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ダウンスイングを耐える

はじめに

ダウンスイング、しんどいですよね。ポーカー人口が増えたからか、このWSOPシーズン中、自分の周囲やTwitterを見ていてもダウンスイング真っ只中で苦しそうな人たちが目に付きます。それに派生してか、「ポーカーで生き残る上で何が重要なのか?」というテーマも話題になっているみたいです。

収支の管理、バンクロール管理、メンタルの管理、プレイングスキルetc. 生き残る上で重要なものとして様々な要素が挙げられますが、これらは相互に影響し合うものでもあり、どれも大事だよなぁというのが個人的な感想です。

「どれも重要なのは分かったから、具体的にどう乗り切ればいいんだ?」

ダウンスイング真っ只中の人から、そんな声が聞こえてきそうです。

そこで、僕がダウンスイングを耐える上でやってよかったなと思うことを振り返ってまとめてみました。項目は、健康管理、メンタルの管理、収支管理、プレイングスキルの4つです。

それでは、はじめていきましょう。

初期値

本題に入る前に、僕の専業開始時の初期値の説明から入ります。本論とは何も関係がないので読み飛ばしていただいても構いません。これくらい下手な状態から始めても意外となんとかなるんだなと思ってもらえればと思い書いていきます。

◯ポーカー歴:半年と少し
・ライブ歴:国内のアミューズトナメ半年、韓国に計10日間くらいライブキャッシュをしに行き+1万円くらい勝ち。
・オンライン歴:スターズ5nl(リング)にて20,000ハンドで5bb/100hands(20万ハンドではないです、たった2万ハンドです。)
◯座学っぽいこと歴:半年
エドミラーのポーカースクール、賭けの考え方、確率の考え方を読みました。
◯その他
・バンク:ポーカー予算、滞在費、渡航費等々全部合わせて100万円くらい。
・一緒に旅する友人一人
・収入源は他になし

なんとも心もとない設定で始まったものです。今ラスベガスやロサンゼルスでダウンスイングにもがき苦しんでいる誰よりも下手だった可能性があります。

書きながら思い出したのですが、専業になるべく仕事をやめた後たまたま木原直哉さんとお会いする機会がありました。その際、専業になることを考えていると伝えたところ、オンラインでこなしているハンド数が少なすぎて止められました。まぁそうですよね、自分の周囲にこの状態で専業を開始しようとする人がいたら僕は確実に止めているでしょう。案の定、後に僕は大いに苦労するはめになります。

そんなスキル不足な状態でNLHライブの1/3から始めて、これまで3年くらい生き残り5/10, 10/20を打つくらいにまでは成長しました。

ダウンスイングに苦しんでいる方もきっと大丈夫なはずです。

健康管理

生き残る上で、メンタルの管理も収支管理もプレイングスキルも重要だと思うのですが、個人的に最も大事なのは、「最低限、理性的な判断ができる程度には健康でいること」だと思っています。当たり前すぎて言及されていないだけかもしれませんが、自分は専業になりたての頃に健康を損なうことに起因する失敗を何度か犯しました。
例えばですけど、アドレナリンに任せて30時間ほど稼働してミスプレーによって大量のスタックを失う。そもそも風邪を引いてしまってそもそも稼働ができない。お酒飲みすぎて二日酔いで稼働時間減ったなどなど。

別に健康オタクになる必要はないですが、「最低限、理性的な判断ができる程度には健康でいること」は心がけましょう。


具体的な健康管理方法については、それだけでnoteが一本できてしまうのでここで細かく書くことはしません。
自分のパフォーマンスを高める睡眠食事運動の種類・量・質を把握して維持していきましょう。ダウンスイング中はやけ酒を飲んだりと生活リズムが崩れがちになるかもしれませんが、健康は最後の砦です。

やる気があっても疲れを感じたらセッションを打ち切って睡眠時間を確保することを優先する。たまには散歩をしてみる。たまには野菜を食べてみる。いきなり全てに取り組むのは難しいので、できるところから改善してみると良いと思います。

メンタルの管理

ポーカーフィッシュからはスキルを上達させることで抜け出すことが出来る。そして同じ様に、正しい情報さえ与えられれば、メンタルゲームのフィッシュからも抜け出すことが出来るのであ

ザ メンタル ゲーム ──ポーカーで必要なアクション、思考、感情を認識するためのスキル

メンタルの管理もスキルの一種だと思っています。
ティルトを防ぎ、自信・やる気を取り戻す技というものも上達していくものだと実感しています。

現実を正しく捉える〜メンタルの不調を引き起こす大半の原因は自分の頭の中にある〜

幾度も幾度もリバーでまくられる。プリフロップオールインでフェイバリットのハンドを持っていたのに何度も敗北する。セットが来たと思ったらセットオーバーセットで敗北する。バッドビートやクーラーを受け続けるとイライラし失望し挙句の果てには自分は呪われているんじゃないか?とさえ思うようになることがあります。

でも、冷静に考えてみるとそれは何故なのでしょうか?不運が重なることなんていくらでもあるはずです。

おそらくそれはポーカーにこれほどまでの分散が存在すると理解していない、あるいは望んでいないからでしょう。これだけ不運が続いたんだから、そろそろ自分が報われる番じゃないか?それは誤った期待です。幸運が訪れるか、はたまた不幸が訪れるかはランダムです。

また、周りが自分よりも下手なのに自分が負けるのはおかしいと思ってはいませんか?それも誤りです。負ける時は負けるのです。どんなに周囲より上手くてもセッション勝率が90%を超えるだなんてことにはなりません。

メンタルの不調を引き起こす大半の原因は、現実を正しく認識できていなかったり、自分の頭の中の誤ったロジックがあることに起因します

その誤った認識・ロジックを一つずつ認識し潰していきましょう。そうすれば気持ちが揺らぐことは減るはずです。

このあたりの話はザ・メンタルゲームの上巻に非常に詳しく書いてあるので興味のある方は読んでみてください。

進歩感を作り出し、学習性無力感に抗う

同卓している他のプレイヤーよりもちゃんと考えているはずなのに勝てない。それどころか何も考えてなさそうな人々に何度も引かれて負ける。もう何をやったって変わらないじゃないか。はいはい、今日も負けますよ。

長期にわたって回避困難なストレス環境に置かれた人や動物は、その状況から逃れようとする努力すら行わなくなるという現象を学習性無力感と言うそうです。長いダウンスイングに陥ると、まさにこの学習性無力感を覚える人も多いのではないでしょうか。この状態は極めて厄介で、勝つために本来やるべきこと(例えばテーブル上で相手をきちんと観察する)をやらなくなってしまうこともあります。

この状態から脱する上で個人的に良かったのは、結果ではなく自身の成長プロセスに目を向けることで進歩感を得るという対策です。

毎日新しいスポットを学習するなりハンドレビューをすれば昨日よりは上手くなっているはずだから、今は結果がついてきていなくても自分は前進しているはずだと進歩感を得ることができます。その他にもAゲームを継続できたセッションの数の増減を見てみるのも良いでしょう。とにかく、何をやっても僕は/私はだめだという状態から脱するために、進歩感を得られる仕組みづくりをしましょう。

そうすれば、やるべきことをやること上でのモチベーションが保ちやすくなるはずです。

ちなみに、ポーカーの収支それ自体はコントロールできない運に影響されてしまう以上、進歩感を得る指標としては不向きだと思います。
やはり、自身のプレイヤーとしての成長プロセス(e.g.ハンドレビューなど)に焦点をあて進歩感を作っていくというのが学習性無力感に抗う良い方法なのではないでしょうか。

(ちなみに、この方法は"リーン・スタートアップ ムダのない起業プロセスでイノベーションを生みだす"という本を読んで思いつきました。「スタートアップは不確実性が高すぎて、精度のよい予測や目標が得られないため既存の会計概念が使えない。そこで新たな指標として検証による学びを実現できているかどうか、前進しているかどうかを確認できる体系的アプローチを取る」とのことらしいです。)

ポーカー以外の軸足を作る

これは割と単純な話で、ポーカー以外のこともしてみましょう。
筋トレでもスポーツでも読書でも友人と語らい合う時間でもなんでもいいです。軸足を複数持つとメンタルのバランスは取りやすくなります。

感情を吐き出す

以前の僕はバッドビート話を他者にすることはあまりありませんでした。バッドビートを嘆いたところで結果が変わるわけでもないし、ただ聞き手に負担を背負わせるだけだと思っている節があったからです。ところが、感情は蓋をしていると着実に溜まっていき、メンタルの状況を悪化させます。感情が溜まりに溜まって頭が爆発しそうになったことがありました。

そういう時はさっさと吐き出してみましょう。吐き出すと気分は晴れるものです。最近はメンタルコントロールのためにひどい展開を食らったら友人に話すようにしています。特に感情を溜め込みがちな人におすすめです。
(友人たちにはもしかすると鬱陶しい思いをさせてしまっているかもしれません。もしそうでしたらすみません笑)

ダウンスイングを相対化して見てみる

ダウンスイング中はこの世の終わりだというくらい暗澹とした気持ちになるものです。しかしよく考えてみてください。もっと大変だったり苦労した出来事や時期があなたにはあるのではないでしょうか?所詮ポーカー、所詮ゲームの中で起きている不運です。人生を俯瞰して見てみましょう。今のダウンスイングなんて小さなものに見えるはずです。

もし他にそのような不幸な出来事が思い当たらないならあなたは相当恵まれています。今回のダウンスイングは苦労して成長する良い機会になるはずです。前向きに捉えていきましょう。

プレイングスキル

特に言うことはありません。
座学しましょう。プレーしながら学びましょう。
プレイイングスキルがあがりウィンレートが高まれば大抵の問題は解決します。

収支管理

支出を減らす

おそらくですが大したウィンレートもない駆け出し専業プレイヤーだった僕がマニラで野垂れ死なずに済んだのは、支出が少なかったことが大きな要因です。マニラでの家賃・水道光熱費・食費は全てあわせても月50,000円程度でした。一ヶ月250時間稼働して収入が0だったところで貯金は5万円減るだけでした。

求める最低限度の生活水準は人によって異なりますが、各自無駄な支出がないか見直してみましょう。支出が少なければ生き残りやすさはぐっと上がります。

収益を増やすためにやれることをやる

うまい相手と戦いたいという気持ちもわかります。テーブルチェンジを頻繁にするのは格好悪いという思いもわかります。レートを下げたくないという見栄も理解はできます。しかし、ウィンレートをあげるためにやれることはやりましょう。本来、ダウンスイング中であろうがなかろうが稼ぎを目的とするならばやるべきことですが、ダウンスイング中はただでさえプレーが悪くなりウィンレートが下がりがちになるので不要なプライドを捨てやれることをやりましょう。

余暇や遊びに使うお金は別で取っておく

ポーカーで勝てないからといって余暇や遊びに全くお金を使わないようになると精神衛生上良くなかったという反省があり、途中からは別途予算を設けるようにしました。例えばバルセロナに行った際には、FCバルセロナのチケット代は確実に確保しました。

バンクロール管理

申し訳ないのですがお答えできることがあまりありません。
基本的に20バイインルールを守ってきた、ただそれだけです。
ただ、1000bbの下山を経験することもあったので40バイインくらい用意しておけば心理的なダメージを減らせたかなという感覚はあります。

終わりに

「ポーカー楽しい?」
専業を始めて9ヶ月くらい経った時にバルセロナで出会ったとある先輩専業プレイヤーに言われ、ハッとさせられた言葉です。

その方はもう専業歴が10年を超えるとのことですが、昔から知っている専業ポーカープレイヤーで、ポーカーを楽しんでいないプレイヤーがそこそこいて寂しいとのことでした。
そして、ダウンスイング中の僕と友人は明らかに楽しくなさそうだったとのことでした。

そうだ、ポーカーが楽しく、ポーカーが好きだからテーブルに座るようになり、あまつさえ専業のポーカープレイヤーにすらなったんだった。
自らポーカーをすることを選択しているのだから楽しまないと。
初心を思い起こさせるありがたい一言でした。


ダウンスイングで苦しんでいる人も、ポーカーを楽しむことを思い出してみましょう。こんなに面白いゲームなんだから、楽しまないと損ですよ!

それでは、皆様、良きポーカーライフを。

参考資料

書籍
ザ・メンタルゲーム上巻
リーン・スタートアップ ムダのない起業プロセスでイノベーションを生みだす

note
ダウンスイングへの心構え【byウサギ】
いつか必ずやってくる嵐に備えて


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