雨が好きな女の話。
7月。初夏。梅雨。
干せない布団。ずぶ濡れの保育園送迎。今夜も向かう先はコインランドリー。
そんな季節が今年もやってきた。
憂鬱で、ほの暗く、じめついている。
これはそんな世界がほんの少し、特別に感じる女のつぶやき。
わたしは雨がすき。
子どもの頃からずっとすきだった。
雨の日に感じる特別感を、子どもながらにわたしは愛していた。
雨の日になにか特別なことが起こるわけでもなく、
ただ、日常のなかに雨が在ることでまたさらに加わっていくもの。
それがすきだった。
例えば、
下駄箱の奥から引っ張り出す長靴。
使いたくて仕方がなかった新しい傘。
昼間なのに電気を灯す室内。
そこから見る薄暗い外の世界。
そんなものに情緒を感じていた。
その中でもわたしが好きなものは
昼間 薄暗い外 電気のついた部屋 その中で見る映画 だった。
子どもを持ったいまは、それを味わうことはなかなか難しいのだけど
子どもの頃はよく妹と一緒にジブリを見たりしていた。
その時間がすごく好きだった。
「となりのトトロ」のワンシーンで、さつきとメイが雨の日にバス停までお父さんを迎えに行くシーンがあるのだけど、そこがわたしのトトロの一番の見どころでもある。
雨の日に、家の中で、電気をつけて。
家の中にいるせいで少し小さく聞こえる雨の音が、なんだか世界が遠くなったように感じて。
あの日のさつきとメイは、なんだか異世界に迷い込んだかのようだ。
そしてアラサーになった今も、雨の日に対して同じ感情をもっている。
雨の日は異様で、神秘的で、恐ろしげで、特別だ。
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