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詩凝りの勘定

29
比較的散らかった言葉の並び
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#詩

『日の出が来る前に』

『日の出が来る前に』

日の出が来る前に
独り言をかたどれたらなあ
みえないそのしるし
とめられないきざし

日の目を見る前に
見通す目があればなあ
ねれないよのかげに
はなあふれるほとり

鼓動に逆らうのは
苦しいことでしょう
鼓動の高まる音
独りをいいことに

日の出を呼ぶ声に
託すきざしのさし込めば
しじまをねがめぐり
ちしおがみをたどり

孤独に逆らうなら
いっそ夢見言
孤独をさすらいつつ
ひたる夢現

日の出が

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『宇野にて』

『宇野にて』

お医者様がいない街で
病気は治る と信じられる?
体は仕切られてる と信じられる?

君が居たらな と思ったら
玄関先は少し暗いよ
春が来たらな と思うから
冬の曇は水性絵の具

そっと終われたらな と座った
岸壁 冬季は工事中
春が来るじゃん と呆れてる
今の僕にも少しこたえた

フェリーの来ない港にも
小舟静かに ぎいこぎこ
うんと近くで ぎいこぎこ

と 海を切り分ける街で
泡立ちを"泡沫"

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『空気』

『空気』

あなたは空気のように
どこにでも現れる
私は吸って 少し咳き込む
時には疎ましくも思いますが

それから空気のように
遠くへ漂ってしまう
塵をほのかに香る夜は
後から密かに寂しくなるよ

待ち遠しかった昼下り
誰かの氷菓を乞う声に
何とはなしに話を為して
ひらいてとじて
またひらく
まだむすびたくない

あなたは空気のように
どこにいても そこにいる
目の前にする姿かたち
まだむすびたくない

『寝言』

『寝言』

闇雲に満たした腹の詰まりと
呪いのような悩みのタネ
恨むのは何が欲しいわけでもなく
鏡越しだと届かないから

恋が、呪いになったとき
果たしてそれは終わるの?

いつでもおいでと言ったとき
一体いつの話をしてたんだ?
気持ちを試すように叩きつけた言葉
額面どおりに受け取ればいいよ

広告だらけののっぺらぼうに
新しい日常なんて作れてたまるかよ
自分の足でなんて立ってないのに
これ以上何を背負えばい

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『雨よ霰よ』

『雨よ霰よ』

人々は横並び
アーケードに雨宿り
俄な土砂降りが
すぐに終わらないかと待っている

日がなただ働き
人いきれのバスに乗り
降りた途端の雨は
弾よりも重く

過去僕らには未来があった
馴染の衆と誓った夢を
嵐の夜には勲章を

しかし貴女、しけた人
明日が来ても未来は始まらず
今日が過ぎても過去は終わらない

人々は散り散り
諦念裡に歩みだす
ひとりひとりはきづいていても
みんなでからだをよせあわず

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『朽ちる紫陽花』

『朽ちる紫陽花』

夏が腐らせて、秋が乾かして、冬が冷ます。春は何をしてくれたっけ…もう忘れかけている。朝から戸口を叩く「決して豪雨ではない」梅雨の雨が流してしまったんだ。
おとなになる。それが自分で握るのではなくて、身に降りかかるものだと知った。梅雨のない北国から大阪に越して、悪かったことか、良いことかもしれなかった。

悪いとか良いとかは実際、僕の勝手だからよいのです。午前九時の有線ぐらい、ピントがずれてて、くだ

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『追憶』

『追憶』

時が経てば忘れてしまうもの、といいますが。時が経たなくても覚えていないもの、だらけ。

昔の人って、虫は植物から生まれると思っていたんだって。蝦夷地の黎明を刻む揚羽蝶を見つけたら、あっと叫んで、追いかけて。結局ソレは空気に融けてしまう。
裏山の残雪が季節のパラメーター。短い春は冬の残り香。追い出されて、夏が始まった日付を、1個たりとも僕は挙げて見せられない。

僕は忘れないよ、と言った。君は覚えて

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『ゆびきり、みずきり、ひとりきり』

『ゆびきり、みずきり、ひとりきり』

 拙いのはむしろ神頼みのほうだとしても、何年続けても上達しない水切り。名前すら与えられなかった頃の方が下手だとは思わずにいて、1個だけの水飛沫と無邪気な扁平石につく悪態。

 成長とは負の過程なのかもしれません。
 あるいはあなたものだと、思いこむのをやめたら?七とか、八の倍数をよろこぶにしても、時間を流れさせているのは投げた石でも弾んだ水滴でもあなたでもない。実はいつだって、変わらずに足元で見え

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『こづち』

『こづち』

似顔絵売って生きてみたい
やってみせなと君は言う
簡単なことだよ
概ね柔らかな絵柄で
目尻の角度を測って

どうやって獲ったっけな
遠い昔の佳作は

清く正しく生きてみたい
やってみせなと君は言う
簡単なことだよ
何かを始めることはない
ただ減らすのみ

そうやって贅肉をつけたでしょう
ぐうの音も出ません、です

結局、何かをするのは愚かだが
何もしないより賢明だ

『人間原理と目当て星』

『人間原理と目当て星』

寄り添う ふたご座
くらべる てんびん座
おおぐま こぐま
ひしゃく星

うんと最近知ったことには
縁もゆかりも 連星も
気づきもせずに 線で結ばれて
船出や生まれを 決めてるらしい

北極星を捜す 船乗りよ
あんたら 何百年か後には
迷子だぜ?

誰かの明日や 商売に
お互い 今日でもないくせに
持ち出しやがる 迷惑な奴だ

それでは一体
北極星でないなら一体
太陽とやらの子供らが
天軸の先に

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『ほんとは』

『ほんとは』

夜は明るく 日は暗く
絵描いてみれば よくわかる
街を歩けば 輪郭は何色?
丘を上って 可視を数える

夜はうるさく 日は静か
口笛吹けば よくわかる
闇の音色は ススキ色
帳の海と 夜語らい

罅は輝き 皺深く
君の掌が 愛おしい
手繰り寄せては 確かに撫でて
隙間探して 爪たてる

『動かざること』

『動かざること』

男は横たわる
首の方から見える、歪んだ頭
風に吹かれて火を吹いて
その次の日も、日は昇って

男は横たわる
首の方を見つめて、見透かして
人々はといえば目を背けたり
あるいは、目隠しを垂らしたり

男に一度だけ
生きているのでしょう、と
声をかけたら黙って
目を閉じたっけ

『こうてん』

『こうてん』

海岸に立つ 水平線
地図を読む 経緯線
向こうの岸辺は どうだか
少し傾いて見えない?

充分に明るいのだけど
曙までは あと少し
一番厳しい 打ち波の時間
競いながらも 横並びは崩れずに

実は 海岸線とはまた違う
基準があるらしく
遠くを見れば その差は
一目瞭然 でした

そして ほら!
対岸の稜線を掴んで 日の出が昇る
曙が 顔を出すと
愚かな僕は 恵みの母の幻を
砂浜伝いに 追うのだが

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『醜聞に問う』

『醜聞に問う』

一体全体キミの身体を どれだけ分かたれたなら キミを心より愛するボクは 心臓一つを差し出せる? 微分積分キミの傾きだけでは 物分かりが悪いから キミの言の葉だと足りなくて 血肉一片が欲しくなる 枝葉末節キミの節々を 気味悪いほど吟味 キミも知ってる奇妙な 一致をどうか末永く 奇々怪々キミの気持ち面持ち鼻持ちならない そら寄越せ キミが笑えど怒れどボクは 心臓片手に待ちわびる