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介護・人間関係論

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介護は、介護される者と介護する者の相互行為です。この相互行為の構造、関係性について考えてみることは介護の基本を考える上で大切なことだと思います。
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#上野千鶴子

介護・人間関係論Ⅲ コミュニケーション行為としての介護

介護・人間関係論Ⅲ コミュニケーション行為としての介護


1.「偽会話」はメタ・コミュニケーション 介護は当事者(介護される者)と職員(介護する者)との相互行為であるため、介護は対面的なコミュニケーション行為を必須とします。
 しかし、コミュニケーションもままならない当事者(お年寄り)の介護にあっても「介護はコミュニケーション行為といえるのか。」という疑問を持つ人もいるかも知れません。

 認知症介護の現場で良く使われている用語に「偽会話」というのがあ

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介護・人間関係論Ⅳ.介護関係の非対称性・権力性・抑圧性・暴力性

介護・人間関係論Ⅳ.介護関係の非対称性・権力性・抑圧性・暴力性


1.介護における関係の非対称性 介護は介護される者と介護する者の相互行為ですが、介護される者と介護する者との関係は非対称的です。介護を理解する上で、この介護関係における非対称性について整理しておく必要があると思います。

① 関係の離脱可能性

 介護関係の非対称性の一つの特徴は、介護関係からの離脱可能性という観点です。上野千鶴子さんはこの離脱可能性について次のように指摘しています。

 当事者

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介護・人間関係論Ⅵ.パターナリズム

介護・人間関係論Ⅵ.パターナリズム


1.相互関係を毀損するパターナリズム パターナリズム(paternalism)は温情的父権主義、温情的庇護主義と訳されています。
 パターナリズムとは当事者(お年寄り)のために、お年寄りに代わって、お年寄りにとって善いと思われることを、介護職員などの第三者が責任を持って決め、実施することです。
 これは善意に基づく行為ですので、パターナリズム的な行為を行っている者は、自分は善き行いをしていると信

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