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【生きづらいと感じている全ての人へ。連載①】小説

『小説』
曇りと晴れが交互に過ぎてく平日の13時。
チェーン店のコーヒー屋さんで、ホットドッグとアイスコーヒーのトールサイズを買って小説を読みはじめる。表紙の熱帯魚に惹かれて、思わずパケ買いした1冊。
コーヒーと交互に読み進めるも、最初の1ページを過ぎないうちに雑念がよぎる。

…はて。この小説の登場人物は、ごく普通のどこにでもいるような人物なのに、なんで主人公なんだろう。私は一度も主人公になれた事なんてない。

これまで経験した様々な出来事や、その時感じた周囲との違和感などが、一気にあたまを駆け巡り、映画の一部のように脳裏に映し出される。

私のこれまでの人生の方が、もっと劇的でドラマチックで、他にはない価値観に違いない!
そうだ!小説にできるんじゃない!?

突発的にそう感じて、あまり集中できないまま読んでいた小説をテーブルに置き、スマホのメモを開くと、知識もないまま小説風のモノをなんとなく書き始めてみる。
うーん。どの場面からがいいだろう。やっぱり小さい頃から順を追って、この壮絶な人生を書き始めようか。いや、そんなことしてたら、まとまりきらなくて上下巻になってしまう!いや、上中下巻かな。どうでもいいか。でも、小さい頃の出来事は、私の人生や価値観を表す上で必要不可欠だから端折れない。
あの頃のつらい出来事があったからこそ、今の自由な自分があるのだから。かといって、端的に上手くまとめて、誰もかれもを惹きつけるそんな手法は持ち合わせてないし…。

と、思考が果てしなく大袈裟な妄想に変わったところで我れに返る。私はどうしてこんな無駄な脳内会議をしているんだろう。私の人生なんて、もしかしたら少しは変わっているかもしれないけど、まあまあ平凡で、少々不幸だねってくらい。誰も面白がらないし、まず小説の出版予定も無かった。
当たり前の事を当たり前として脳が処理したところで、一人恥ずかしくなる。全て自分の脳内で巻き起こっているただの思考なのに、いたたまれないような感覚になっていった。
これは白黒思考の強い、私の思考癖のひとつだ。極端に妄想が膨らんで、自分が世界の中心、物語の主人公になった感覚になり、脳内で話しがどんどん展開していく。まるで映画を観ているかのように、映像と台詞までついて。

(つづく)



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