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獅子舞ユニット結成!都市の余白を探す、獅子舞生息可能性の視点とは?

2022年1月に、秋田発の3人組の獅子舞ユニット「獅子の歯ブラシ」を結成しました! 私達は地域に根付く伝統的な獅子舞とは異なり、ゲリラ的に様々な都市に出没し、厄を祓って舞い歩きます。

これは獅子舞が生息(存在)していない土地にあえて赴くことで、都市の空間的な余白や人の寛容性など、獅子舞が生息しうるか?という視点によって土地の暮らしを可視化する取り組みです。この取り組みのことを「獅子舞生息可能性都市」と呼んでいます。

訪れた土地で獅子舞を手作りして舞い歩き、その土地の舞いやすさや人々のリアクションを検証しています。こちらは2022年1月に秋田市の中心市街地で獅子舞を実施した時の様子です。

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そもそも獅子舞とは?

まず、獅子舞とは何かについて触れておかねばなりません。あなたは獅子舞を見たことがあるでしょうか?アジアで受け継がれてきた伝統芸能の一つであり、四つ足動物をモチーフとした獅子(シシ)に扮した舞い手が、太鼓や笛のお囃子に合わせて舞うものが一般的です。

日本では、全国に約7000種類に及ぶ獅子舞が存在すると言われています。獅子舞は古くから悪疫退散の儀式として行われ、それが転じて、五穀豊穣や商売繁盛などを祈る芸能として地域に根付き、それぞれの形で親しまれてきました。

私たちは獅子舞の中でも、地域の家を一軒一軒回る「門付け(かどづけ)型」の獅子舞が生息できるどうかを様々な土地を舞い歩いて検証します。石川県に実際に生息している門付け型の獅子舞の様子はこちらです。

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獅子舞が生息しうるか?という視点

実際に門付け型の獅子舞が町に出てみると、高い建物ばかりだったり、土地の余白が少なかったりすると巨大な体を持った獅子舞は、なかなか舞いに行くことができません。こちらの写真は秋田県秋田市にそびえ立つ、テナント付きのビルやショッピングセンターの様子です。

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一方でこちらは秋田県秋田市の大屋根通りの様子です。道幅は非常に広く、この道に面したお店には気軽に舞いに行けそうです。実際に獅子舞をしてみたら、「上手ですね」と声をかけてくれた人もいました。

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これらは一例にすぎませんが、土地の空間的な構造、経済的な余剰、人の寛容性、土地に占める住居の割合、地質学的な要因などの様々な観点から、獅子舞の生息可能性が検証されていきます。

獅子舞ユニット「獅子の歯ブラシ」とは?

遅くなりましたが、自己紹介をさせてください。3人組の獅子舞ユニットは「獅子の歯ブラシ」と名乗っています。獅子にとって最も重要な行為は「噛む(bite)」ことで土地に宿る厄を払うことです。見方を変えれば、噛むための ”歯”と噛むべき ”厄”がなければ、獅子は生息できません。

獅子舞の生息可能性を探る一連の活動は、獅子に欠かすことのできない ”歯”を磨く行為と等しく捉えることができるのではないでしょうか。そう考えた私たちは獅子の歯を磨くように、その厄払い感覚を洗練させていきたいという思いから「獅子の歯ブラシ」と名乗ることにしました。

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メンバーは獅子舞マニアの稲村行真、パフォーマーの工藤結依、美術家の船山 哲郎の3名で活動中です。この3名は2022年1月に秋田県秋田市にて行われたAkibi複合芸術ピクニック 秋田/沖縄という企画のご縁で結成に至りました。3人のプロフィールはこちらです。

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稲村 行真 Inamura Yukimasa
獅子マニア
シシ歴=人生

フォトグラファーやライターとして、民俗芸能の取材、研究、作品制作などを実施。日本全国 300 件以上の獅子舞を取材して記事を執筆している。中央大学法学部を卒業後、なぜか獅子舞の鼻の 可愛らしさに魅せられ、石川県加賀市にて獅子舞の調査活動「KAGA SHISHIMAI project」(2019 年~現在)を始めた。その後は身体的に土地を繋ぎ記録する「東京~石川 500km 徒歩」(2017, 19 年)などのプロジェクトも展開。2022 年には秋田県秋田市から「獅子舞生息可能性都市」の活動 を開始した。獅子舞のフィルターを通して都市を見るという視点から、全国各地を舞い歩いている。

獅子に対する想い:僕は厄払い行動を必然的に行なっている身体性があり、自然に獅子舞的な生き方をしているように感じます。

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工藤 結依  Kudo Yui 
パフォーマー
シシ歴=3ヶ月

秋田県出身。秋田公立美術大学ビジュアルアーツ専攻卒業後、一年間同専攻の研究生として活動。 現在は東京藝術大学先端芸術表現科修士課程に在籍中。 幼少から自身の存在が在ることや命の存在に興味と疑問を持っている。自身の肉体や生体反応が 作品の一部として存在し、鑑賞者と干渉するパフォーマンスやインスタレーションを軸に制作活 動を継続中。身体内部へのフィールドワークと身体外部への探求を相互に行う活動を実践してい る。昨年は体温をテーマに個展「余熱 - ほとぼり -」を開催した。

獅子に対する想い:「シシ」という存在を通して自分ではない何かに変体してみたいと思います。

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船山 哲郎 Funayama Tetsuro
美術家・博士 ( デザイン学 )
シシ歴=3 ヶ月

建築の設計やリサーチ手法をベースとしたインスタレーション作品の制作や、空間デザイン、 地域活性化事業への参加、学術論文の執筆など、活動は多岐に及ぶ。近年では、「新しい茶の湯 のためのスタディ」(2020 年~現在 ) と題して、伝統的な形式にとらわれない茶室や茶会のあり 方を模索するための実験的な活動を継続している。
獅子に対する想い:都市は誰のものなのでしょうか。獅子のものでもあると思います。

▼3人の自己紹介獅子舞はこちら

どこで獅子舞を実施するのか?

獅子舞は日本全国約7000地域に存在し、47都道府県で確認されています。今や獅子舞は日本で最も数の多い民俗芸能とも言われているくらいです。ただ、獅子舞が生息(実施)しにくい地域もあります。広域的に言えば獅子舞の信仰圏が少ない西日本、スポット的には東京23区や都市の中心市街地などがそれに当たります。

また、世界的な視野で考えれば、獅子舞はアジア圏に多くみられる芸能です。逆に言えばそれ以外の国々で獅子舞はあまり見られません。これらの獅子舞が根付いていない土地を転々としながら、ゲリラ的に獅子舞を舞いに行くことで、文字通り「生息可能性」を確かめることになります。こちらの地図は、日本全国の獅子舞生息数を色分けして示したものです。

獅子舞の生息数

どのように舞うのか?

毎年まつりの日に出てくる地域の伝統的な獅子舞とは異なり、日時や舞場を公表しない「ゲリラ獅子」であるという特徴があります。これは獅子舞という伝統的で神聖な行為を個人的なアクションに解放し、自由で神出鬼没にアレンジすることを重要視しているからです。獅子頭や胴体も地域の廃材や自然資源等を活用して、短期的にくるっと丸めて運べるようなカジュアルな形で製作します。

舞い方を創作する段階では、個人の身体や知識が地域の環境に触れることで、環境に翻弄されながらも、その土地にふさわしい舞い方を確立することを目指します。逆に言えば、どこでも同じ振る舞いというのはありえません。獅子舞生息可能性を測る観点から、獅子舞を始めた一人目の気持ちを想像しながら創作します。この際に、その土地が宿す厄の存在に注目するのは、厄払いの性質を持つ獅子にとって不可欠な行為です。

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滞在期間が終われば、その土地で確立した舞い方もお蔵入りです。同時に各地域の滞在最終日には何らかの形で「獅子の葬儀」を行います。勿体ないと思っても獅子頭と胴体を土地の自然や消費の循環の中に戻し、決して持ち帰らないのです。

獅子舞生息可能性都市が目指す未来

僕らの活動の目指すべきところは、獅子舞の生息地を増やしたいわけではありません。つまり、担い手不足により減少しつつある獅子舞文化を盛り上げて、その継承に貢献したいというわけではないのです。伝統的な獅子舞を否定も肯定もせず、ただ、狂気的なマレビトとして現代的な価値を宿す「ゲリラ獅子」を舞いたいと考えています。この獅子に対して、寛容性を持った地域が増えてくれたらという想いはあります。

獅子を異形のマレビトと捉えるならば、ジェンダー、障害、人種、思想などを越えた多様な人の繋がりや関係性を考えることに繋がります。また、獅子という巨大生物を許容できる空間が必要になるので、将来的には建築基準法が変わり建物の高さや公道、玄関幅などの規格が見直されて、「獅子舞フリーな建築」が当たり前になる社会が訪れるかもしれません。また、獅子舞は地域交流の手段でもあるため、対話なしに見る・見られるの関係を作り出す、監視カメラなどはなくなる可能性が高いでしょう。

その土地の暮らしの根底を流れる自然環境や地形、風土を肌で感じながらも、暮らしの原点を常に意識し、現代における獅子舞に優しい地域について考えます。

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