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完璧を目指さない お母さんの笑顔を増やすため、アロマとクレイで未来を作る

自分らしく生きるってなんだろう。

最近やたらと目につく「らしく」という言葉。
SNSやGoogleで検索すれば、これでもかと飛び込んでくる記事の数々。

反応するということは、わたしが「らしく」について悩んでるからなのだろうか。表面化していない潜在意識とやらが、魚釣りでもするように、その言葉を引っ掛けているのだろうか。

「子育ても仕事も自分らしさも楽しみたい人が、心と体を整えるために大切な3つのこと」

今回のインタビュー相手である川崎絵里さんが、Instagramのライブセミナーで語ったテーマだ。自然療法サロン「Apple leaf」を開業して5年が経つ。

自分らしさを楽しむってどういうことだろう。

無理をしないということだろうか。
向上心がないとは違うと思うけど、その線引きはどこなんだろう。

いざ考え出すと言葉が出てこない。
ライブの中での絵里さんのこの言葉が印象的だった。

「自然療法を取り入れることで、自分の心と体に向き合うくせがついたと思います」

「くせ」とは意識しなくてもやってしまう習慣とも言える。
習慣になるまで意識をしないと、自分とは向き合えないということだろうか。そもそも向き合うとは。

聞きたいことが次々と浮かんでくる。

自然療法の講師と聞くと、手間暇かけることを楽しみ、いわゆる丁寧な暮らしを実践しているイメージだった。でも意外にも絵里さんはこう言った。

「私、ズボラなんです」

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柔らかな笑顔でそう話す絵里さんは、お薬に頼りすぎず家族の健康を守りたいお母さんに、アロマテラピーやクレイセラピーの使い方を教えている。
自宅にあるサロンの棚には、クレイパウダーや精油の小瓶が並ぶ。

「色々準備をするのはめんどくさいって思っちゃうから、ホームケアで使う材料は2、3種類にしてます。料理の味付けで言えば醤油、酒、みりんですかね。自分や家族用のアロマオイルなら、目分量で作ることもあります」

自然療法を通して、お母さん自身が自分らしく働いたり、生きていくきっかけ作りをしたいと語る絵里さん。アロマとクレイは、絵里さんの暮らしには欠かせない頼りになる存在のようだ。

自分らしさを見つけても、迷うこと、悩むことはあるんだろうか。
これから目指す未来を語ってもらった。


川崎絵里
2016年自宅にて自然療法サロン「Apple leaf」を開業。暮らしの中に幸せな時間を増やすため、家庭で取り入れやすいアロマやクレイを使ったホームケアを伝えている。外に目を向けすぎず、自分と向き合って「らしさ」を大切にする日々をblogやinstagramで発信中。海からほど近い石川県金沢市で夫と娘と暮らしを楽しむ。
HP:https://appleleaf-life.com



自分と向き合うきっかけをくれたアロマ

---アロマテラピーは精油(エッセンシャルオイル)を使って、心と体の健康に役立てる自然療法だと伺いました。植物のエキスが凝縮された精油の香りが、理想と現実のギャップに悩んだ美容師時代の絵里さんを支えてくれたそうですね。

「なりたい自分とできない自分の差に自己嫌悪の日々でした。カットやヘアアレンジはやってもやっても満足にはほど遠くて。話を盛り上げないといけないと思っていたからか、お客さんとのコミュニケーションにもどこか後ろ向きでした」

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---そんな絵里さんを救ってくれたのが香りだったんですね。

「アロマの香りが大好きで、好きな香りに包まれてアロマトリートメントを受けることが、唯一のストレス解消法でした。

トリートメントも気持ち良いのですが、私が興味を持ったのは香りの方。アロマディフューザーを使って、好きな香りで部屋を満たすことで、はりつめていた気持ちが和らぐのを感じました。

自分がこんなにも香りで癒されるなら、同じような心地良さを伝える側になりたいと思って、アロマテラピーについて学び始めました」


勉強を進めていくうちに、医師が患者に治療の一環で精油を処方する国があることを知った絵里さん。 

ただ香りを楽しむものではなく、心身の健康に関係する薬理作用があることに特に関心を持ったそう。そこで取り入れたのが「嗅覚反応分析」というメソッド。香りの好みで自分の心と体の状態を視覚化できる方法だ。

病院に行くほどではないが日々悩まされる不調、例えば、むくみや日常的に起こる頭痛、ちょっとした心の落ち込みなどの原因を探る手助けになるそうだ。

「その時の気分や状態によって好きな香りが違うんです。例えば、やる気が起きずだるい時にレモングラスがいい匂いって感じるのは、胃腸の働きが弱っているのかなとか。今の自分の状態を考えるきっかけになります。
日々観察を重ねることで、自分の心と体に向き合うくせができてきました」

アロマが自分と向き合う手段だとしたら、クレイは絵里さんにとってどんな存在になるのだろう。


自己肯定感とクレイの存在

「アトピーで、35年間ずっと薬を使ってきたんです。誰かの手を借りないとフツーになれないのがコンプレックスでした。そんな私の肌トラブルを解消してくれたのが、クレイでした」

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クレイは泥のことだ。

フランスやオーストラリアなど、自然が残る土壌から採掘された粘土質の土。自然光で乾燥、パウダー状に粉砕され、検査されたものを絵里さんのサロンでは使用しているそうだ。

クレイは皮膚を作るのに必要なミネラルを含んでいる。アトピーや赤ちゃんのおむつかぶれなどの肌の不調の緩和や、体の中のいらないものを排出するデトックス作用もあるそうだ。

薬に頼りすぎなくても自分が変わっていく体験をした絵里さんは、段々と肌が愛おしくなり、自分のことが好きになったと話してくれた。

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「小学3年生の娘がいるんですけど、私が自分のことを好きじゃなかったから、子供にはそうなってほしくなくて。自己肯定感を育みたいって思ってました。でも自分の自己肯定感が低かったから、どうやったら良いのかが分からなくて」

---そんな中でも、子育てと並行して自分の肌の変化と向き合ううちに、悩みは解消されていったんですか。

「そうですね、外に答えを求めないことが大事なんだなって思うようになりました。自分は自分のままでいいとOKを出して認めてあげる。それがいわゆる自己肯定感を育むってことかなと。

他人の目を気にして、薬の手を借りないとフツーになれなかった私が変われた。だから娘にも、何か自分で乗り越えられるような経験をしてほしいって思います。

例えば、日常に起こるちょっとしたかゆみや湿疹といった肌トラブル、風邪などの身体の不調に対して、すぐに薬を頼るのではなく、自分で対処してみる。

勉強と同じかなって思うんです。最初はわからなくても、考えることで自分を理解していく。乗り越えられた経験は、心を強くしてくれると思うから」


---乗り越えられたからこそ、わかることですね。

「こんなかっこいいこと言ってますけど、落ち込むことも多いです(笑)過去を振り返って気持ちが引き戻されて、気弱になって、その度になんとか立ち上がっての繰り返し。でもそれが私らしさなのかもしれません」


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誰にでも揺らぎはある。その振れ幅とどう付き合っていくかが、自分を認めてあげることなのかもしれない。

外の目や周りの評価よりも、内面に目を向けることを優先したい。そんな絵里さんがいつも大事にしている言葉を教えてくれた。


座右の銘は知足安分

「知足安分(ちそくあんぶん)を大切にしています。向上心がないわけではなくて、足るを知ること。外に目を向けて、ないものねだりをするのではなく、内面に目を向けて、もう十分満たされているという、安心感を得る感じかな」

---自分の安全基地を確認するイメージでしょうか。

「土台といった方がしっくりくるかもしれません。悩んだときや立ち止まったときは、この言葉に立ち返ります。何かを考えたり、行動するときのスタートとも言えるかもしれません。

知足安分は無いものねだりの逆。足るを知るって、自分と向き合うことだと思うんです。

自分はこれができる。それはできないけど、あの人に助けてもらえる。そんな風に自分は色々持っていると理解することが、安心感、そして行動につながる。せっかく生きているのに行動しないのは、もったいないし、悲しいなって思います」

---どうやったら、知足安分の状態に気づけると思いますか。

「コーチングをしている知り合いから教えてもらったワークがあるんです」

絵里さんが教えてくれたのは「自分が既に持っているものを100個書き出す」というもの。例えば、ベッドがある、髪の毛がある、手足があるという風にリストを作っていく。

「すごく単純なんですけど、100個を書き切る前にすごく幸せだなぁって思えます(笑)自分はこんなにたくさんのもので、満たされているんだって」

既にあるもの、持っているものを書くことは「自分を認めていく作業」だと絵里さんは言った。

私も夢を100個書き出したことはあるが、それは「無いもの」を求めていく作業。そうではなく、既にあるものを書くことで、当たり前すぎて気づかないものへのありがたみを感じるという。

そんな風に「今ある自分」に目を向けた絵里さんは、自然療法の先生になることがゴールなのだろうかと、疑問が湧いたのだそうだ。

コロナ禍で岐路に立ち、自問自答を繰り返す中で出した答えは、アロマやクレイを広めることが目的ではなく、その先の目標のための手段だと気づいた。

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これまでも多くの講座を開催してきた絵里さんだが、5年間の蓄積を見直して、先日新講座をスタートさせた。

今まで学んできたことをバラバラにして、組み合わせて、より分かりやすくなるように、見せ方、魅せ方をかえているそうだ。

「ついつい楽しそうな方に流されちゃうから、今は踏ん張って地に足をつけている感じです。今までは自分が楽しいことが優先だったから、数字的な結果には満足出来てなかったんです。でも、きちんと仕事として成立させたい。

仕事としての土台を固めて、ステージアップしたいんです。やりたいことはもっと大きなことだってわかったから」

---やりたいこと、目指すものがあるんですね。

「サロンの生徒さんは家庭をもつお母さんがメインです。自然療法を伝えることで、その人が楽しい毎日を過ごせる。お母さんが笑顔になれば、子供も嬉しいし、その家庭が幸せになると思うんです。 

家庭は社会の最小単位だから、笑顔の家庭が増えれば、世の中がよくなる。大げさかもしれないけど、平和な環境を子供たちに作ってあげたいんです」

自己肯定を求めるうちに出会ったアロマとクレイのホームケアを通して、自分を認めることができたという絵里さん。

さらに人生のキーワードとも言える「知足安分」という言葉によって、ホームケアが根本にある生活が身につき、当たり前に存在するものに感謝できるようになったという。

「平和な世の中って、すごく漠然としていたんですけど、最近やっと目指すものが見えてきたんです。みんながそれぞれの違いや、素敵なところを認め合える社会にしたいっていうこと。

そのためにはまず、お母さんから子どもへのケアを通して、心や体を大切にすることを伝えていきたい。自分のことを大事にするっていう根本的なことは、家庭で行うホームケアでこそ、役に立つんじゃないかって。

次世代の子ども達が、自分のことを大切にできるホームケアが当たり前に生活にあれば、他人も大切にできると思う。そういう輪が広がっていけば、世の中が平和になるんじゃないかなって」

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「私に力はまだまだなくて、一人で言っていても誰も聞いてくれない。だから人を巻き込める力が欲しいんです。想いだけじゃできないから影響力が欲しい。そのためにサロンの活動の基盤をしっかりと作りたい。

アロマやクレイで心に悩みを抱えた小学生のケアをしたいなって思ってます。でも私は専門家ではないし、私が直接することはできないかもしれない。だから専門家の人と繋がって、こういうやり方もあるよって伝えることができたらなと思います。

やりたいこと、いっぱいありますね(笑)」

最後に

---自分らしさを楽しむ笑顔のお母さんになるための、アドバイスはありますか。

「完璧を目指さずに、とりあえずやってみるってことですかね。100%を目指さない。

サロンのお客さんでも実験のように失敗を楽しんでいる方は、これは自分に合う、合わないを体感してどんどんステップアップして行きます。

過去の自分もそうでしたが、多くの人はやってみる前に最短距離で『正解』を求めます。体ではなく、頭。実践ではなく、思考優先。

自分にとっての正解ではなく、他人の答えや正しさを求めてしまっている気がします」

あなたに合う精油はこれだと差し出されても、実際に好みの香りじゃないと使う気にはならないだろう。

それでも「正しいはず」と自分の気持ちにフタをして使い続けたら、違和感しか残らない。

向き合うとは、どう感じているのかを心と体を観察すること。自分が感じる心地よさをものさしにして、自分なりの「正解」を見つけていく。

「まずやってみる。そして体感することが大切かなと。自然療法だけでなく、どんなことでも『できた』や『効果があった』という実感がないと続けられないなと思うんです」

---納得感、ですかね。

「そう、納得する。自分で選択をする。私はこれでいいではなく、これがいいを見つけること。私の場合その手段の一つが自然療法でした。だから、必要な人に届けばいいと思ってます。未来が決まると行動できるから、一歩ずつ進んでいきたいと思います」

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インタビューを終えて、絵里さんを「ろうそくみたいな人」だと思った。

一人で始めた小さな火が、年を追うごとに大きくなる。それは軸であるロウの部分が太くなっているから。

時には風に吹かれて、小さくなったり、揺らぐこともあるだろう。それでも消えることがない芯の強さを見せてもらった気がした。

私もこの記事を書きながら、何度も何度も揺らいだ。
深く考えることをやめてしまおうかと思った。
揺らいだからこそ、見えたもの、学べたものがあった。

インタビュー記事を書くことは怖い。
その人を私というフィルターで切り取ってしまうことになる。
でも、その怖さを超えて、伝えたいものがある。

第三者の視点からでしか見えないもの。
自分の背中を直接見ることができないように
その人が気づかない魅力を、微力ながら伝える手伝いをしていきたい。

参考:国際クレイセラピー協会
https://claytherapy.jp/
嗅覚反応分析 一般社団法人健康包括支援協会
https://ahis.or.jp/

取材日:2021年6月10日 新月
執筆/CHIHIRO 写真提供/川崎絵里




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