真名哲也

TRAVEL WRITER TETSUYA MANA

真名哲也

TRAVEL WRITER TETSUYA MANA

    マガジン

    • TRANS ISLAND 儚き島 回顧録

      2002年2月19日から5年間260週間をかけてオンライン配信された連載ネット小説『TRANS ISLAND 儚き島/真名哲也』。スマートフォン黎明期に掌上の端末で読む未来形の小説を創作してほしいというマイクロソフト社からのオファーを受けて書き下ろした作品は「NETWORK小説」なるカテゴリーで、フィクションと現実の世界が同時進行するリアルタイム配信の実験となった。 作品配信開始からちょうど20年を経た2022年2月19日。同作品の語り手である作家・真名哲也を自らのアヴァター的存在としてプロデュースした江藤誠晃が回顧録を含めた複層的作品としてSNSで再配信を行う。 ※各種オンラインサイトで販売・公開されたコンテンツ(原題『儚き島』真名哲也)に現在補足を加筆した回顧編です

    • 世界一周307日

      2011年3月10日。ひとりの旅行作家が全く新しいシステムによる世界一周の旅をスタートさせた。巡る先はアジア、ヨーロッパ、アフリカ、北米、南米、オセアニアの世界6大陸。『SUGO6』と名付けられた旅はトラベル系ベンチャー企業・PASSPOT社が提供するユニークなプロジェクトで、その名のとおりスゴロクゲームを楽しむように旅行者個々がサイコロの目に応じて世界各都市を転々と旅していく… ※AppleBooksで販売されたコンテンツ(原題「SUGO6」世界一周/真名哲也の旅)を加筆修正したものです

    • 電遊詩人

      真名哲也が2001年にスタート直後のau公式サイト向けに提供していたデジタルポエム企画『電遊詩人』の中から代表作を紹介。 横10文字×縦10,20,30文字の3種の定型詩は「poemail」と名付けられ、読者からの投稿作品募集も行われました。

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    prologue

    情報の海に溺れそうになったら 迷わずその島を訪れるといい世界をネットワークする情報網 個人レベルで自由に使える高性能情報端末 日々生み出される様々なコンテンツ… 20世紀文明の結実としての インターネット社会が本来目指したのは 自主・自由・自立をベースとする 個人主役の豊かな日常だった。 が、現実はどうだろう? 我々は日々、複雑なメカとの駆け引きに明け暮れ 効率を求めたはずのシステムに縛られ 溢れる情報は洪水のごとく目の前を流れ 手元に残るのはほんの僅かだ。 果たしてI

      • 042.楽園創造の速度観

        2002.12.3 【連載小説42/260】 この島に住むようになって腕時計をしなくなった。 日本にいた時のような時間に追われる仕事がないこともあるが、島では人間のリズムの前に自然のリズムがより大きくあるというのが理由なのだろう。 赤道に近づくほど季節の変化が少なくなるのと同時に、昼夜のサイクル変化も小さくなる。 日の出と日没の方角はより東西極に寄り、一日における昼と夜の比率が均等に近づく。 そして、見上げた空の太陽の位置や肌に受ける太陽光のニュアンスで大体の時間はわかる

        • 041.楽園の可能性

          2002.11.26 【連載小説41/260】 どこまでも青い空と海。 白砂のビーチに打ち寄せる波の心地良いリズム。 火照った肌を優しく撫でる椰子の木陰に吹く風。 目に映る原色の花々の艶やかさと、たわわに実る果実の濃密な香り… 南国の島を、人が「楽園」と呼ぶ際のイメージとは、概ねそんなところだろうか? 地上最もロマンチストにして、モラトリアムな生き物である人類は、有史以来、その想像力や遊び心で、心理的かつ距離的な「非日常」を遠い南海上に求めてきた。 では、現代人にとっ

          • 040.ジョンからの手紙

            2002.11.19 【連載小説40/260】 マーシャルのジョンから手紙が届いた。 手紙と記したが、実際はメールである。 自身のメールアドレスを持たないジョンの代わりに、カブア氏が肉筆のレターをテキストファイル化して送ってくれたのである。 不思議なもので、メールと手紙とでは受け取る際のイメージがかなり違う。 メールが情報的であるのに対して、手紙が情操的ということだ。 前者は合理的に短時間で作成され、後者はじっくり時間をかけて紡がれる。 また、前者が即時に届くのに対して

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            039.エージェントの仕事

            2002.11.12 【連載小説39/260】 ボブと知り合って、間もなくちょうど1年になる。 彼がワイキキで僕の暮らすコンドミニアムを訪ねてきたのが昨年の11月半ば。 その翌日に水陸両用セスナで、今いるノースイースト・ビーチに降り立ったのだから、僕にとってのトランスアイランド史は、未だ1年なのだ。 不思議なもので、ゆったり流れる島の時間の中にいると、ずっと前からこの場所で暮らしてきたかのような錯覚さえ覚えることもあるが、僕を取り巻く環境はこんなにも大きく変化した訳だか

            038.三角形で出来た卵

            2002.11.5 【連載小説38/260】 例えば子供の頃に絵本で見た未来の宇宙開発。 月や火星に最初に作られるコミュニティは、ドーム型の小さな建造物群。 それはどこか遊牧民のテント村に似て、僕には牧歌的なイメージさえあった。 ハイテクを駆使して宇宙へ飛び出す未来の冒険と、未だ知らぬ地平線の彼方を目指したかつての冒険。 その双方に通じる開拓者たちのシンプルで機能的な住環境がある。 夢を追うには、日常を包む空間がシンプルであればあるほどいいのだろう。 そしてトランスアイ

            037.懐かしい未来

            2002.10.29 【連載小説37/260】 「懐かしい未来」 そこから幾つものストーリーが生まれてきそうなフレーズだが、僕のオリジナルではない。 トランスアイランドのマーケティングエージェント、スタンのコンセプトワードだ。 小説を書く僕が言葉をリリカルに扱おうとするのに対して、スタンは常にそれをロジカルに活用する。 同じ景色を見て、同じ風に吹かれて、同じ意識を持ちながらもスタンの感じ方はいつも僕を驚かせる。 例えば、島という空間に暮らす感覚。 前回、僕はそれを「浮

            036.海からしか見えないもの

            2002.10.22 【連載小説36/260】 この週末、海野航氏、ナタリーと3人でアウトドアミーティングに出かけた。 (「週末」という表現の持つ休日性に違和感を感じる。この島ではウィークデイとウィークエンドの質的な差などないからだ。単に出かけた日が土曜日だったということになる。) そして、その心地良い浮遊感の余韻が今も残っている。 僕らはシーカヤックで海に出たのだ。 島の南西部の海岸沿いを漂い、語り合いながら海上の半日を過ごした。 さて、トランスアイランドのエージェント

            035.温故知新の考古学

            2002.10.15 【連載小説35/260】 温故知新。 古きをたずねて新しきを知る… 今週、海野航氏と有意義な議論の時間を重ねた僕とナタリーが再認識したことは、「今」に至る「歴史」の重みであり、それなくして、如何なる未来もありえないということだ。 トランスアイランドにおけるエージェントの使命は、ある意味で島の未来創造。 故に、ともすれば今我々が立脚する地点に対して、前ばかりに目が行ってしまう。 が、文化人類学者である海野氏は違うのだ。 彼は徹底して「過去」を見つめ、

            034.ナタリーの旅

            2002.10.8 【連載小説34/260】 「僕らには、語り合うべきことが山ほどある」 「どれだけ語り合っても、話題はつきない」 「明日も会おう、もっと話し合おう」 恋人たちのセリフではない。 ここのところ定例のコミッティ会議だけでは物足りず、毎日のようにノースイースト・ヴィレッジのカフェに集まって議論を重ねている僕たちトランス・エージェントの合言葉だ。 Café Isleは、島で一番人が集まる場所。 間もなく、開店後の延べ集客数が1万人を数えるという。 我々エージェ

            033.コペルニクス的転換

            2002.10.1 【連載小説33/260】 長旅から帰る。 しばらくはその余韻に浸りながら、何もせずにゆっくり過ごす。 それが僕流の正しい旅の締めくくり方だ。 3週間ぶりに戻ったノースイースト・ビーチで、昨日と今日、僕は本当に何もせずに、波の音をBGMにのんびりした時間を過ごしている。 そして、3週間分巡った季節を感じた。 秋に向かうノースショアの波が確実に高くなっているのだ。 そこにずっと留まると見えないものが、しばしその場を離れることで見えることがある。 マーシャ

            032.夜空を見上げて

            2002.9.24 【連載小説32/260】 ワイキキの西、フォート・デ・ルッシー公園のビーチ側に並ぶベンチでキーボードに向かっている。 ふた月の付き合いで家族のように仲良くなったカヌー少年ジョン。 長い友のような友情を交わすことになったカブア氏。 そして、名もなき異国?(トランスアイランドのことだ)の僕とボブをやさしく迎えてくれたマーシャルの人々と別れ、空路ハワイへ戻った。 7ヶ月ぶりのワイキキで、久しぶりに会いたい友人や、少し調べたいこともあり、帰島前に、一週間ほど

            031.文明進化論を小島に見る

            2002.9.17 【連載小説31/260】 機会があれば、是非、訪れてみたい島がガラパゴス諸島だ。 太平洋の東部、南米大陸エクアドルの西に位置するガラパゴス諸島は、ゾウガメやイグアナ、グンカンドリなどが暮らす野生生物の宝庫。 かのダーウィンが進化論の発想を得た場所としても有名なこの島は、ユネスコの世界自然遺産に指定され、希少な固有動植物が数多く生息する凝縮されたミュージアムアイランドだ。 悠久の地球生命史に比べれば、ほんの短い人類史ではあるが、遠い未来にその「文明進化

            030.天命の再会

            2002.9.10 【連載小説30/260】 育った国をあとに単身異国を目指し、勇敢かつ孤高なる闘いを経て、その成果を持って凱旋する、というのがグローバル社会におけるヒーロー像なのだろう。 スポーツやエンターテインメントの世界のことだけではない。 マーシャルのジョンも、紛れもなくそのひとりだ。 僕にとって1年3ヶ月ぶりのマジュロ国際空港。 国際空港といっても近代的な空港ではない。 環礁の島の横幅が、そのまま一本の滑走路を取り巻く空港の幅であり、滑走路自体も短い。ランディ

            029.マーシャル2020年

            2002.9.3 【連載小説29/260】 ワークショップ報告(5) 「5年前にマーシャル諸島共和国第二の国際空港となったクワジェリン空港にグアムからの直行便が到着し、タラップから日本人の若者数十人が島に降り立つ。 空港職員に案内されて、“Yokwe”(こんにちは)とマーシャル語で書かれた案内ゲートをくぐり、小さいながらも近代的な空港の建物へ入ると、入国審査のゲートがふたつ。そこで手続きを済ませてメインフロアへ進むと吹き抜けの空間に木造りのカヌーが飾ってある。 若者たちを

            028.島の未来に光はあるか?

            2002.8.27 【連載小説28/260】 ワークショップ報告(4) 「観光」とは産業の一分野ではなく、本来、一種の概念的な言葉だ。 その語源を辿れば、読んで字のごとく「光を観る」で、人がその活動の中に何がしかの光明を見出すことに、かつての「観光」は位置づけられた。 だとすれば、旅するというプロセスそのものが観光の重要な部分であることに間違いはないが、そこに「なぜ旅立つのか?」という動機や「なにを求めて旅するのか?」というスピリチュアルな動機が明確にセットされて、旅は