東京外国語大学出版会|TUFS PRESS

2008年設立。国境を越えた言語と文化のリアリティに迫ること、言語教育の教材とスキルを…

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2008年設立。国境を越えた言語と文化のリアリティに迫ること、言語教育の教材とスキルを提供すること、空間と歴史の両面からアプローチした世界の政治・経済・文化の理解と分析のための道具を整えることをめざしています。https://wp.tufs.ac.jp/tufspress/

最近の記事

[ためし読み]『ウクライナの装飾文様』「はじめに」

刺繍が物語る地域と歴史 帝国の画家が描きとめた故郷の花文様のアルバム 1902年にプラハで、のちにハルキウとサンクトペテルブルクで再刊された、古い刺繍の文様のスケッチ40点をまとめたアルバムです。 これを描いたミコラ・サモーキシュ(1860-1944)は、故郷・ウクライナの文様を写し取る一方、ロマノフ朝の御用画家でもありました。 サモーキシュの生涯を繙き、ナショナリズムが芽生えていった時代について考える解説を付けて、このアルバムを複製しました。 本書から「はじめに」と

    • [ためし読み]『ガーナ流 家族のつくり方 世話する・される者たちの生活誌』「なんでふたをあけないの?」

      著者は東京外国語大学の卒業生で、本書は2020年度に提出された卒業制作を書籍化したものです。 留学先のガーナで、埼玉県のフィールドで、著者は“理想の家族像”を揺さぶられ続けました。その時々の思いや、ガーナの風習を、瑞々しいタッチで綴っています。 現地らしい調理の場面から、フィールドワークをする思いを語った「なんでふたをあけないの?」を公開します。 ◇   ◇   ◇ なんでふたをあけないの?「ジョロフライス(ピリ辛トマトの炊き込みごはん)って難しいのよ。間違えるとすぐ

      • [ためし読み]『それぞれの戦い エミー・バル=ヘニングス、クレア・ゴル、エルゼ・リューテル』の冒頭と「訳者解説」

        一九二〇年代、ドイツ語圏で活動した三人の女性アヴァンギャルド芸術家 二十世紀初頭に始まった女性解放の動きに呼応するかのように、女性の伝統的生活領域を踏み越えていった三人の女性作家たち。――それぞれの戦いの軌跡。 彼女たちは常に旅の途上にあり、自分自身の体験を語るための言葉を探し続けた。現代ドイツの女性作家ラインスベルクが、男性が書いた「文学史」への批判を込めて、とぎれとぎれの、錯綜する女性たちの声をたどり、彼女たちの痛みと貧しさ、孤独、そしてすべてを越えて生きのびようとす

        • [ためし読み]『ここにあることの輝き パウラ・M・ベッカーの生涯』の冒頭と「訳者解説」

          メディシス賞受賞作家マリー・ダリュセックによる渾身の「伝記」=オートフィクション 激しい生命の炎を燃焼し尽くした、夭折の女性画家の生涯を、現代フランス文学を代表する作家ダリュセックが、研ぎ澄まされた文体で描く。男性のまなざしの外にある女性の姿が、そこに浮かび上がる――。 ドイツ近代絵画史において独特の「輝き」を放つパウラ・M・ベッカーは、歴史上初めて、裸体の自画像を描いた女性画家としても知られ、七百点を超えるポートレート、風景画、静物画などを遺した。長く美術の歴史において

        [ためし読み]『ウクライナの装飾文様』「はじめに」

          [ためし読み]『東京外国語大学150年のあゆみ』「はじめに」

          東京外国語大学は2023年、建学から150年を迎えました。 言語を礎に、世界各地の政治、経済、文化など多岐にわたる分野の教育・研究機関として紡がれてきたその歴史は、つねに日本を取り巻く国際情勢の変化とともにありました。 東京外国語大学文書館が保管する史資料や聞き取り調査から記述される本書から、「はじめに」を公開します。 ◇   ◇   ◇ はじめに 一八七三(明治六)年、東京外国語学校が建学された。本書は、この建学の年から起算して一五〇年目に当たることを記念し、『東京外

          [ためし読み]『東京外国語大学150年のあゆみ』「はじめに」

          [ためし読み]『世界の中のラテンアメリカ政治』「この本について」「第1章」より

          植民地、独立、国家形成、ポピュリズム、軍事政権、米国の介入、新自由主義、左傾化、民主制の後退、専制の台頭—— ラテンアメリカ諸国は非常に類似した経験を共有しており、しかし同時に、これまで各国が示してきた政治的特徴は極めて多様である。 複雑に絡み合う国際社会との関係、歴史の変遷を丁寧に読み解き、先植民地期から現代まで日本や欧米諸国などと対比しつつ、ラテンアメリカ政治史の全体像を俯瞰する、新しい概説書。 本書から、著者による「この本について」の一部と、「第1章 ラテンアメリカ

          [ためし読み]『世界の中のラテンアメリカ政治』「この本について」「第1章」より

          [ためし読み]『「テロとの戦い」との闘い あるいはイスラーム過激派の変貌』「はじめに」

          恣意的に名指された「テロリスト」の実像 〈9・11〉以降、米国をはじめとする国際社会が推し進めてきた「テロとの戦い」において、主要な標的として存在し続けるイスラーム過激派。その思考・行動様式のあり方は、絶えず変貌を遂げている。 長年にわたる網羅的な情報収集と定性的な分析、現地主義に徹した研究手法とリテラシーを駆使して、変容の実態に迫る。 本書から、著者による「はじめに」を公開します。 ◇   ◇   ◇ はじめに 二〇〇一年にアメリカのジョージ・W・ブッシュ大統領(

          [ためし読み]『「テロとの戦い」との闘い あるいはイスラーム過激派の変貌』「はじめに」

          [ためし読み]『朝鮮人シベリア抑留 私は日本軍・人民軍・国軍だった』「訳者あとがき」より

          1945年、シベリア。 「日本軍」として捕らえられ、抑留された朝鮮人青年たちは―― 旧「日本軍」兵士としてソ連軍に武装解除され、シベリアに抑留されたなかには、朝鮮出身者も含まれていました。彼らが抑留されている間に、朝鮮半島は南北に分断されました。南側出身の人々は、命からがら38度線を越えて故郷へと帰りました。 『朝鮮人シベリア抑留――私は日本軍・人民軍・国軍だった』は、韓国でもその存在をあまり知られることがなかった朝鮮人シベリア抑留者たちのインタビューなどから、東アジ

          [ためし読み]『朝鮮人シベリア抑留 私は日本軍・人民軍・国軍だった』「訳者あとがき」より

          [ためし読み]『マイノリティとして生きる アメリカのムスリムとアイデンティティ』

          9.11から20年間、ムスリムたちの素顔――。 「9.11」という悲劇的な事件の直後から、アメリカに暮らすムスリム(イスラーム教徒)に対する差別的な行為が急激に増加した。 アメリカ人ムスリムに焦点を当て、日常を捉え続けてきた、記録写真家リック・ロカモラによる日本初の写真集。アメリカのムスリムとアイデンティティをテーマとして論じたエッセイや解説を収録。 本書から、監修・編著者による「はじめに」の一部と、写真家による「刊行によせて」からメッセージの抜粋を公開します。 はじ

          [ためし読み]『マイノリティとして生きる アメリカのムスリムとアイデンティティ』

          [ためし読み]『新しい意識』

          ヘンリー・ミラー、カフカ、クレマン・ロセ、ジッド、フォークナー、フロム、鈴木大拙、サルトル、ハイデガー、ユグナン、ヘミングウェイ、カザンザキス、トマス・ウルフ、ニーチェ、チャップリン、モーム、サローヤン、イヴォ・アンドリッチ、アポリネール、禅……。 近代西欧の文学・思想の批評を通じて、自身の内なる〈生〉の炎を燃え上がらせる若き詩人思想家ファム・コン・ティエン(1941-2011)の苦悶と覚醒の記録。『新しい意識』は、ベトナム戦争下の1964年に刊行され、ベトナムの若者たちの

          [ためし読み]『新しい意識』

          [ためし読み]『ハバ犬を育てる話』

          現代チベットを舞台に、そこに生きる人々の生活を、ユーモアを交えながらアイロニックに、そして真摯な愛情をこめて描く。実験的な手法でチベット文学に新風を巻き起こした、チベット現代文学を代表する作家・タクブンジャが贈る短篇・中篇あわせて9作を収録した『ハバ犬を育てる話』。 出版社4社合同で2022年7月に始まるチベット文学フェア「チベット文学のいまを知る」に、東京外国語大学出版会は『ハバ犬を育てる話』でエントリーしています。 本書から、表題作「ハバ犬を育てる話」の冒頭と、訳者解

          [ためし読み]『ハバ犬を育てる話』

          [ためし読み]『国際日本研究への誘い 日本をたどりなおす29の方法』

          「日本人の宗教観」「日本国憲法」「3.11後の暮らし」など、海外でも関心の高い主題を解説する本書は、『日本をたどりなおす29の方法――国際日本研究入門』の姉妹編です。 本書から3テーマの冒頭箇所を公開します。 有澤知乃「カーティス・パターソン——筝曲家インタビュー」 友常勉「日本社会と天皇」 浅川雅己/友常勉「戦後日本の経済と経営」 カーティス・パターソン――箏曲家インタビュー有澤知乃  日本の伝統楽器というと、まず箏(こと)を挙げる人が多いのではないだろうか。正

          [ためし読み]『国際日本研究への誘い 日本をたどりなおす29の方法』

          [ためし読み]『地球の音楽』③

          『地球の音楽』(2022年4月発行)にエッセイを寄せた執筆者が登壇するオンライン講座が、東京外国語大学オープンアカデミーで2022年8月から9月かけて、連日3日×3セット(全9回)、開催されました。 この講座に登壇した執筆者のエッセイの冒頭部分を、講座開催順に公開します。 川上茂信「スペイン フラメンコは変化し続ける」 松平勇二・中川裕「ボツワナ カラハリ狩猟採集民グイ人の歌」 土佐桂子「ミャンマー 幾重にも織り込まれた歴史」 Spain スペイン フラメンコは変

          [ためし読み]『地球の音楽』③

          [ためし読み]『地球の音楽』②

          『地球の音楽』(2022年4月発行)にエッセイを寄せた執筆者が登壇するオンライン講座が、東京外国語大学オープンアカデミーで2022年8月から9月かけて、連日3日×3セット(全9回)、開催されました。 この講座に登壇した執筆者のエッセイの冒頭部分を、講座開催順に公開します。 山田洋平・髙橋梢「モンゴル 現代に甦る草原の調べ」 青山亨「インドネシア 世界につながったガムランの響き」 佐々木あや乃「イラン 自由を希求する音楽」 Mongolia モンゴル 現代に甦る草原

          [ためし読み]『地球の音楽』②

          [ためし読み]『地球の音楽』①

          『地球の音楽』(2022年4月発行)にエッセイを寄せた執筆者が登壇するオンライン講座が、東京外国語大学オープンアカデミーで2022年8月から9月かけて、連日3日×3セット(全9回)、開催されました。 この講座に登壇した執筆者のエッセイの冒頭部分を、講座開催順に公開します。 山口裕之・西岡あかね「ドイツ 「ドイツ音楽」の呪縛?」 加藤雄二「アメリカ合衆国〈ジャズ編〉 「ジャズ」の現在――映像資料と文献を通して」 武田千香「ブラジル “ブラジル音楽”の黎明――ヨーロッパと

          [ためし読み]『地球の音楽』①

          [ためし読み]『数字はつくられた 統計史から読む日本の近代』②「第一章 はじめに」

          近代西欧で生み出された統計制度は、幕末維新期に日本に移入され、「場」の論理と折り合いをつけながら、その時々の関心と合理性にしたがって実施されてきました。 統計データは、あるがままに実態を映し出している、と思われがちですが、統計調査や取りまとめに携わった人々の関わりがあるからこそ、数字が生み出されます。 21世紀の「統計不信問題」にも通底する事態は、日本における統計学、統計制度の最初期からみられるものでした。統計史を通じて日本の近代を考える本書から、この本が課題とすることを

          [ためし読み]『数字はつくられた 統計史から読む日本の近代』②「第一章 はじめに」