かくれんぼしよっ。(536文字)
ねえ お母さん かくれんぼしよっ
「1、2、3、4…もういいか~い」
「もういいよ~」
クローゼットの前には脱ぎ捨てた息子のスリッパ。
すりガラス越し、ひそむ人影がくっきり。
服の色や嬉しそうな顔まで見えてきそう。
「み~つけたっ!」
「きゃ~~!!」
次お母さん隠れるね。
「1、2、3、4…もういいか~い」
「もういいよ~」
分かりやすいところに隠れ、息をひそめて待つ。
お母さん♪
お母さん?
お母さん!
オカアサ~ン!
え~ん涙
慌ててでていく。
え~っと、これは隠れる遊びなんですよ。
とりあえず一回くらい探してくださいね。
それから5年。
わたしはときどき思い出すと隠れてみたくなる。
あ、お母さん隠れたんだね♪
ここかな?
あ、ここでしょ~。
あれ、お母さん?
お母さん!
オカアサ~ン!
五年が経ち、息子もさすがに1、2か所は探してくれるようになった。
けれどお決まりのくだりは、全くそのまま。
お母さん、しりとりしよっ!
僕からね。 ペ・ン・ギ・ン!
五年前はしりとり開始と同時に終わらせていた息子。
今は難解地名や外来語を自由に操り、永遠にしりとりが続くようになった。
オセロだってできる。
神経衰弱にいたっては随分前から私より得意。
ときどき息子は布団にくるまり身を隠す。
かくれんぼのスキルはいつまでたっても変化しない。
いただいたご厚意は、今後の執筆の原動力にさせていただきます。 これからも楽しんでいただける記事を執筆できるよう 精進していきます。 今後とも応援宜しくお願い申し上げます。