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【小説】デーモン眠り睡眠コア薬剤コカレロ跳満ALICE

 リモコンを操作して部屋の電気を消す。
 いくつか前に棲んでいた部屋では電燈から下がったチェーンに紐を繋げて寝床から引けるようにしていた事を考えると大きな進歩だ。
 やろうと思えば声だけで電気を操作できるのだろうけれど、風邪を引いた時などはどうするのだろうか。

 ここ数年はインフルエンザの様な流行感冒を患った記憶こそないものの、世界的な流行疾患で注意喚起をされた直後に普通の風邪をひいて社長に叱責されたのは厭な記憶だ。
 ひきたくて風邪を引いた訳じゃあないし、痛めたくて喉を腫らした訳じゃない。とにもかくにもパックに入ったアイスクリームで喉を冷やしながら社長の説教を聞いてボーナス査定に響いたなと思いながら熱っぽい眠りに落ちた。

 電気を消して布団に埋まっていると過去の悪夢が脳味噌から背骨を伝って全身に広がっていく。
 薄暗い未来が天井になって押しつぶそうとする感じがする、と言う人間もいるらしいが、いまの俺にそんなものが降ってきたら確実にパニックを引き起こすだろう。
 年々溜まっていく過去の些細な失敗が今でも先程の事みたいに甦って全身の神経を揺り動かして神経を覚醒させる。
 心臓は厭な記憶を全身に送り込み続け、髪の先から足の指まで隈なく陰鬱さが支配する。

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