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宣伝会議賞について語り始めたら、4,000字を超えていた。


宣伝会議賞? 何やそれは?」

ですよね。知らない人の方が多いと思います。「宣伝会議賞」とは、キャッチコピーやCMの企画を競う日本最大級の公募賞です。宣伝会議という出版社が主催している年に一度のコンテストで、その歴史は古く今年で57回目を迎えるそうです。グランプリの賞金はなんと100万円。賞の詳細は省きますが、過去の受賞者には、糸井重里さんや林真理子さんなどの著名人もいます。(過去のグランプリ作品はこちら

宣伝会議賞は、コピーライターになりたい人、現役若手コピーライターの多くが通る道です。いわゆる登竜門的な存在です。

宣伝会議賞の良いところは、誰でも気軽に応募できることです。ド素人であってもマグレで100万円ゲットのワンチャンがあります。キャッチコピーとは、10文字前後の短い言葉です。誤解を恐れずに言えば、難しい言葉を知っている必要もないし、基本的に既存の言葉の組み合わせなので、日本語が使える全ての人に可能性があります。初心者には敷居の高いイラストコンテストや文学賞とは違って誰もが気軽に参加できるんですね。一行の文章を書いて100万円。夢がありますよね。当然、プロのコピーライターも本気で参加していたりしますが、素人にもチャンスがないこともないので、100万円の夢に向かって挑戦してみてはいかがでしょうか?

私自身、今はもう応募していませんが、宣伝会議賞については以前からずっと書きたいと思っていました。興味のない方は多分つまらないと思うので、このへんで読み進めるのをやめた方がいいと思います。(笑)

■客観的評価は、やっぱり武器になる。

さて、ここから、コピーライター志望者、若手コピーライター向けの話。この賞に応募する動機はさまざまだと思いますが、コピーライター志望者、若手コピーライターの大半は、「客観的評価」がほしくて頑張っているのではないでしょうか。コピーライターとして採用されるためのアピール材料にしたい。今よりもっといい環境に転職したい。もっといい仕事を手がけたい。そんな野望を持った人たちがこの賞に挑戦していると思います。過去、そういう貪欲な人たちに何人も会いました。もちろん、コピーライティングのトレーニングと位置付けて応募している人もいますし、ただ賞金がほしいという人もいます。

僭越ながら自分の話をさせていただきますと、例外なく自分も二十代の頃、せっせと応募していました。何年か応募し続けて、協賛企業賞という名の賞を三度いただきました。あの頃は、電車の中で、帰り道のカフェで、一人暮らしのアパートで、場所を問わず必死にコピーや企画を考えていました。草津温泉まで車で行って、“一人宣伝会議賞合宿”をしたこともあります。温泉入ったらぽかぽかしてきて眠たくなってほとんどコピーを考えずに布団に入ったのはいい思い出です。

当時の自分を応募へと突き動かしたのは、上に書いた通り、客観的評価のない自分への危機感や焦燥感です。広告クリエイティブの恵まれた環境にいたわけでもなかった自分は、社内の評価ではなく、社外の評価がほしかったのです。要領の悪い自分なりに、狭い世界ではなく広い世界で通用する手応えを求めていたのだと思います。

当たり前ですが、コピーライターの未経験者や実績のないぺーぺーの新人が、「自分は実力があります」「私はすばらしいコピーを書けます」「僕は自信があります」と自分で言っても信用してもらえません(それはそれですごい気もしますが)。

ものづくり(クリエイティブ)や芸術などの世界では、受賞歴のようなわかりやすい実績やバックグラウンドがないと、こちらをしっかり見てもらえないし、興味も持ってもらえないことが多いように思います。又吉直樹さんが芥川賞を獲った時、一斉にマスコミが持てはやし、周囲の人たちが“先生”と呼び始めましたが、ご本人的には受賞前の自分と受賞後の自分は大して変わっていないはずなのです。人生に一つのファクトが足されただけ。そのへん、世の中も人間も単純にできていますよね。

「宣伝会議賞を受賞しても何の役にも立たない」「もう賞の時代ではない」という意見もあります。確かに賞をとったことでそんなに状況は変わらないかもしれません。でも、ないよりはあった方がいい。たとえ賞がとれないとしても、応募しないよりは応募した方がいいです。「アンテナをはっていること」「努力をしていること」が客観的にわかるじゃないですか。価値観は人それぞれですが、斜に構えて「賞なんて興味ない」「獲れるわけない」と言っている人より魅力的に見えます。(ただ、会社の仕事そっちのけでこればっかりやるのはどうかと思いますが)

■どうすれば受賞確率が上がるのか?

受賞確率を上げる方法(道筋)を自分なりに書いてみたいと思います。先に言っておきますが、自分なりの理想のコピーライター像をしっかり描いている人や、コピーの英才教育を受けているような人には関係のない話かも。藁にもすがる想いで賞がほしい人に向けたメッセージであり、20代の頃の自分自身に向けたメッセージでもあります。

受賞確率を上げる一番の方法は「本数をたくさん出すこと」です。えっ、知ってた!?  確かに「数を出そう」とアドバイスされる方が多いですよね。でも実際そうなんですよ。とにかくいっぱい書いて、いっぱい応募する。シンプルです。数が多ければ物理的に確率が上がりますし、たくさん書いているうちに視点や切り口がどんどん広がっていきます。

「1000本書きました。そのうち厳選の500本を応募しました」みたいなスタイルで応募する人もいます。否定はしません。それで受賞できたら格好いいです。でも選べるほどの力量なんてないのに自分でセレクトして、実は良い作品を省いてしまっていたなんてこともありえます。評価とは他人がするものです。

なので、自分で書いたものは、なるべく漏れなく応募した方がいいです(ただし、語尾を変えただけのような類似作品を応募するのは不利なのでやめましょう)。耳ざわりの良いアドバイスは参考程度にして、「イケてるコピーで受賞したい」というようなこだわりは捨てて、いっぱい書いて応募して1%でも受賞確率をあげましょうよ。サッカーで例えるなら、「豪快ミドルのスーパーゴール」ではなく「岡崎やゴン中山のような泥くさい体を張ったゴール」です。形より結果を優先するってことです(ん、 何か違うか・・)。結果を出すことでさらに自分が成長します。まあ、とにかく、これは結果的に成長速度も上がる合理的な応募スタイルだと思っています。

運良く受賞すれば授賞式に招待されます。授賞式でモチベーションの高い人やレベルの高い人に出会って、たっぷりの刺激をもらって、その帰り道で沸々と湧き上がってくるでしょう。「来年もあの場所に行きたい。受賞者の仲間に再会したい。次回はもっともっと頑張ろう」という気持ちが。“自分にワクワクできる自分”に、一刻も早く出会った方がいいと思います。

■おさえておきたい二つのこと。

宣伝会議賞のコピーを書く際に知っておいた方がいいことを二つ書いておきます。(なぜ二つなのかと言うと、二つしか思い浮かばなかったから。他にもコツのようなものはあると思います)

『他の応募者も思いつきそうなコピーを把握する』
まず、自分だけでなく他の誰かも考えそうなコピー、他の人も高い確率で最初に思いつきそうな切り口を先に書いてしまいます。それを何となく把握してしまえば、あとは、それ以外の切り口を探せばいいのです。把握していれば、そこを行ったり来たりする必要がなくなります。他の人が思いつかないようなオリジナルな切り口や表現を探しましょう。
多くの人が一斉に同じ切り口のコピーを応募するとどうなるか。一次審査で共倒れです。でも、切り口がかぶっていても表現が洗練されていると選ばれることもあります。ただし、これは、あくまで「把握する」であり「応募しない」ではないのがポイント。みんなが思いつきそうなコピーだからといって応募しないのはもったいない。

『真面目に考えすぎない』
この言い方だと誤解を与えるので『肩の力を抜いて考える』と言った方がいいかな。お題(課題)の文章に書かれていることを真に受けて真面目にやり始めると、視野の狭いコピーができあがるパターンが多いです。
過去の課題の一つに、ゆうちょ銀行の「こつこつ貯金することがカッコイイと思えるアイデア」というものがありました。そこで真面目な人は、文面に引っ張られて、「貯金」と「カッコイイ」を必死に結びつけようとするでしょう。でも課題をしっかり読み解いてみると、要は「ゆうちょ銀行は貯金する人を増やしたいんだな」ってことがわかるわけです。その年、「人生の半分は無職です」というコピーがグランプリに輝きました。今や人生100年時代であり、定年退職後も30〜40年と人生が続くので、老後に向けて貯金必要ですよね? 読んだ人に「なるほど!確かにそうだ!」と気づかせるコピーです。このコピーを見て、貯金することがカッコイイと思いますか?

■0.001%の狭き門へ。

あと、宣伝会議賞の応募数にも触れておかないといけないですね。自分が応募していた頃は総応募数30万本くらいだったような気がしますが、年々応募数が伸びています。昨年2018年の総応募数は54万8258本だったそうです。そのうち受賞できるのは、たったの65本。受賞確率は約0.001%の狭すぎる門です。

宣伝会議賞の審査システムは、一次審査→二次審査→三次審査→最終審査のような感じです。まず、最初の関門である一次審査という高い壁を越えなければなりません。たったの1%くらいしか通過できず、99%の応募作品ははじき返されます。昨年だと、総応募数54万8258本に対して一次審査を通過したのは5,555本だったようです。なので、受賞できなかったとしても、一次審査を通過しただけでもすごいことなんですよ。

宣伝会議賞の締め切りは11月6日13時。皆さん、頑張ってください!


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