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翔太鈴木
2022年7月19日 08:49
理の額を、汗がしたたる。尻のポケットからぶら下げたタオルを抜き出し、汗を乱暴に拭った。「…ふぅ」ビルの清掃のアルバイト。夏休み中のこの時期は繁忙期で、地獄のような忙しさだった。 換気のために開けている窓も部屋の片面しかなく、風通しは悪かった。そして、その窓から直射日光が容赦なく部屋に入ってくる。しかも、電気代をケチったビルのオーナーから「冷房をつけるな」とお達しがあり、まさに蒸し風呂状態だ
2022年7月13日 07:43
夏休み。ジンが美緒と一緒にハンバーガーショップに入る。二人で宿題をするのが、ほとんど毎日の日課だった。 「今日は、私に払わせてくれる?」美緒がそう言う。ジンは、「いや、そんな、いいよ」と遠慮した。「ううん、ちがうの」美緒が首を横に振る。「おかあさんがね、『今日はご馳走しなさい』ってお金くれたんだ」「なんでまた?」「本当ならね、夏期講習とか行かなきゃいけない時期なのに、ジン君のおか