
例えばペルソナ(買ってくれる人物像)については、30~50代の女性で、美術館の中でも六本木方面に行きそうな人とか。あとはカフェで読書するのが好きとかデザインの本を読むような人、インテリアが好きな人などより明確化するようにしてますね。

春原さんの奥さまがターゲットの年代と近いこともあり、
奥さんに似合うかどうか、付けそうかどうかも考えるのだとか

「商品がコンセプトとニーズに沿っているか?」などビジネス面もしっかりと考えて突き進んだ結果、販売会にも呼ばれるようになるなど、徐々に実績も作れるようになってきて、今はこの仕事だけで生活ができるようになりました。

―春原さん流、新商品の作り方

私の場合はまずはざっくりとスケッチを描きますね。
条件を決めてから描き始めることもありますし、ふわっとした状態であまり考えずに手を走らせることもあります。
みなさんもここまではされるとは思うんですが、私はそのあと一度図面に起こします。
以前店舗などのデザイナーとして仕事をしていた経験があるからかもしれないです。

ラフスケッチのためざっくりと描かれていますが、春原さんの中では細部まで想像ができており、
話を聞くと細かいディティールまで説明してくれました✏️
時には本気モードで描くことも👨‍🎨
ラフスケッチの後はデザインソフトを使用し、ミリ単位まで調整する💻

あと私の商品の特性上、石留めもギリギリで攻めることが多いので、同じく製作経験のある妻にジュエリーの強度を確認してもらうこともあります。
私が時間をかけて作ったものを思いっきり引っ張って「取れない。大丈夫。」みたいな。まぁ引っこ抜けた時は、なんとも言えない気持ちになりますね。笑

台東デザイナーズビレッジについて

クリエイターにとても良い環境だと思います。
特にジュエリーとの相性が良い。御徒町が近いため買付に行きやすいですし、ジュエリーに関する型屋さんがあったりととても便利です。
施設内にクリエイターが複数いるのはもちろんですが、同業の友人も近くに多く、以前よりも交流できる数が増えました。情報交換ができるだけでなく、お互い切磋琢磨できることで励みにもなります。

ちなみに私は来年(2023年)の3月でここを卒業することになるのですが、
卒業後も台東区に事務所を持ちたいですね。

コロナ禍の取り組み

ーSNSの活用

正直現在も大きくコロナの影響を受けていますね。他のデザイナー・クリエイターさんたちも大変だと思います。
特にコロナが始まった頃はイベントができないし、外出できないし。私も百貨店でのイベントがやむを得ず中止となることもありました。
世間では少しづつ落ち着いてきた雰囲気が出ているとは思うんですが、今度は円安の影響でお客さんの財布の紐が固くなってしまっている印象です。

しかし、ただ立ち止まっていても何も変わらないので、やれることをやろうと思い、instagramに加えてTwitterを始めることにしました。
そんな簡単にいく訳もなく、開設当初は全然反応がありませんでしたね。しかし、試行錯誤しながら諦めずにとにかく続けてみました。

instagram では商品をオシャレに紹介していましたが、Twitterでは少しコミカルな内容にするなど自分の人間味が伝わるような内容を投稿。
徐々にですがフォロワーも3,000人近くまで増え、今ではinstagramよりもフォロワーさんの反応が良かったりもします。

instagramはおしゃれに!
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対してTwitterは個性的に!
(詳細はこちらをクリック)

フォロワーさんの方のアカウントを見ると宝石好きの方だったり、お化粧好きや建築好きだったりなど、どういう方が興味を持ってくれてるのかが分かりやすいのも面白い点の1つですね。

ー1人ブラック企業状態

あとは私のような会社に属していない人間は、何もしないとその分売上にも反映され生活に直結もしますし、不安にもなってきます。
そのため、何かしていないと落ち着かないので、仕事を詰め込みあえて忙しくして「1人ブラック企業状態」になることも多々あります。
結構そういう人多いんじゃないかな?苦笑

今後について

コロナの影響もまだ残りますが、イベントへの出店もできるようになってきたので、百貨店での催事にもっと参加して実績を上げていきたいですね。
あとはオンラインショップでの販売にもっと力をいれること。
そして、これから12月のクリスマスイベントに向けても準備する必要があるので、しばらくは1人ブラック企業状態が続きます。

あと最近は趣味の自転車で全然遠くに行けてないので、落ち着いたら自転車でどこか旅をしたいですね。
場所は尾道あたりとかですかね。
爽快に駆け抜けるというよりは、ゆっくりまったりと景色を見ながら自分の好きなペースで走りたいです。

編集後記

春原さん、インタビューにご協力いただきありがとうございました。

自分の個性に苦い経験を味わった春原さんだからこそ
個性を詰め込んだtwie tohaieを始め、
その後、Nando Jewelryにて宝石の個性を最大限に活かすデザインに辿り着いたのかもしれないと感じました。

始まりは高校生の時の苦い経験からですが、
その後色々な会社で経験を積み、紆余曲折ありながらもデザイナー・クリエイターとしての道を進まれています。

沖縄は今の所安住の地にはなりませんでしたが、現在は自分の進み道を見つけ、一歩一歩着実に歩まれています。
舗装されていない「1人ブラック企業」の道も歩まねばならないこともまだあるとは思いますが、春原さんであれば、その先でホワイトでこうありたい自分になることができると信じています。

この記事は台東区産業振興事業団 商工相談担当 額田が担当いたしました。

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店舗情報について

■Nando Jewelry
住所:東京都台東区小島2−9−10 台東デザイナーズビレッジ 104号室
TEL:090-2429-2711
🚩ホームページ&ECサイト:https://www.nandojewelry.com
🚩Twitter:https://twitter.com/NandoJewelry
🚩Instagram:https://www.instagram.com/nandojewelry/

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