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Betted in the dark

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専業のポーカープレイヤーになる直前から、プロとして世界各地を周り、COVID19のパンデミックの影響でジョージアという国に閉じ込められるまでの2年弱を綴った旅行記です。この旅は、… もっと読む
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ポーカーで世界を旅した2年間〜第一話: 胡蝶の夢〜

ポーカーで世界を旅した2年間〜第一話: 胡蝶の夢〜

「…………ヤパン!」
 ロシア語か、スヴァン語か。しゃがれた声が遠くに聞こえる。
「…………ヤパン!ヤパン!フード!フード!」
 二度目の呼び声で目が覚めた。時計の針は6時を指していた。
「今いくよ」
 僕は独り言を言いがら伸びをした。ゲストハウスLikaの朝は早い。急かされるように2階の寝室からダイニングへと下る。
「人に起こしてもらうだなんて、久しぶりだな。」
 ここウシュグリ村は標高2200

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ポーカーで世界を旅した2年間〜第二話:検査。新社会人、国と喧嘩する〜

ポーカーで世界を旅した2年間〜第二話:検査。新社会人、国と喧嘩する〜

「第一話:胡蝶の夢」はこちら

「〜については、どうなっていますか?」
「現在手元に資料がないので、後ほど資料を用意し回答致します。」
「そんなこともわからないのか!!」
 朝の10時、隣の部屋で検査官の怒号が飛び交う。まるでテレビドラマみたいだ。

僕は暗号通貨業界で働いていた。ポーカープレイヤーとしての生活を始める前のことである。
 
 当時の日本は暗号通貨先進国と呼んでも言い過ぎではなかった

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ポーカーで世界を旅した2年間〜第三話:わからない〜

ポーカーで世界を旅した2年間〜第三話:わからない〜

「第二話:検査〜新社会人、国と喧嘩する〜」はこちら

「お世話になっております。〇〇様のお電話でお間違いないでしょうか。この度はお預かりしている資産の返還をさせていただきたく、ご連絡させていただきました……」
 2018年夏、僕は取引所が預かっている全資産を各顧客に返還する作業をしていた。そう、僕たちは負けたのだった。

2週間の検査をなんとか乗り切ったが、その後僕らの会社は登録申請を自ら取り下げ

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ポーカーで世界を旅した2年間〜第四話:どこに行くのか〜

ポーカーで世界を旅した2年間〜第四話:どこに行くのか〜

「第三話:わからない」はこちら

 9月のある日、僕は仕事を早めに切り上げ本屋へ向かった。本屋は面白い場所だと思う。目当ての本を購入するだけならAmazonで事足りる。しかし本屋で本を眺めていると、面白い一冊と偶然の出会うことがある。セレンディピティと言ったか。そんな瞬間が僕は好きだ。
 その日も、何の気なしに本屋に入った。木製の、焦げ茶色を基調としたおしゃれな内観で、入口を入ってすぐのところにイ

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ポーカーで世界を旅した2年間〜第五話:純粋な理性の世界へ〜

ポーカーで世界を旅した2年間〜第五話:純粋な理性の世界へ〜

第四話:どこに行くのかはこちら
 
 秋葉原駅から末広町方面へと続く大通りを歩いていた。大きな道の両脇には7,8階建てくらいのビルが並び、ソフマップ、メイドカフェ、チェーンの飲食店などなど派手な色彩のお店が入居している。ビルが林立し似たような景観が続くため今どこを歩いているのか分からなくなりそうだ。まだまだ残暑が厳しい。Google Maps様様である。

 目的店舗が入居する雑居ビルに入りエレベ

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