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多成分介入。実際、何やってる?

📖 文献情報 と 抄録和訳

虚弱高齢者における移動障害予防のための多成分介入:無作為化比較試験(SPRINTTプロジェクト)

Bernabei, Roberto, et al. "Multicomponent intervention to prevent mobility disability in frail older adults: randomised controlled trial (SPRINTT project)." bmj 377 (2022). https://doi.org/10.1136/bmj-2021-068788

🔗 DOI, PubMed, Google Scholar

[背景・目的] 身体的虚弱およびサルコペニアを有する高齢者において、技術的支援および栄養カウンセリングを伴う身体活動に基づいた多成分介入により、移動障害を予防できるかどうかを明らかにする。

[方法] デザイン:RCT。設定:欧州11カ国の16の臨床施設、2016年1月から2019年10月31日まで。参加者:身体的虚弱およびサルコペニアを有する70歳以上の地域在住の男女1519人(SPPB(short physical performance battery)スコア3~9、低脊椎除脂肪量、400m自立歩行能力の併存として運用される)が、760人が多成分介入に、759人が健康な加齢に関する教育を受ける(対照)。介入群が受けた多成分介入の内容は、以下の通り。

✅ 多成分介入の具体的内容
概要:身体活動(有酸素運動、筋力運動、柔軟運動、およびバランス運動)+栄養カウンセリングで構成された。最大36ヵ月間実施された。
▶︎ 採用期(第1~52週;1~4週目は週1回、4~8週目は週2回、9~52週目は最大週4回):センターベースの身体活動セッションが実施された。これらのセッションは有酸素運動プログラム、筋力トレーニング、ストレッチ、およびバランスの各要素を参加者に安全に実施するための指導としても利用された。9~52週目は最大週4回のセンターでのセッションに加え、自宅での身体活動セッションが徐々に行われた。
▶︎維持期(第53週~試験終了):維持期には、センターでの身体活動セッションを週2回、自宅でのセッションを最大4回実施した。
▶︎トレーニング強度について:有酸素運動(歩行)については13(ややきつい)の強度で歩くよう求められた。下肢筋力トレーニング運動は、15または16の強度(ハード)で実施された。
▶︎日記の使用:参加者は、自宅でのセッションの頻度について日記に記入した。
▶︎身体活動量についての指導:大腿部に装着したactivPAL3(PAL Technologies, Glasgow, UK)を用いて、ベースライン時と6ヶ月毎に連続7日間モニターされた。指導者は、参加者が身体活動の処方を守っていないことが示唆された場合、いつでも7日間の活動量の追加記録を要求することができた。インストラクターは、この情報をもとに、参加者が達成すべきパフォーマンス目標について、アドヒアランスを最大化し、阻害要因となりうるものを取り除くための行動戦略の一環として、個人別のフィードバックを提供した。
▶︎栄養指導:介入には、個別栄養評価と、1日のエネルギー摂取量を25~30kcal/kg体重、1日のタンパク質摂取量を1.0~1.2g/kg体重以上という2つの主要目標を設定した個別食事計画の処方が含まれた。少なくとも年に1回、3日間の食事記録が収集され、その後、個別の食事面接が行われた。栄養処方の遵守状況は、研究スタッフとの定期的な連絡を通じて確認され、その間に参加者のフィードバックが収集され、食事計画が見直された。アドヒアランスを最大化するために、介入者の裁量で追加の食事評価を実施することも可能であった。

対照群には、健康的な加齢に関する教育を月1回行った。主要アウトカムは、移動障害(400mを15分未満で自立歩行できないこと)であった。持続的な移動障害(2回連続して400mを歩くことができない)、および身体能力、筋力、および肩甲骨除脂肪量のベースラインから24ヵ月および36ヵ月までの変化を、事前に計画した副次的アウトカムとして分析した。一次比較は、ベースラインのSPPBスコアが3~7点の参加者(n=1205)を対象に行われた。SPPBスコアが8または9の参加者(n=314)については、探索的な目的のために別途分析が行われた。

[結果] 1519人(女性1088人)の平均年齢は78.9歳(標準偏差5.8)であった。平均追跡期間は26.4ヶ月(SD 9.5)であった。SPPBスコアが3~7の参加者において、移動障害は多成分介入に割り付けられた283/605人(46.8%)および対照316/600人(52.7%)で発生した(ハザード比0.78、95%信頼区間0.67~0.92;P=0.005)。持続的な移動障害は、多成分介入に割り付けられた127/605人(21.0%)および対照の150/600人(25.0%)に発生した(0.79, 0.62~1.01;P=0.06 )。SPPBスコアの群間差は、24ヶ月と36ヶ月の時点で、それぞれ0.8ポイント(95%信頼区間0.5~1.1ポイント、P<0.001)と1.0ポイント(95%信頼区間0.5~1.6ポイント、P<0.001)であり、多成分介入(multicompponent intervention)を支持するものであった。

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✅ 図. ベースラインのSPPB(Short Physical Performance Battery)スコアが3~7点の参加者における移動障害の発生に関するKaplan-Meier曲線。グラフは36ヵ月で切り捨てられており、その後、多成分介入群では2件、生活習慣教育群では3件の移動障害の追加事象が記録された。CI=confidence interval(信頼区間)

24ヵ月目における手指の筋力の低下は、多成分介入に割り付けられた女性では対照よりも小さかった(0.9 kg、95%信頼区間 0.1~1.6 kg;P=0.028)。多成分介入群の女性は,24 ヵ月目に対照群よりも 0.24 kg,0.49 kg 減少し(95%信頼区間 0.10~0.39 kg;P<0.001),36 ヵ月目に 0.26~0.73 kg,P<0.001),Appendicular lean mass が減少した.重篤な有害事象は,多成分介入に割り付けられた 237/605 例(39.2%)および対照 216/600 例(36.0%)で発生した(リスク比 1.09,95%信頼区間 0.94~1.26 ).SPPBスコアが8または9の参加者では、多成分介入では46/155(29.7%)、対照では38/159(23.9%)に移動障害が発生した(ハザード比1.25、95%信頼区間0.79~1.95;P=0.34)。

[結論] 多成分介入は、身体的虚弱およびサルコペニアを有し、SPPBスコアが3~7の高齢者における移動障害の発生率の低下と関連していた。身体的虚弱とサルコペニアは、脆弱な高齢者の移動能力を維持するための標的となりうる。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

たとえば、テレビで見る高級レストランのメニュー。
「フレンチフルコース2万円」
これ、ちょっと怖いと感じてしまう。
何が怖いか、情報が一語に包含されすぎていて、実体がよくわからないこと。
多成分介入には、ずっとこのような思いを抱いてきた。
それよりも、銀だこのたこ焼き580円の方が、安心できる。
少なくも、買いたいときと買いたくないときが明確にわかる。
Less is More.
凝集されきった光は新聞紙を燃やすが、範囲の広すぎる自然光は何も感じない。
強烈な目的をもった介入こそが、人を変えると思ってきた。

だが、いま思った。
普通、多成分だよなって。
たとえば、「電気刺激を併行した筋トレを介入として実施します」としても、その背景には有酸素運動も、身体活動量も、栄養も、関わっている。ないわけではない。ただ、無視しているだけだ。
これまでは、強烈な目的をもった介入と豪語している1つ以外に、目を向けてこなかっただけ、無視してきただけ。
今回抄読した論文は、僕をぶっ飛ばした!
こんなに多くを包含していても、ここまで具体的で、実践的でありうるんだ(上記✅多成分介入の具体的内容、参照)。
BMJ掲載論文は、伊達じゃない。

太陽のような介入だと、そう思った。
自然で、幅広くて、そして、強い光。
生い茂らせるのは、そういう光。
虫眼鏡によって凝集された光ではなくて、陽光だ。
責任の範囲を広げる。か。
真に生長を育む光、それが降り注ぐ病棟、その歯車の1つでありたい。

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