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世界一周307日

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2011年3月10日。ひとりの旅行作家が全く新しいシステムによる世界一周の旅をスタートさせた。巡る先はアジア、ヨーロッパ、アフリカ、北米、南米、オセアニアの世界6大陸。『SUGO…
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2020年9月の記事一覧

note57: ジュネーヴ(2011.9.2)

【連載小説 57/100】 仕事柄、日本を訪れる外国人ツーリストにどこを案内するべきか相談されることが多い。 こうやって「SUGO6」のレポートをしているとトラベルライターとしての僕のドメインが海外のみのように思われるだろうが、実は日本国内を旅して紀行記を残す仕事も数多く手掛けているからだ。 で、日本を旅する人、それも日本の歴史や文化を学びたい志向の海外ツーリストには滋賀県を薦めることにしている。 その中央に琵琶湖を抱く滋賀は「近江」と呼ばれ、その昔「近江を制する者は

note58: ヘルシンキ(2011.9.5)

【連載小説 58/100】 「森と泉の国」へ移動して3日目。 樹々に囲まれる時間の中で、僕は“旅人”としての半生を振り返りながら「もう少しヨーロッパ諸国にも関わっておけばよかったな」と思っている。 気付けば“旅を人生の住処とする”トラベルライター稼業も四半世紀を越えたが、海外に関わるキャリアの多くはポリネシアやミクロネシア、オセアニア圏にある南国の島々と濃密な自然と文化を抱える東南アジア諸国を舞台としたもので、ヨーロッパ大陸へのアプローチは限られたものだった。 そこに

note59: ヘルシンキ(2011.9.8)

【連載小説 59/100】 自然豊かな北欧の国フィンランド。 首都ヘルシンキもたくさんの森に囲まれ、滞在時間を重ねるほどに身も心も緑色に染まっていく… そんな風にこの町の魅力を“自然人”としてリリカルにまとめてしまえば充分なのだが、“文明人”から抜けきれない僕は、一方でかくも豊かな気分になれる理由をロジカルにまとめたくなりデータをリサーチする。 ■面積:338,000平方km(日本の約90%) ■国土の森林率(世界1位の72.9%) ということでフィンランドは緑が多い

note60: ニューヨーク(2011.9.11)

【連載小説 60/100】 ニューヨーク、ジョン・F・ケネディ国際空港に到着した。 入国審査を終えて荷物を受け取り、カフェに入ってこのレポートを入力しているのだが、おそらく通常より張り詰めた空気が空港内に流れていることに間違いない。 初めて降り立つ空港だから以前の記憶などなく、比較できるはずもないのだが、そう感じるのには訳がある。 現在時刻は9/10の午後16:50だが、時差がサマータイムで13時間あるから日本は翌午前5:50で既に日付が9/11に変わっている。 そ

note61: ニューヨーク(2011.9.13)

【連載小説 61/100】 闇の中から未来に光を見いだそうとする。 国家や民族、イデオロギーを超えて人類には共通する再生力があると信じたい。 「9.11」を精算し、いかなる21世紀を創造していくのかはアメリカだけの課題ではなく、国際社会、いやこの星に生きる全ての民に与えられた試練なのだと思う。 「自由の女神」が建つリバティアイランドからワールドトレードセンター跡地のあるマンハッタンを眺めながら、僕は改めて“21世紀”の意味を考えている。 あの日、新たな百年紀はスタート

note62: ニューヨーク(2011.9.15)

【連載小説 62/100】 以前に「Uncle Tom(トムおじさん)」と呼ばれる日本人の友人を紹介したことがある。 そう、世界を舞台に活動する某匿名機関のネゴシエイターで、僕にとっては貴重な情報人脈のひとり。 彼の勧めもあって僕は1回目の「Dice Free」システムを利用してミャンマーを訪れた。※[note26]に記した。 そんなUncle Tomから昨日メールが届いた。 折り入って話をしたいことがあるから、ニューヨーク滞在中に会えないか?というのである。 「21

note63: ニューヨーク(2011.9.17)

【連載小説 63/100】 僕が博物館好きであることは以前にも触れたことがある。 [note16]でシンガポールでのミュージアム巡りをレポートしたこともあったが、今回の旅ではその他にもマカオ・マニラ・プノンペン・バガン・イスタンブール・ジュネーヴなどで各国を代表する博物館を訪ねてきた。 そんなミュージアムマニアの僕にとってマンハッタンは極めて魅力的なエリアである。 セントラルパークの周囲だけでも10カ所近い博物館と美術館が点在し、既に幾つかを訪ねたが、その中でも最も気に

note64: ニューヨーク(2011.9.19)

【連載小説 64/100】 マンハッタンから地下鉄に乗ってEAST TRIMONT AVE.駅で下車、徒歩5分でブロンクス動物園に到着する。 ビジネス街ニューヨークに動物園と記せば意外に思われる人が多いかもしれないが、このブロンクス動物園はロンドン動物園に次いで世界第2位の規模をほこる動物園なのだ。 1899年の開園で1世紀以上の歴史を持ち、広大な敷地は265エーカー。 園内はサバンナやジャングルなど生態系別にゾーニングされ、動物個体数は4000頭に及ぶという。 加えて

note65: ニューヨーク(2011.9.21)

【連載小説 65/100】 昨日・今日とホテルの部屋に籠って、たまっていた仕事を集中してこなした。 電子書籍の編集作業、某旅行誌の東南アジア企画構成プラン、ネットニュース向けのコラムが3本、といった内容だ。 世界一周の旅は他の仕事を放り出して出かけたのではなく、レギュラーの仕事はネットワークを通じて継続して引き受けているから、時に集中作業の日を設けている。 旅立つ前は周囲に迷惑をかけないか多少の心配もあったが、僕の仕事の殆どはひとりで構想を練ってテキストを打ち込む作業だ

note66: ニューヨーク(2011.9.23)

【連載小説 66/100】 「アメリカの今後と国際社会のポリティカルバランスのキーになるのは日本だよ」 待ち合わせたウォールストリートのカフェで、直接会うのは1年以上ぶりになるUncle-Tomが開口一番そう切り出した。 前回のレポートで僕が触れた内容を受けて、国際的に活動するネゴシエイターとしての考え方を披露してくれたのである。 彼の話を要約すると以下のようになる。 今、国際社会におけるアメリカの力は極めて弱くなっている。 冷戦終結以降「一極支配」とまで言われた

note67: ニューヨーク(2011.9.25)

【連載小説 67/100】 次の訪問地が決まった。 >>>>> Dice Roll ⑭/2011.9.23-20:00<<<<< NewYork→Miami 【マイアミ Miami】 USA2番目の訪問地はフロリダ州南端に位置する観光地マイアミ。 世界有数のビーチリゾートに9/30から10日間滞在していただきます。 宿泊は人気スポットのマイアミビーチとキーウエストに5泊ずつホテルを確保させていただきますので、アプリを通じてお好みのホテルをお知らせください。 マイア

note68: ニューヨーク(2011.9.27)

【連載小説 68/100】 異国を旅してこそ見えてくる“日本”がある。 昨夜は「SUGO6」アプリのレストラン情報でチェックしておいたタイムズスクエアにある寿司屋を訪ねた。 若い世代にこんな話をすると意外に思われるのかもしれないが「SUSHI」という日本の食文化が外交上果たしてきた役割は大きい。 今でこそ、ニューヨークに限らず世界中いたる都市で寿司屋やSUSHIバーを見かけることができるが、以前はそうではなかった。 おそらく20年くらい前までは「ローフィッシュ(生魚

note69: ニューヨーク(2011.9.30)

【連載小説 69/100】 20日間滞在したニューヨークのラストナイトはどこで過ごそうかと考えて昨夜はエンパイア・ステート・ビルディングを訪れた。 このビルの86階にある屋外展望台からは、窓越しではなく直接ニューヨークの街を360度で眺めることができるのだ。 「SUGO6」の旅では香港やシンガポール、ドバイで摩天楼の夜景を見てきたが、さすがは800万人を抱える米国最大の「眠らない街」だけあって格が違う。 眼下に広がる光の海はビジネス、文化、ファッション、エンターテインメ