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南の島のお部屋

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#旅行

二人だけの海

二人だけの海

波照間島で過ごした星空の夜は、ウサギとカメにとって時間が止まるような体験だった。目を閉じれば今でも、瞼の裏には満天の星があざやかに蘇る。

翌朝は波が穏やかになり、ウサギとカメは波照間島から石垣島へ向かう船の中にいた。ウサギは「泡波」という珍しい泡盛を愛おしそうに抱えていて、「波照間といえば、これがなくちゃね」と、どこか遠い世界を思い浮かべるようにつぶやいた。

石垣島に到着した二人は、車で島を北

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変なホテルとの遭遇

変なホテルとの遭遇

常夏の南の島へ向かう前夜、朝早いフライトを選んだウサギは、空港近くのホテルを予約していた。そのホテルはまるで未来から切り取られたかのように、ロボットと対話するところだった。

ホテルのフロントでは、現実を逸脱したかのような恐竜型ロボットが二人を迎えた。ロビーでは火山が噴火しており、ウサギは、映画の世界に迷い込んだような感覚を覚えた。隣で佇むカメは、「なんか凄いね。いきなり異世界に迷い込んだようだ

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冬の図書館から南国へ

冬の図書館から南国へ

冬の冷たい息吹が窓ガラスを白く染める中、温もりに満ちた図書館でカメは時を忘れて物語に心を委ねていた。帽子や手袋といった冬の装いは、彼の横に静かに置かれている。そんな彼の元に、震える声で「寒い、寒い、寒い」と囁くウサギが現れた。

「こんなに寒いと心まで凍ってしまうわ。暖かさで氷を溶かして欲しいの」とウサギはカメに切望した。カメはゆっくりと顔を上げ、「沖縄の本は分類番号291.9の書架に、ハワイの本

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