なぜ、書かずにはいられないのか
私はWebメディアの編集やライティングを仕事にしている。noteやTwitterで書くのも好きだ。
最近、たまたま将来について話す場面が複数あり、「書くことを極めたいの?」「ライターを目指すの?」と聞かれることが重なった。
すぐに返事ができなかった。
私は、書きたいのだろうか。
書くのは好きだ。もっともっと書けるようになりたいけれど、書けるようになればそれで満足か、と言われると、それは違うと思っている。
では、なぜ書くのか。
そんなことを考えていたときに、以下の本を読んだ。
特にビジネス系の論文を書く人のためのテキストで、研究の進め方がかなり丁寧に説明されている。
もちろん研究をする人にもおすすめしたい本だが、この本に書かれている「ケース・スタディ」に関する説明を読んで、これが私の「書きたい理由」と近いのではないかと気づいた。
ケース・スタディは、事象の連鎖であるプロセスを記述し、個人や集団の行動をその社会環境のなかで研究することに焦点を当てます。(p.71)
ケース・スタディの背後にある考え方は、実例を注意深く見ることによってはじめて、変数や事象が実際にどのように相互作用しているのかを完全に描き出すことができるというものです。(p.70)
つまり私は「書くことを通じて、埋もれていた事実や見えていなかった物事のつながりに気づく瞬間」が好きなのだ。誰かが書いたものを読むよりも、自分で手を動かすほうが、見逃しがちなたくさんのことに気づけるような気がする。
ちなみに私はライティングや編集をする前は、少しだけテレビ局にいた。
映像の仕事は刺激的だったが、物事をうまく整理できたとか、現象が掴めたという感覚を持つことができず、結果辞めてしまった。数字を使うのが好きな人もいるし、世の中を把握しやすい方法は人それぞれなのだと思う。
とにかく今のところ、私にとって書くことのゴールはそこだ。
「伝えたい」という動機が一番前に出てこないのが、少し悲しい。
もちろんそういう気持ちがないわけではない。取材をしていると、「早くみんなに知らせたい」と思うこともたくさんある。
でも「知ってほしいから書くんです」とだけ説明するのは、なんだか嘘っぽい。情報発信の仕事をしているのに自分の気持ちは偽って伝える、というのは不誠実なので、そういう言い方は今はしない。
書く理由には、その人の価値観や思想が出ると思う。
たくさんの「書く人たち」の理由が知りたい。
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