見出し画像

加奈の中に溜まっている見えない傷。二十年後に振り返れば、傷ついていない、〈たましい〉などなかったことが分かる。或いは『フワつく身体』第十六回。

※文学フリマなどで頒布したミステリー小説、『フワつく身体』(25万文字 366ページ)の連載第十回六です。(できるだけ毎日更新の予定)

初回から読みたい方はこちら:「カナはアタシの全て……。1997年渋谷。むず痒いほど懐かしい時代を背景にした百合から全ては始まる。」

前回分はこちら:環は美頼の遺骨に会いに行く。そして、友人の秋と、あの頃について語り合う。見えていたことと見えていなかったこと。或いは『フワつく身体』第十五回。

『フワつく身体』ってどんな作品?と見出し一覧はこちら:【プロフィール記事】そもそも『フワつく身体』ってどういう作品?

八割方無料で公開いたしますが、最終章のみ有料とし、全部読み終わると、通販で実物を買ったのと同じ1500円になる予定です。

本文:ここから


●一九九七年(平成九年) 八月十五日 世良田美頼の日記

 あの日、カナがレイプされた日のあともアタシとカナは同じようにすごした。

 京王線を降りると、むわっとする熱気とブレイクビーツと言うか、デジタルハードコアと言うかそんな感じの工事音が響き渡る道をくぐりぬけて、渋谷の街で買い物したり、プリクラ撮ったりして、街をウロウロしたあと、テレクラとか伝言ダイヤルを聞いて、適当なオヤジを見つけて、お金をもらってエッチする。それで、道玄坂のテレクラで清め合う。

 またそのお金で渋谷の街で、買い物して、プリクラ撮って。

 カナはショウとはまだ続いているようで、ときどきピッチで話したり、二人で会ったりしていた。

 アタシはそう言う日はしょうがないから、タワーレコードとかHMVで試聴しまくって時間をつぶしていた。

 府中の家はママとケンカしてばっかなので、いたくなかった。ママはアタシの持ち物がいつの間にか増えていることに、ガミガミ言ってくるんだった。

 どうして、中学のときのアタシは地味なデブだったから、やせてもっとお洒落しろって言ってきてたのに勝手だ。今、アタシはやせてお洒落してるじゃないか。

 ママはテレビでやってる、援交とやらをやってるんじゃないの? って疑ってきた。

 もちろん、やってない、カナんちがお金持ちだからもらったって言い返したけど、ママは納得しなかった。だから、

「女の子の世界では、お洒落して高い服やカバン持ってる子が偉いの! ママだって、どっかのオジサンと失楽園して買ってもらえばいいんだ!」

 ってママに言ったら、ママはこれ以上ないってぐらいに怒り出した。

 今、CD屋さんの洋楽コーナーでは、カーディガンズを推薦していて、アタシは猫みたいに甘えるボーカルを聞きながら、早くカナに会いたいって思うんだった。

 アタシを愛して
 アタシを愛して
 好きって言って
 アタシをだまして
 アタシをだまして
 だましつづけさせて

 アタシを愛して
 アタシを愛して
 フリでもいい

 アタシを導いて
 アタシを導いて

 アタシたちの夏休みは同じように流れていった。

 渋谷の街には、相変わらずたくさんの十代の女の子があふれていた。今年の夏はみんなホルターネックを着て背中を出していた。背中にはキラキラしたラメを塗って、自分の体を熱帯魚のように、爬虫類のように輝かせていた。

 足元はみんな、きまったように厚底のウェッジソールサンダルだ。

 アタシたちもそんな女の子たちの中の二人だったけど、カナはやっぱりちがっていた。

 本当、カナはありふれたアルバローザのハイビスカスが入った、青いホルターネックワンピを着ると、なだらかで華奢な肩のラインが美しすぎて、きっとハワイにいる精霊とか女神様はこんな姿なんじゃないかって思うぐらいだった。

 カナはアルバなんてネタで着ているとか言っていたけど、ネタでもなんでも美しいものは美しかった。

 ただ、夏休み中はウリをやる女の子たちが本当に多すぎて、アタシたちはやっぱり高い金額を提示してくるオヤジはヤバいよねっていうことになって、二万五千円とかでもしょうがないから飲むことにした。

 そう言えば、あのとき、マキガミは、「体はレイプされても心はレイプされない」なんてことを言っていたけど、本当にそんなことはあるんだろうか。

 カナは変わらない様子で、むしろそのことに触れてはいけない感じだった。

 今日はカナの誕生日だった。カナの誕生日は終戦記念日で、日本中が暗く沈むから嫌なんだって前に聞いていた。

 今日は今までとはちがって、雨が降って肌寒い一日だった。カナの華奢でなだらかな肩のラインにちょっと鳥肌が立っているところも綺麗だとか思った。

 カナは十七歳になった。

「普段行けないようなレストランとか行っちゃう?」

 とか言ったら、カナはいつもと一緒でかまわないって言った。

 なぜか、カナは誕生日を祝うのがあんまり嬉しくないみたいだった。

 だから、いつもと一緒で、援交が終わったらカラオケボックスで落ち合うことにして、アタシは「ケーキぐらいは一緒に食べたいね」と言った。

 援交が終わってホテルを出ると、神泉駅の横の踏み切りのそばで、カナが立ちすくんでいるのをアタシは見つけた。近くに三月に東京電力のOLが殺害されたアパートがあるところだった。

 円山町にはグネグネした路地にそって、数え切れないぐらいのラブホがある。カナが輪姦されたのもこのグネグネした坂道のラブホのうちのどこかに違いなかった。

 踏み切りのカンカンという音を背に、カナの足が止まっていた。
「大丈夫?」

 とアタシが聞くと、カナの声は電車のゴーっていう音にかき消されながら、

「あ、ミヨリ。なんでもない」

 と言った。

 たぶん、大丈夫なはずなんてないと思う。

 アタシはそのときのカナがどこかに消えてしまいそうで怖かった。怖かったから、アタシはそれ以上なにも聞けなかったんだ。

 だから、いつものカラオケボックスにコンビニで買ったケーキだけこっそり持ち込んで食べて、その後で二人で清め合った。

 終わったあとで、カナはとても変なことを言った。

「ねえ、ミヨリ、自殺するんならどんな方法がいいかとか考えたことない?」

「どうしてそんなこと聞くの? カナやっぱり……」

「ちがうよ! マキガミも言ってたじゃんか、ボクたちは傷つくことなんてないって。心も身体も断片化してこの街を漂っているんだ」

「じゃあ、どうしてそんなこと聞くの?」

「自殺はね、首吊りが一番簡単なんだって。でも跡が汚い。飛び降りはもうそんなもんじゃない。内蔵があっちこっちに散らばって大変。ガス自殺は身体がピンク色になって綺麗なんだって。でも失敗すると後遺症がキツいって。あ、後遺症がキツいのは首吊りも一緒か」

「カナ……」

「大丈夫だよ。別にボクが自殺しようとしてるわけじゃないんだ。だって、ボクは強いから、弱者になって淘汰されるはずなんかないじゃないか」

「じゃあなんでそんなこと考えるの」

「分かんない。でもさ、自殺とか殺人とか、死を想像するとボクは落ち着くんだ」

 そう言って、カナはアタシの手を握った。

▼参考文献より引用

 私がショックだったのは、『レイプされてもレイプされない女子高生』が急増してきたこと。例えばこの間取材した女子高生は、援助交際目的で待ち合わせた男の車に乗ったところ、後部座席には仲間が隠れていて、マンションに連れ込まれて『朝まで中出しレイプ』さすがに翌朝は落ち込んだけれども、午後には友達に『終わりよければ全て良し』宣言。その日の夜中までに六人の男と立て続けに援助交際をしたが、疲れて眠り込んだスキに最後の男に二十万のアガリを持ち逃げされたという。この来は成績優秀者だが、似たような話はいくらでも見つかる。
 フリーライターの藤井良樹君も最近この手の話を聞きまくっているという。『はずかしめる』という言葉もあるように、レイプの本質が心を痛めつけることにあるとすると、この子たちは『体はレイプされても、心はレイプされない』レイプが悪いのは自明だとしても、フェミニスト的な『性は人格の尊厳なのです』などと言った心の持ち方がかえって傷を深くするのと比べてみると、それはそれでいろんなヒントを与えてくれる」

 ※宮台真司(1997)『世紀末の作法 終ワリ無キ日常ヲ生きる知恵』リクルート ダ・ヴィンチ編集部pp.56-57


■二〇一七年(平成二十九年) 十月二日

 出勤は夕方からなので、それまでの時間を地元の図書館で調べ物をしてみることにした。

 朝、出かけようとすると、兄の卓也宛ての封筒が玄関先に置いたままになっていた。

 環は中を開けると

「兄貴ー、サーチケ届いてるよー、サークル名、千人斬太郎様って」

 台所でスマホでツイッターをしながら、テレビを見ていた卓也が、立ち上がって玄関にやってくる。相変わらず小さい声で、でも怒りの滲んだ声で

「人の郵便物を勝手に開けない」

 と言って封筒をむしり取ったが、環は気にしない様子で、

「LINEのアカウント名、ちぎりおじさんって、そのサークル名からか。なんで千人斬りなの?」

「それは俺が千人斬りだったからだ」

「は? プレイしたエロゲの数とか?」

 卓也は小さくプルプルと頭を振った。

「それは、本当に俺が、千人斬りだったからだ」

「あーごめんごめん。性的な意味はなかったか。確か兄貴、昔、アーケードゲーム強かったよね。そこで勝った数的な?」

 卓也は先程と同じように小さく頭をプルプルと振って

「違う、その性的なやつ。朝から下ネタだ」

 環は首をかしげた。

「千人斬り? 兄貴が?」

 今度は卓也は首を縦に小刻みに振った。だが環は、手を前に払いながら、

「な、わけないじゃーんか、冗談はよしおさーん」

と笑った。

「オッサンか」

「だって、ドンファン的な意味の千人斬りの人が、引きこもりになったりする訳ないじゃん」

「何を言う。千人斬りの深タクと言えば俺のことだ」

「いや、その深キョンとキムタクを合わせたみたいなあだ名聞いたことないし」

「ふ、信じるか信じないかはお前次第だ」

 と言って、微かに笑った。なんだよ、ハローバイバイの関かよ。

 基本的にこの兄貴は、どうにも掴みどころがない。

 もういいか。環はサーチケを掴んで、

「ところで、このサーチケなんのイベント? コミケはまだだよね」

 と聞いた。

「これだから一般人は。コミケは当落も出てはいない」

「昨日、言ってたなろうで書いてるって奴、本にすんの?」

「違う。妹のお前になんか言えるか。その上国家権力の犬め」

……何かのエロ二次創作なんだろう、という察しはついた。環はそれ以上聞かなかった。

 すると卓也が思い出したように話題を変えた。

「ところで、なろうで書いてる、四十一歳のフリーターが、異世界でストロングゼロを飲むとロボに変形して無双する話なんだが、昨夜あの後考えて、四次元ポケット的なストロングゼロポケットが存在してだな、それが分倍河原の駅前のローソンの冷ケースに繋がっているっていうことにしようとしたんだが、それ普通に万引きじゃね? って思ってな」

「だから知らんがな」

 と環は頭を掻いた。

 すると卓也は相変わらず小さな声で、だが、妹の環だから分かる程度のふてくされた感じで言った。

「いいじゃないかよ、俺は就活という耐用試験にすら堪えられなかった、使い捨てになる前から弾かれて、社会の歯車になれずに、例えるなら、なんとか梱包材のプチプチの一つとして行きている程度の人間の生きがいなんだから」

「……そ、そうか」

 そもそも自分が勝手に郵便物を開けたのがいけないとは言え、兄貴とのやり取りで時間を無駄にした気がする。

 環は実家を出てバスに乗る。

 秋が言った、黒歴史をほじくり返す意味はない、という言葉が突き刺さる。

 だが、環は立ち止まる訳にいかないのを感じていた。

 図書館につくと、まずポリネシア神話について調べてみる。概要は鷺沼中隊長が言っていた通りだった。

 そもそも、ポリネシアは、ハワイ、ニュージーランド、イースター島を繋ぐ広範囲に及ぶ島々を指す。故に島々によって伝承には差があると言う。

 だが、英雄マウイが夜と闇を司る女神、ヒネを殺そうとヒネの中に入ろうとするが失敗して死んでしまうという神話は、ハワイにもニュージーランドにも見られるものだった。

 女陰部に歯の生えた形状はヴァギナ・デンタータと呼ばれ、これはポリネシアに限定されず、もっと広く伝承があり、沖縄や北海道のアイヌにも見られると言う。去勢不安を表す根源的な存在である、と結論付けられていた。

 では、去勢不安とは何か。

 環は棚を移動して、フロイトに関する本をめくる。

 フロイトは人間の成長過程における、四~五歳の時期を男根期として位置づける。母に対する愛情を独り占めしたいが、その上で父の存在が邪魔になる。その父に対する敵意が罪悪感として裏返り、ペニスを失い、去勢されると言うとして無意識下に蓄積されるのだと言う。

 男児は母親や姉妹を見てペニスがない人間もいることを知り、ペニスを失うことに恐怖を抱く。一方で、女児はあらかじめ、ペニスがないことを知り、自分にもペニスが欲しいと渇望することになると言う。

 そうすると、フロイト先生に言わせれば、剣道部員として竹刀を振り回してきた環は、持っていないペニスを振り回していたことになってしまう。非常にバツが悪い。

 やはり、フロイト先生は牽強付会過ぎやしないか。

 脳科学の発達した現在、フロイトが言及される機会は減ってきていると言う。実際、フロイトの理論にはエビデンスがない。さらに、母子家庭、父子家庭ならばどうなるのかという疑問も湧く。環が手にとった本では、親子の密着した蜜月期が終える上で、お父さんに叱られる、先生に叱られる、といった第三者の規範を取り入れて行く時期に相当し、密着が引き離される恐怖を去勢不安とするのだと結論付けていた。

 つまり、女陰部に歯を持った女神は、母子密着へ再度引き戻そうとする誘惑と、その罪悪感を歯による去勢ということで表した存在と結論付けられるのだろうか。

 また、フロイトの弟子で袂を分ったユングは、人の無意識下における原型として、グレートマザーと呼ぶものがあると言う。母なる神、人を産む存在でもあるが、飲み込み、殺す存在でもあると言う。

 いずれにしても、ヒネ、あるいはヴァギナ・デンタータは、人の無意識下において、強烈に死を呼び起こすもの、と言えるのかもしれない。

 ああ、そう言えば、いわゆる旧劇と呼ばれる劇場版エヴァンゲリオン、『まごころを君に』を府中の映画館に秋と一緒に観に行ったのも、あの年、一九九七年の夏だった。

 どうにも環には難解で意味が分からず、見終わった後で入った、マクドナルドで何を言えばいいのか分からなかった。だが、秋は謎本で仕入れていた知識で、フロイトだユングだと語っていたような気がする。

 クライマックスの人類補完計画で、綾波レイが月と同じサイズまで巨大化する。

 綾波の額にはサードアイというよりも、女陰のような割れ目ができ、そこにロンギヌスの槍が刺さる。

 去勢不安の具現化として、ヴァギナ・デンタータと似たものを感じた。

 吸引すると一度死を見るという、強烈な危険ドラッグの名前の由来からは、九十年代の匂いがした。

 九十年代の匂いを感じたついでに、巻紙亮二の本も読んでみる。

 古過ぎて書架にはなかったので、何冊か書庫から出してきてもらった。

 環は一冊の本の帯を見て、目眩を起こしそうになった。

『カラダは売っても、心はレイプされない!』

 今となっては虚しくて、腹立たしい。

 実際、そんなことはなかったのだ。書庫から出してきたもらってきたもののうちの一冊は、二〇〇〇年を過ぎてからのものだったが、パラパラとめくってみると、巻紙自身、九十年代の自身の言説の誤りを認めている。

 ゼロ年代に入ると、彼が取材してきた、援交少女の多くが心身を病んだ。

 九十年代に書かれた方の著作も見てみる。

 未成年の売春でさえも、推奨されるべきことではないが、仕方のないことであると言った論調であった。だが、注意深く読まないとまるで、援助交際を勧めているようにもとれる。脊髄反射的におぞましく感じた人、あるいは売春こそが救いであると誤読されても仕方のないような書きぶりであった。

 また、彼はまるで女子高生の半分以上が援助交際をしていたように書いているが、実際に東京都が一九九六年に行った調査では、四・六%となっていたというのは、最近環が調べ直して知ったことである。

 さらに、二〇〇一年に教育心理学者たちが行った社会調査の論文では、五%程度との回答があり、その間に特に増えた訳でもないようだった。

 学校やクラスにより大分差があり、またこういったアンケートに正直に答えなかった可能性はあるので、やや多く見積もっても、クラスに一人二人と言った割合であったようだ。

 巻紙は彼女たちは意味に囚われない、新しい存在であり、学校でもイケていて、親との関係も良好であることが多い、いわゆる「ギャル」と称されがちな派手な子ばかりでもないと強調していた。しかし、上記の調査によれば、一般の生徒よりも、学校にも家庭にも居場所を感じていない傾向が優位で、従来の不良少女の枠組みに留まっていると言う。

 巻紙は現実を大分恣意的に捉えていたようだ。

 環は巻紙の著作をめくり続ける。ではなぜ、当時の巻紙は女子高生の援助交際を仕方のないものとして捉えていたのか。

 イデオロギーが終焉したから。

 日本には一神教的な神がいないため、倫理規範が薄いから。

 高度に発達した社会では、何が良きことか分からないから。

 巻紙は文章の中で、批判をしてきたある心理学者を嗤っていた。心理学者は、それでも未成年の少女が売春をすべきではないと言った。

 理由は、「たましいに傷がつくから」

 極めて曖昧で、宗教めいた言葉だった。饒舌な巻紙に対して、根拠の薄弱な言葉に思える。

 だが、時間が経ってみると、本当に少女たちの魂は傷ついていた。

 イデオロギーが終焉しても、一神教的な神がいなくても、傷と痛みは確かにそこに存在してしまったのだ。

 彼の本の中に出てくるある少女は、援交目的で会った男性とその仲間に『朝まで中出しレイプ』されたという。

 だが、彼女は翌日の午後には『終わりよければ全てよし』と言い、さらに六人の男性と援助交際をした。だが、結局その日の売上げも持ち逃げされてしまったと言う。

 巻紙はこの少女のどこかケロリとした様子を見て、性が尊厳であることを疑う。

 彼女たちは、レイプされても『はずかしめる』ことができないのだと結論付ける。
 
 だが、今になって思えば、朝まで中出しレイプされた女の子は傷ついていない、などということは無かった。

 恐らく、巻紙の前で強がっただけか、傷を言語化しえなかったか。だから、傷を薄めるように、その後六人の男と援交をしたのだろう。

 環は拳を握りしめていた。

 むせ返るような苦しさは、怒りに変わる。

 同情できるのは、残された奥さんと子供だけで、こいつ自身にはなんの憐憫も持てない、と環は思った。

 そして、同級生二人のことを考える。

 加奈は、

 美頼は、

 援助交際をしていたという噂のある二人は、

 何を見て、何に苦しんだのか。

本文:ここまで

続きはこちら:第十七回。

 続きが早く読みたい!という人はぜひ、通販もご利用くださいね。コロナ禍によって暇を持て余した作者によって、迅速対応いたします。

BOOTH通販『フワつく身体』

読者の皆様へ:

※この話はフィクションであり、現実の人物、団体、施設などとは一切関係がありません。

※警視庁の鉄道警察隊に渋谷分駐所は存在しません。渋谷駅、及び周辺でトラブルにあった場合は、各路線の駅員、ハチ公前の駅前交番、渋谷警察署などにご連絡ください。

※現在では、一九九九年に成立した児童買春・児童ポルノ禁止法において、
性的好奇心を満たす目的で、一八歳以下の児童と、性交若くは、性交類似行為を行った場合、
五年以下の懲役若くは五百万円以下の罰金、又はその両方を併科されます。
本作品は、こういった違法行為を推奨、若しくは擁護するものでは決してありません。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?