市川 太一 / Taichi Ichikawa

Poker player / Modern Poker Theory(邦訳:現代ポーカ…

市川 太一 / Taichi Ichikawa

Poker player / Modern Poker Theory(邦訳:現代ポーカー理論)の翻訳・出版(https://runnerrunner.jp/modern-poker-theory/) / Travel lover

マガジン

  • Betted in the dark

    専業のポーカープレイヤーになる直前から、プロとして世界各地を周り、COVID19のパンデミックの影響でジョージアという国に閉じ込められるまでの2年弱を綴った旅行記です。この旅は、僕の、世界・世の中への向き合い方を大きく変えるものとなりました。私的かつ純粋な旅行記といった感じで、初めて書いたこちらのnoteの拡大版のようなものになると思います。 https://note.com/ta1_1river/n/n15f3a5bc1eab 週に一本新しい記事を公開していくので、もしよかったら読んでみてください。

最近の記事

  • 固定された記事

ポーカープロとして、世界を旅した2年間を振り返って〜ポーカーのこと、旅のこと、それから生き方に関する極めて個人的な意見〜

はじめに「ポーカーに取り組むその先に何があるのか」 先日、友人がそういった趣旨のツイートをしているのを見かけた。 真っ当な疑問だし、何かに多くの時間と労力を捧げている人にとっては、ある種普遍的な疑問なのではないだろうか。 僕は専業のポーカープレイヤーとして、2年間ほどポーカーで生計を立てつつ世界各地を回るという生活をしてきた。「自分のこれまでの生活はどのようなものだったのか?」彼のツイートを見て、そう問われている気がした。 2年という活動期間を考えると、僕自身はプロポ

    • World's Smallest Violin〜とあるポーカープレイヤーの敗戦記〜

      はじめに 以前にダウンスイング(※プレイヤーが不運によって損失を繰り返す期間のこと)の乗り越え方という趣旨の記事を書いた。今から10ヶ月ほど前、ロサンゼルスのカジノでポーカーをしていた時のことだ。酷い不運に見舞われている友人を連れ立っていたこともあり、自分の経験を何か伝えられればと思い書きおこした記憶がある。 今、その記事を自ら読み返している。なるほど言っていることはもっともだ。しかし、僕の心を支配しているのは、「なんでもいいから勝たせてくれませんか…?」という思いである。

      • 2023年のnote活動について

        皆さんこんばんは。noteの更新に関して簡単なご報告です。 2023年からnoteの定期更新をやめることにしました。具体的には今年の5月から続けていた週1更新をやめるということです。週1といいつつ、風邪を引いて書けなかった週があったり、ワールドカップにかまけた12月は月に2本しか書いていなかったりするので、既に不定期更新になりつつあるとも言えますが…笑 週1での更新をやめる理由は大きく2つ。 1つは、現在メインで更新している旅行記を、短話で更新するのではなく、まとめて推敲

        • カタールW杯現地観戦記〜あの瞬間、"僕"という存在は消えた〜

          あの瞬間、僕という存在は消えた「オーーー、バモニッポンーーー、ニッポン、ニッポン、バモニッポンーーー、オイ!オイ!オイ!オイ!オイ!」 11月23日午後7時。ドイツとの試合が終了して1時間ほど経つが、スタジアム外では日本の応援歌が鳴り響いている。 国籍は関係ない。道行くサポーター達と握手・抱擁を交わし、記念撮影をする。少し離れた位置にいる他国サポーターからは「Japan! Congratulations!」「Enjoy it!」と祝福の言葉が飛んでくる。スタジアムの外は、

        • 固定された記事

        ポーカープロとして、世界を旅した2年間を振り返って〜ポーカーのこと、旅のこと、それから生き方に関する極めて個人的な意見〜

        マガジン

        • Betted in the dark
          5本

        記事

          「好きなことで、生きていく」 そうあらねばならない世界は地獄かもしれない。

          散髪「たいちさんも髪切ってくるといいよ」 僕はシェアハウスに住んでいる。住人全員がポーカープレイヤーという、なんとも変わったシェアハウスだ。 先日、フィリピンから帰ってくると、同居人達の髪型が洒落たものになっていることに気がついた。一方、僕はと言えば、前回の散髪から2ヶ月ほど経っている。起床時の寝癖は特にひどくそろそろ切り時ではある。 「皆さんはどこで切ったんです?」 そう聞くと同居人の一人が小さな紙を一枚差し出した。どうやら全員同じ床屋にお世話になったらしく、その店の

          「好きなことで、生きていく」 そうあらねばならない世界は地獄かもしれない。

          ダウンスイングを耐える

          はじめにダウンスイング、しんどいですよね。ポーカー人口が増えたからか、このWSOPシーズン中、自分の周囲やTwitterを見ていてもダウンスイング真っ只中で苦しそうな人たちが目に付きます。それに派生してか、「ポーカーで生き残る上で何が重要なのか?」というテーマも話題になっているみたいです。 収支の管理、バンクロール管理、メンタルの管理、プレイングスキルetc. 生き残る上で重要なものとして様々な要素が挙げられますが、これらは相互に影響し合うものでもあり、どれも大事だよなぁと

          ダウンスイングを耐える

          ポーカーで世界を旅した2年間〜第五話:純粋な理性の世界へ〜

          第四話:どこに行くのかはこちら    秋葉原駅から末広町方面へと続く大通りを歩いていた。大きな道の両脇には7,8階建てくらいのビルが並び、ソフマップ、メイドカフェ、チェーンの飲食店などなど派手な色彩のお店が入居している。ビルが林立し似たような景観が続くため今どこを歩いているのか分からなくなりそうだ。まだまだ残暑が厳しい。Google Maps様様である。  目的店舗が入居する雑居ビルに入りエレベーターで7階まで上がると、店の入口についた。店内はかなり広く、バカラ、ブラックジ

          ポーカーで世界を旅した2年間〜第五話:純粋な理性の世界へ〜

          ポーカーで世界を旅した2年間〜第四話:どこに行くのか〜

          「第三話:わからない」はこちら  9月のある日、僕は仕事を早めに切り上げ本屋へ向かった。本屋は面白い場所だと思う。目当ての本を購入するだけならAmazonで事足りる。しかし本屋で本を眺めていると、面白い一冊と偶然の出会うことがある。セレンディピティと言ったか。そんな瞬間が僕は好きだ。  その日も、何の気なしに本屋に入った。木製の、焦げ茶色を基調としたおしゃれな内観で、入口を入ってすぐのところにイチオシの本が平積みされている。その周囲に人が集まっていたので、横から覗き込んでみ

          ポーカーで世界を旅した2年間〜第四話:どこに行くのか〜

          ポーカーで世界を旅した2年間〜第三話:わからない〜

          「第二話:検査〜新社会人、国と喧嘩する〜」はこちら 「お世話になっております。〇〇様のお電話でお間違いないでしょうか。この度はお預かりしている資産の返還をさせていただきたく、ご連絡させていただきました……」  2018年夏、僕は取引所が預かっている全資産を各顧客に返還する作業をしていた。そう、僕たちは負けたのだった。 2週間の検査をなんとか乗り切ったが、その後僕らの会社は登録申請を自ら取り下げることになった。  細かい事情は分からないが、金融庁の方とうちの偉い人たちが協議

          ポーカーで世界を旅した2年間〜第三話:わからない〜

          ポーカーで世界を旅した2年間〜第二話:検査。新社会人、国と喧嘩する〜

          「第一話:胡蝶の夢」はこちら 「〜については、どうなっていますか?」 「現在手元に資料がないので、後ほど資料を用意し回答致します。」 「そんなこともわからないのか!!」  朝の10時、隣の部屋で検査官の怒号が飛び交う。まるでテレビドラマみたいだ。 僕は暗号通貨業界で働いていた。ポーカープレイヤーとしての生活を始める前のことである。    当時の日本は暗号通貨先進国と呼んでも言い過ぎではなかった状態にあった。暗号通貨・ブロックチェーンという真新しいテクノロジーを危険なものだ

          ポーカーで世界を旅した2年間〜第二話:検査。新社会人、国と喧嘩する〜

          ポーカーで世界を旅した2年間〜第一話: 胡蝶の夢〜

          「…………ヤパン!」  ロシア語か、スヴァン語か。しゃがれた声が遠くに聞こえる。 「…………ヤパン!ヤパン!フード!フード!」  二度目の呼び声で目が覚めた。時計の針は6時を指していた。 「今いくよ」  僕は独り言を言いがら伸びをした。ゲストハウスLikaの朝は早い。急かされるように2階の寝室からダイニングへと下る。 「人に起こしてもらうだなんて、久しぶりだな。」  ここウシュグリ村は標高2200mに位置しており、9月の終わりでも朝晩は冷える。廊下は寒かった。  寒い廊下を抜

          ポーカーで世界を旅した2年間〜第一話: 胡蝶の夢〜

          ギャンブル好きは本能?〜「きのこ狩り」と「山菜採り」を通じてなんとなく理解が深まった話〜

          きのこ狩りと山菜採りとギャンブルと昨年の夏、とある場所で山籠りをしていた時のことだ。宿の若旦那が連れられてときのこ狩りに出かけた。 きのこ狩りをするのは人生初だったのだが、これが面白い。今にも熊が出てきそうな道を歩きながら、きのこを探す。 「きのこ狩りはやめられないね」 歩きながら若旦那が言う。 「山菜採りよりも格段に面白いよ」 これは面白いと思った。きのこ狩りも山菜採りも大自然の中を歩き回り、山中で食物を得るという点では同じなのにその面白さには違いがあるらしい。 「何

          ギャンブル好きは本能?〜「きのこ狩り」と「山菜採り」を通じてなんとなく理解が深まった話〜

          ポーカーなんて知らなかったころの自分へ〜自己探索のためのメモ書き〜

          はじめに先々月、初めて書いたnoteをきっかけに大学時代の友人と再会した。自分が書いたものを読んでくれただけでも嬉しいものだが、彼は感想を伝えた上で会おうと誘ってくれた。なおのこと嬉しかった。 高田馬場駅のロータリーで落ち合い居酒屋へ向かった。数年ぶりの再会を喜びつつ互いの近況を報告し合う。 聞けば、彼は司法試験に受かり「四大法律事務所」に就職したとのことだった。 そこで働いているということは、司法試験で優れた成績を残し、初年度から年収1,000万円を稼ぎ出しているというこ

          ポーカーなんて知らなかったころの自分へ〜自己探索のためのメモ書き〜