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食形態改変 vs. 経管栄養。介護負担が大きいのはどちら?

📖 文献情報 と 抄録和訳

家族介護者における被介護者の嚥下障害重症度が介護負担に及ぼす影響について

📕Suzuki, Mizue, et al. "The effect of care receivers' dysphagia severity on caregiver burden among family caregivers." Geriatrics & Gerontology International (2022). https://doi.org/10.1111/ggi.14468
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[背景・目的] 嚥下障害は、介護者の負担に影響を与える要因として注目されている。しかし、その重症度が介護負担にどのように影響するかを検討した研究はほとんどない。本研究では、嚥下障害の重症度が介護負担に及ぼす影響について検討することを目的とした。

[方法] 家族介護者を対象に横断的オンライン調査を実施した。Zarit Burden Interviewを用いて介護者の負担を評価した。嚥下障害の重症度はFunctional Oral Intake Scaleを用いて評価し,介護者を被介護者の経口摂取状況に応じて3群に分けた(レベル1~3:経管栄養群,レベル4~6:食形態改変群,レベル7:通常群).介護者の負担と嚥下障害の重症度との関係を検討するため、介護者の負担について単変量および多変量ロジスティック回帰分析を適用した。

[結果] ザリット負担感面接は、食形態改変群で有意に高く、介護者負担感が高い割合は、通常群、食形態改変群、経管栄養群でそれぞれ25.2%、39.5%、23.4%に達した。また、介護者負担(基準:通常群)に多変量解析を適用した結果、食形態改変群は介護者負担と有意に関連し(OR 1.55, 95% CI 1.04-2.32 )、経管栄養群は介護者負担と関連がなかった(OR 0.68, 95% CI 0.31-1.49)

[結論] 本研究では、交絡因子を調整した後でも、食形態改変食品の使用が介護者の負担に有意に影響することが示されたが、経管栄養の使用は介護者の負担を増加させないことが示された。これらの結果から、嚥下障害に関連した介護負担を軽減するためには、嚥下障害の重症度を考慮する必要があることが示唆された。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

脳血管疾患の退院支援において、難渋する点の1つに「食形態」がある。
だが、理学療法士である僕にとっては、「食形態改変」も「経管栄養」もどちらも大変そうだし、むしろ経管栄養の方がいろいろ大変なイメージをもっていた
今回の研究を抄読して、そのイメージは見事に覆った。

確かに、よくよく考えてみれば、そうだと思う。
食形態改変は、通常の食事を刻んだり、ペーストにしたり、とろみをつけたり、一言で言えば「手間」が増える仕事だ。
一方、経管栄養は、いわばレトルトのような感じで、すでにパックされているものをつなぐ仕事。
すなわち、経管栄養は通常の食事準備より手間がかからない、とさえ言えるのかもしれない。
実際、今回の結果としても通常の食事群よりも介護負担が高い割合も微細に低く、オッズも低くなっている。

これらの知識がわかっていると、退院支援における家族への対応や、患者への説明も変わってきそうだ。
門外漢だからこそ、適当にイメージしていると、現実とはずいぶん離れてしまうこともあるのだと思った。
改めて、しっかり勉強したいし、現実をみつめたい。

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