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脳卒中者の行動変容。発症6ヶ月後も続いている

📖 文献情報 と 抄録和訳

脳卒中リハビリテーション開始後6ヶ月間の患者の活性化について

📕van Meijeren-Pont, Winke, et al. "Patient Activation During the First 6 Months After the Start of Stroke Rehabilitation." Archives of Physical Medicine and Rehabilitation (2022). https://doi.org/10.1016/j.apmr.2022.02.017
🔗 DOI, PubMed, Google Scholar
✅ 前提知識:患者の活性化と評価指標(Patient Activation Measure: PAM)
- この一般的な尺度は13項目からなり、5段階のリッカート尺度(強く反対、反対、賛成、強く賛成、該当せず)で評価される。総スコアは0~100の範囲で、スコアが高いほど患者の活性化が高いことを意味する
- PAMスコアは、4段階の活性化レベルに分けられる。
- レベル1(スコア0.0-47.0):自分の役割が重要であることをまだ理解していない可能性がある。
- レベル2(スコア47.1-55.1):行動を起こすための自信と知識が不足している
- レベル3(55.2-72.4):行動を起こし始めている
- レベル4(72.5-100):健康について積極的で、推奨される多くの健康行動を実施するために行動を起こしている
📕Hibbard., et al. Health services research 39. (2004): 1005-1026. >>> doi.
📕藤田英美, 他. 精神医学 52.8 (2010): 765-772. >>> doi.
🔑 Key points
- 脳卒中リハ開始後、6ヶ月までの間に患者の活性化が促進された。
- すべての時点で、患者の3分の1は活性化レベルが低い(1または2)
- 脳卒中患者の41.6%が同じレベルの患者活性化にとどまっていた。
- 脳卒中患者の23.1%が時間の経過とともに患者活性化レベルが低下した。

[背景・目的] 脳卒中患者のリハビリテーション開始時から6か月後までの患者活性化の経過を検討する。

[方法] デザイン6か月間のフォローアップを行う初期コホート研究。実施場所多職種によるリハビリテーション施設。参加者入院または外来でリハビリテーションを受けた脳卒中患者(N=478)。年齢中央値は63.0歳(四分位範囲、56.0~70.0歳)、308人(64.2%)が男性であった。439名(91.8%)の患者さんが研究を完了しました。介入試験該当なし。主なアウトカム評価項目患者の活性化は、Patient Activation Measure(PAM)(スコア0-100、4段階、スコアとレベルが高いほど患者の活性化を示す)を用いて測定された。PAMはリハビリテーション開始時(ベースライン)、その後3ヶ月、6ヶ月に測定し、多変量混合モデル解析で分析した。

[結果] ベースライン時の平均PAMスコアは60.2±14.3、PAMレベル1、2、3、4の患者数はそれぞれ76(17.8%)、85(19.9%)、177(41.4%)および90(21.0%)であった。多変量混合モデル解析により、PAMスコアは時間の経過とともに上昇することが示された(ベースライン60.2±14.3 vs 3ヶ月60.7±14.8 vs 6ヶ月61.9±18.0;P.007)。ベースラインから6ヵ月間のPAMスコアは,122人(41.4%)が同じレベルにとどまり,105人(35.6%)が上昇し,68人(23.1%)が低下した.すべての時点で、35%以上の患者がレベル1または2であった。

[結論] PAMスコアは,リハビリテーション開始から6ヵ月後のフォローアップまで,時間とともにわずかに上昇した。しかし、3分の1以上の患者が低レベル(すなわち、レベル1および2)にとどまっており、このことは、患者の活性化を高めるためのリハビリテーション中の特定の介入が有効である可能性を示している。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

『活性化』とは何ですか?
これがこの論文を見たときの第一印象だった。
そして、PAMを調べてみると「トランスセオレティカルモデル」に近いと思った。

✅ 行動変容ステージ:トランスセオレティカルモデルとは?
- トランスセオレティカルモデルは、禁煙指導のために開発されたモデルだが、その後、食事や運動といった様々な健康に関する行動について用いられている。
- 行動変容に向けたステージを、以下の5ステージで示している
【1】前熟考(無関心)期:6ヵ月以内に行動変容に向けた行動を起こす意思がない
【2】熟考(関心)期:6ヵ月以内に行動変容に向けた行動を起こす意思がある
【3】準備期:1ヵ月以内に行動変容に向けた行動を起こす意思がある
【4】実行期:行動変容を起こしているが、その継続が6ヵ月未満
【5】維持期:行動変容の継続が6ヵ月以上
🌍 参考サイト >>> site.

PAMのレベル1〜2がトランスセオレティカルモデルの【1】〜【3】に該当
PAMのレベル3がトランスセオレティカルモデルの【4】に該当
PAMのレベル4がトランスセオレティカルモデルの【5】に該当
といったところだろうか。
PAMでは意思・自己効力感を主に評価するが具体的な実行有無の項目はない、トランスセオレティカルでは具体的な時期指定があるなど、細かい長所・短所の違いはあれども、方向性は近い。

そして、PAMステージで脳卒中後の患者を追跡してみると、「発症後6ヶ月でもまだ変化が生じている」こと、「上昇する者も多いが低下するものも多い」ことが明らかとなった。
すなわち、健康の自己管理といった側面から眺めれば、発症後長期間のモニタリングや適応がある者へのフォローアップは必要になると思われる。
例えば、PAMのレベル4になれば介入終了検討、レベル1-2は知識・理解面の教育、レベル3ではモニタリングフィードバックなど、各ステージで適切な介入も変わってくるだろう。
13項目、5段階評価なので、比較的簡易的に評価を行うことができそうなのも魅力だ。
「しっかり自己管理ができる」、というところまで責任を持ちたい。

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