マガジンのカバー画像

あじあのおんがく

172
アジアの音楽に関する記事を集めています
運営しているクリエイター

記事一覧

台湾のファッション雑誌がすごい

台湾のアーティストたちをフォローしていると、彼らがファッション業界でも大いに活躍していることがすぐにわかる。ブランドのPRイベントやエディトリアルのフォトシュートにアーティストが登場するのは日本でもよくあることだが、いわゆるアイドル的なポップスターでけではなく、インディー色の強いR&Bアーティストたちが大々的に起用されているのが特徴的だ。 また、VOGUE Taiwanの表紙は毎回英語圏のファッション界隈Twitterで話題になるほど、オリジナリティとクオリティが高いことで

[2022.10]【新連載!】境界線上の蟻(アリ)~Seeking The New Frontiers~

文●吉本秀純 Hidesumi Yoshimoto  台湾や韓国といった周辺国と比べると、新しい動きや注目すべきバンドの情報などもやや掴みづらいところがあった中国のロック・シーン。かつては中国におけるロックの先駆的存在であるツイ・ジェン(崔健)が日本でもメジャー・レーベルから作品リリースされて話題となったり、2000年代に入ってからも〝中国のソニック・ユース〟とも称されるカーシック・カーズの初期の名曲「中南海」が世界的に広く聴かれたことでインディ・ロック・シーンの隆盛を伝え

再生

生祥樂隊 Sheng Xiang & Band  〈佇夜之前〉Before the Night (Reprise) (Official Music Video)

台湾で一緒に演奏している、生祥樂隊(センシャンバンド)の新しいアルバムから、一曲ビデオクリップ完成しました。「佇夜之前」(Before the Night)という曲です。

ヘヴィ・メタルはネパールを救う: Metal For Nepal の奮闘

50秒。2015年にネパールで起きた地震はわずか50秒で壊滅的な被害を引き起こしました。その運命的な50秒は、首都カトマンズとその周辺で9000人の死者と2万人以上の負傷者を出し、60万もの建造物を破壊することにつながったのです。エベレスト山では雪崩まで発生し、復興費用は90億ドルとも言われています。この規模の地震は世界中どの場所で発生しても壊滅的ですが、ネパールは世界でも最も貧しい国の一つ。ゆえに、被害と状況はさらに悪化していきました。国連は、この地震のために280万人のネ

[ためし読み]『地球の音楽』②

『地球の音楽』(2022年4月発行)にエッセイを寄せた執筆者が登壇するオンライン講座が、東京外国語大学オープンアカデミーで2022年8月から9月かけて、連日3日×3セット(全9回)、開催されました。 この講座に登壇した執筆者のエッセイの冒頭部分を、講座開催順に公開します。 山田洋平・髙橋梢「モンゴル 現代に甦る草原の調べ」 青山亨「インドネシア 世界につながったガムランの響き」 佐々木あや乃「イラン 自由を希求する音楽」 Mongolia モンゴル 現代に甦る草原

フィリピン音楽と僕 1 - まずは馴れ初めから

70年代にヒットしたフレディ・アギラのアナク(息子)や、80年代の女性シンガー マリーンの一連のヒット曲、日本のディスコに出演していたフィリピンバンドの演奏を別にすれば、僕とフィリピンの音楽との出会いは2000年ごろに始まった。 世の中の状況が激変する中、僕の身の回りもそれに流されるように大きく変化しているので、少しここまでの経緯を振り返ってみようと思い立ったので、ここに書き連ねてみようと思った次第。 フィリピンの音楽どころかフィリピン自体に全く興味なし 東南アジアの島国

「2021年中国ラップ発展白書」から読み解く2022年〜2023年の動向

艾媒咨询から2021年の中国ラップ発展白書なるものが発表されていました。フルレポートは32Pもあるので、その中から一部をご紹介したいと思います。<元記事リンクは一番下に> ※カバー写真は2018年のEDCのもの。ラップじゃなくてすいません。 1、ラップの普及度 2021年はさまざまなRAP番組が放送されました。少年说唱企划や黑怕女孩などの番組が放送され注目を集めていましたし、ネット上でも話題にたくさん登っていました。以前「中国ラップはマンネリ化して踊り場に差し掛かってい

これだけは聴いとけ!中国女性ラッパー3選!

男性社会であるラップの世界。日米を見渡しても圧倒的に男性ラッパーが多いのですが、中国も例外ではありません。そんな中、中国には女性だけが出演するラップ番組があったり、女性ラッパーが活動しやすい土壌があるような気がしてまして、実際に日本よりも女性ラッパー比率が多いかなと感じます。 そんな中でもとりわけ輝いている中国女性ラッパーを独断と偏見でご紹介します。 中国にもいろいろなタイプのラッパーがいまして、有名番組に出演して実力が大してないのに一気にギャラが上がったラッパーとか。ス

獅子舞ユニット結成!都市の余白を探す、獅子舞生息可能性の視点とは?

2022年1月に、秋田発の3人組の獅子舞ユニット「獅子の歯ブラシ」を結成しました! 私達は地域に根付く伝統的な獅子舞とは異なり、ゲリラ的に様々な都市に出没し、厄を祓って舞い歩きます。 これは獅子舞が生息(存在)していない土地にあえて赴くことで、都市の空間的な余白や人の寛容性など、獅子舞が生息しうるか?という視点によって土地の暮らしを可視化する取り組みです。この取り組みのことを「獅子舞生息可能性都市」と呼んでいます。 訪れた土地で獅子舞を手作りして舞い歩き、その土地の舞いや

インドのメタルバンド、Bloodywoodがヤバい。

皆様、ごきげんよう。メタラー歴はなんだかんだで10年以上の弾青娥です。 今回は衝動に任せるがままに、文章を書いて参ります。 今年のフジロックフェスティバル(7月29日~31日)にBloodywoodというニューデリー出身のメタルバンドが来日するとのことで、外国メタルバンドにとっての「鎖国」が破られることになります。 私よりはるかにメタルに詳しい知り合いからの情報で、インドのバンドと知り、大変失礼ながら「もしかしてB級サウンドのメタルバンドじゃない?」との疑念をちょっと抱

俺が独断と偏見で選ぶ2019年リリースのカザフスタンポップス10選

あけましておめでとうございます。 突然ですが、わたくしカザフスタンの現行ポップスを数年に渡って掘っておりまして、たまにDJする際にはそこの辺りの楽曲を中心に流すことが多かったりするのですが。 せっかくnoteも始めたことですし、新年ですので去年掘ってて個人的に良かったなーっていう曲を紹介しようと思います。 Әсет Есжан & Ayree - Жүрек іздейді ABU TV Song Festival (Eurovision Song Contestのアジア

ボーダーレスなベトナムのギタリスト: グエン・レ (Nguyên Lê)

先週、マダガスカルの音楽への愛を記事にした。そこで思いの30%も書くことはできなかったが、ヴァリハという竹筒のまわりに弦をはった箏のような楽器とその魅力に触れた。 この中で次のように書いた。 実は、インドネシアにヴァリハとよく似た楽器がある。ササンドゥと呼ばれるティモール島にある楽器で、ヴァリハと異なる点としては、竹筒の同様の本体のまわりに椰子の葉でできた音響反射板を持つことだ。少しネットで検索してみたら次のサイトが見つかった。ティモール島まで製作者を訪ねて聴き取り調査と

コーチェラと宇多田ヒカルと88risingと「Asian Pops」の時代の突端

3年ぶりのコーチェラ・フェスティバル。YouTubeで観てました。特にビリー・アイリッシュがヘッドライナーをつとめた2日目は、とても感慨深いものがあった。いろんな意味で時代の転換点が見てとれた。 驚いたのは直前で宇多田ヒカルの出演が決まったこと。しかもメインステージの「88rising's HEAD IN THE CLOUDS FOREVER」への出演。88risingのショーン・ミヤシロから誘われたということらしい。 88risingといえばアジアのポップカルチャーをグ

#009. 突如としてインドに現れたヘヴィメタルの化け物、BLOODYWOOD。

はじめに日本列島にはいくつの島があるのか、ご存知だろうか。 政府の公式発表では、北海道、本州、四国、九州、沖縄本島を含め、その数、なんと6,852島である。 領土は先人の努力の結晶とはいえ、この数は半端じゃない。 ちなみに、本土を除いた6,847島については、全て「離島」としてカテゴリされている。 その中でも、人が住んでいる有人島はたったの416島。 それ以外の6,432島は無人島と呼ばれている。 無人島。 ああ、無人島よ。 これほどロマンを感じさせる日本語が他にあった